第44話 〈眷属化〉(2)
ほほう、"その人物の魂を昇華させる"、か。
この能力でアイリスを魔女にすることができるんだろうけど…………問題はやっぱり、与えるのが魂魄の濃度が高いやつじゃないといけないってとこだよなぁ。
その人物の魂の情報に近いほど魂魄は濃くなる。
例えば
逆に、汗や髪の毛は魂魄が薄く効果はあまり見られないのだろう。
と言うかそもそもそんな物をアイリスに取り込んで欲しくないし。
「そうなると、やっぱり
「たぶん一番濃いのが
大いに魂魄の元になる遺伝子を含み、かつ直接体内に吸収できる
「まぁアイリスは真白が大好きだからな。アイリスからすれば、まさに一石二鳥なのだ」
「そういうもんなのかな…………ってあれ?ノエルってアイリスが俺のこと好きなの知ってたの?」
「………んん?」
「あれ?」
先程アイリスがすごい勢いで告白した時、ノエルは別室ですやすや眠っていたはずだ。
だから知らないと思ってたんだけど………。
二人して顔を見合せて首を傾げる。
「ワタシ言ったのだ!"真白の事を好きで好きでたまらない女なら同士ができて嬉しい"、と!」
「え、あそこでもう知ってたの?」
あの段階じゃアイリスが俺を好きだなんて全く思ってなかったから、てっきり"そのくらい好きになってもらうように頑張れ"、って言われてるのかと。
あー、なるほどね。
そっか、あの時からもう…………。
「ちなみにダグラスも気づいてたみたいなのだ」
「やめて!それ以上俺の傷をえぐらないで!真白のライフはもうゼロよ!」
全てを察した俺に
自分に向けられた好意なのに、自分だけ最後まで気付けないというまさかの大失敗。
しかもその最後は我慢できなかったアイリスからの告白って………。
しかもあれでしょ?
勘違いしたままあれこれやってたんだから……………うわぁ。
いや、でも…………でもさ、自分が好かれてるって思うの、少し自意識過剰過ぎやしませんかね!?
「アイリスが来たら一緒に謝るのだ……」
「はい………」
ノエル
う〜ん、ちょっと何言ってるか分からない。
「………主。クロも主好き」
小さな黒色のポーチを肩にかけたクロが、開きっぱなしの商館の入口から出てトテトテ小走りで俺に抱きつく。
上目遣いで俺を見上げる猫耳少女のしっぽがぶんぶん揺れまくっている。
「お〜、俺もクロの事好きだぞ〜」
「むぅ………なにか違う気がする」
ちょこんと裾を引っ張るクロの頭をわしゃわしゃと撫でてやると、気持ちよさそうにしながらも、それじゃない感を漂わせ不満げな表情で見上げてくる。
とりあえずノーコメントで。
清々しいまでの無言と笑顔に、ジト目が突き刺さる。
しかし、それも俺がなでなでしたりもふもふしたりしている間に消え、気持ちよさそうに目を細めたクロが頭を擦り付ける。
「クロ、ちょろいのだ」
「違う。主だから。主のなでなでは特別」
クロが俺の腹部に回した手にギュッと力を入れた。
あら可愛い。
「主、アイリス眷属にするの?」
「ん〜?あぁ、さっきの話聞いてたのか。そうだね………アイリスが望むなら」
「そっか。ならクロも主とシたい」
「!?」
俺と共に、周囲でチラチラこちらを見ていた人達が一斉にむせたように咳き込んだ。
中には何でお前がそんな反応してんの?みたいな顔をしてる奴も居たが、今は放っておく。
ごほっ、ごほっ……………ちょ、ちょい待ち、今なんて?
今、クロからとんでもない事を言われた気がする。
「主とシたい」
「聞き間違いじゃなかった!………えっと、眷属になりたいからってこと…………?」
「それもある。でも、それは二番目」
悪意があるとしか思えない切り取られ方の一言を、純粋な瞳で言い放ったクロは、ザワつく周囲を置き去りにして首を振るう。
そして、さらっと特大の爆弾を投下した。
「じゃ、じゃあ何で………?」
「主の子供欲しい」
「!?!!?!」
ガシャン、ガラガラ、ドサドサ…………!
