第3話


 人が神に祈りを捧げれば捧げるほど神は力を得る。そして、大量の信者を得た神は上位の神職者にその一部を渡し教会の維持や宗教の流布をしてもらう。


 女神を食べて女神の持っていた全ての力を奪った俺はそのピラミッドの頂点にいるということになる。


 神の力を使えるどころか、神職者に与える聖なる力の量までコントロールできるのだ。使えると思っていたものが重要な時に使えなくなる……といったことも今の俺には容易と言える。


「ただ殺すだけでは俺の復讐の炎は消えない。なるべく最低な策で殺してやる」


 俺は暗闇の世界を離れ、俺が倒れていた場所に戻った。


  ◆  


 人界に戻った俺は取り敢えず住んでいた街に向かった。何から始めるにも拠点が必要となるからだ。なら勝手知ったる街の方が住みやすいと踏んだのだ。


 だが、街はいつもとは異なって活気を失っていた。俺は何かあっただろうかと思い、ローブで顔を隠しながら街の人の話を盗み聞きした。


「知ってる? あそこの家庭、異端者だったらしいのよ」


「そうらしいな。気の優しい人たちだったからこの街では名が通ってたのにな」


 内容は俺の家族が殺されたことに関してだった。


 俺は街の人がどんな反応をしているのか気になって聞き耳を立てる。異端者の俺達を軽蔑するか興味があったのだ。


「うちの子たちが朝からうるさいのよ。結構長く遊んでたし……」


「俺のとこも同じだ。ほんと、やになるよ」


「神職者がやることはわかるんだけど、なにも殺さなくてもねぇ……」


「あんまり言うなって、神職の奴に聞かれたらやられるぞ。あいつら今朝見たときピリピリしてたからな。何があるかしれたもんじゃねぇ」


 街の人の話を聞いて俺は少しほっとした。俺達がこの街で築き上げたものは完全には壊れていなかったのだと。


 それに、今の話を聞いたおかげで街の人は殺さなくて済む。もちろん街の人、民衆の中にも一部過激な人はいるが手あたり次第に殺すのではなく当分は上層部だけで済みそうだ。


 民衆の不満を聞いて俺は上層部を殺す決心を更に硬くした。

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