第240話 スケルトンの大軍





ガシャガシャ!

パキャッ!

ズガガガガッ!!



迫るスケルトンの大軍を黒い脚が薙ぎ払う。

まるで風に攫われた紙切れのように軽々と吹き飛ばされ、骸骨達は壁に打ち付けられて一瞬で細かな欠片に化ける。

さらに大きくうねった同色の脚が、さながら槍のごとく突き出され的確に頭蓋骨や心臓部を貫いて敵の動きを止めた。

雑に振るわれた刀身の延長線上には紅蓮の炎が舞い、スケルトンの胸部をあっという間に溶かす。



大妖怪三人VSスケルトン。



底が見えない数を持ってしても、その圧倒的な戦力差は言うまでもなかった。

たとえ多少強くなろうが弱点を克服しようが、彼女達には関係ない。


むしろ、後者に至ってはプラスでさえあるのだ。

明確な弱点が視認できるのであれば、わざわざ余計な妖力または魔力を使わずとも、フィジカルで押し切れる。


…………と言うか、光属性の魔法が効かなくなったからと言って、スケルトン相手に遅れを取るのは二流………いや、三流のやる事だ。

彼女達からしたら大した変化では無い。


圧倒的な妖力で迫るスケルトンの群れを蹴散らし次々と亡骸に戻す。

しかし、その数だけは一向に減る気配を見せなかった。

一体どこから湧いて出ているのやら…………。

実力差で押されはしないものの、いささか面倒である。



「キリがないわねぇ………」



倒れたスケルトンの頭を突き刺しながら、土蜘蛛が独り言ちる。

彼女もまた、このいつまでも変わらない戦況にへきへきしていた。

もう既に何百………そろそろ数千に到達するだろう。

それだけ倒しているにも関わらず、まだ増え続けている。


ひたすらに単純作業の繰り返し。

軽く地獄と言っても過言では無い。

まだ多少の手応えがあれば面白みがあるが、適当に薙ぎ払った程度でバタバタ倒れるような相手をいくら倒してもつまらないだけだ。


それにこの後のことを考えると、いつまでもこいつらの相手をしているのは割に合わなすぎる。

一番は親玉を潰して増加を阻止する事だが、別に彼女がそこまでやる義理もない。



(二人には悪いけれど、適当なところで上がろうかしら………)



ちらりと視線を移す。

右側でアグレッシブに暴れるのはイナリ。

脚を触手のように、滑らかに鋭く放ってスケルトンを一切寄せ付けていない。

思った以上に良い動きをする………と少し関心。

シュカに関しては心配する必要も無いだろう。


一通り状況を確認し、不意に微笑んだ土蜘蛛は脚を二本に減らす。

代わりに伸ばしたそれを、半径十五メートルにわたって円をなぞるように旋回させた。



「わわっ!?」

「あう」



パキャッ!

ゴキッ!


など、様々な音を立てて一気に大量のスケルトンがボロ雑巾となって四方にぶっ飛ぶ。

あまりにも呆気なさすぎる。



「びっ、びっくりしました………」

「ちょっと〜、ボク達にも当たるところだったぞ〜?」



危うく味方すら巻き込んでしまいそうな無差別の攻撃に、イナリとシュカは驚きの声を上げる。

しかし、肝心の土蜘蛛は聞く耳を持たない。

さっさとその場を離れ、奥で待機していた男達の元に戻ると。



「ごめんなさいね〜」

「ちょ、どこ行くんですか!?」

「私はお先に帰らせてもらうわ。頑張ってね〜」



そう言い残し、男達を引き連れて玉座の裏に用意されていた通路から、どこかへ消えてしまった。



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