一気に辺りが静まり返る。
まさかのクロの子供欲しい発言。
おおよそ十歳前後と思われる幼女にそんな事を言わせ、現在進行形で二人の幼女にサンドイッチされてる俺には侮蔑の眼差しが注がれる。
冷や汗が止まらない。
あれ、もしかして俺、
「い、いや〜、クロにはまだ早いんじゃないかなぁ〜」
「そうなのだ、クロにはまだ早いのだ」
引きつった笑顔の俺の横で、やれやれ、と肩をすくませるノエル。
おお、大人の対応…………と思ったのも
なぜか対抗するように俺の頭をギュッと抱きしめる。
あ、あれ、ノエルさん?
「むぅ、
確かに。
ノエルとクロはほとんど体型的な差はない。
どちらも十歳前後の小柄な体型である。
「真白は夜になると昼とは比べ物にならない程激しいのだ。真白のマシロも大きいし…………クロには耐えられないのだ!」
「クロは頑丈。主にめちゃくちゃにされても大丈夫。むしろ望むところ」
「望まんでよろしい」
俺を挟んで謎の言い合いをする二人にツッコむが、珍しくギャーギャーと叫ぶ二人には聞こえていない様子。
二人とも、忘れてるだろうけど一応ここメインストリートなんだわ。
周囲には大勢の人がいるわけで。
元々ノエルの端正な容姿が自然と視線を集めていたので、すぐさま鬼畜のレッテルを貼られた俺の株価は大暴落。
しかも喧嘩の内容が"夜の運動会"についてって………。
時々ノエルが叫ぶある事ない事(基本的に全部見覚えがある)によって、俺とノエルの性癖&情事が次々と
生々しいことこの上ない内容に、周囲の主に男達は嫉妬に燃え、なぜか女性達は頬を赤らめながら俺とノエルに視線を送る。
そしてクロ、こういう時だけ真剣に聞かないの!
俺はロリコンじゃないのに…………。
いや、そりゃこの状況じゃ説得力皆無だけども。
「主、んべ………黒猫族だから舌ザラザラ」
「お、おう」
「舐めたらきっと気持ちいい」
「どこを!?」
クロはそのザラザラの舌で一体どこを舐める気かな?
熱い視線が下腹部に向いているが気のせいだと思いたい。
リアル十歳前後の幼女を性的に見るなんて、前世でもこっちの世界でも一発アウトだ。
「いいや、真白が好きなのは私のおしりなのだ!いつも前戯でふにふに揉んでて──────」
うむ、確かにノエルのおしりは小ぶりだけど、人肌とは考えられないくらいしっとり手に吸い付いて、ふにふにしてて……………って!
いかん、危うく巻き込まれるところだった。
人前で何考えてるんだ俺は……………。
「て言うか何でノエルはそんなにムキになってるのさ………」
「だって………ワタシも真白の子供欲しいのだ!それなのに、未だに一人も産んでないのだぞ!?200年間、ほとんど毎日シているはずなのに…………!!」
「さりげなくとんでもない事をばらしたのは置いておいて、それは俺がシゼルさんに教えてもらった避妊魔法を使ってるからで──────」
「…………ヒ……ニン…………?」
「はっ!!」
しまったと口をつぐんでももう遅い。
ギギッと錆びた機械のように振り返ると、瞳のハイライトが消えたノエルがそこに。
無言の圧力が凄い。
「そうかそうか、そういう事だったのか」
「え、えっとですね。これには一応理由もありまして……………」
「うむ、言い訳はちゃんと聞くのだ───────もちろん、ベットの上でな」
その後、転移魔法によって俺とノエルはアイリスが出てくるまでの間姿を消した。
数十分して帰ってきたノエルのお肌はつやつや、対して俺はげっそりしていたそうな。
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