第9話

美羽に肩を抱かれながらようやく1組の廊下までたどり着いた。


美羽は私に気遣って教室へは入らず、廊下の窓から外の景色を眺め、その一部始終を私に教えてくれた。


「 あいかわらず6組の男子達って子供みたい、また廊下で追いかけっこみたいなことしてる、あんなことしてたらまた先生に叱られちゃうんだから… 」


1年生のクラスは全部で8クラス、5階のこの1組から中庭を挟んで、向かい側に5組から8組の廊下が見える。


美羽の言っていた光景が目に浮かんだ。


耳をすませば男子の騒ぐ声が聞こえてくる。


しばらくすると涙もようやくおさまり、私は顔を上げて窓の外を覗いた。


「 まだやってるよ、幼稚園児かっつーの! 」


掴んでいた美羽の袖から手を離し、窓に体を向けて6組の廊下を見ようとすると、美羽は突然後ずさりをし始めた。


「 え?……うわッ! … 」


「 みう?… 」


突然美羽は私の後ろへまわりこんで、後ろから隠れるようにして見始めた。


「 いッ!いるッ!… 」


「 何が? え? 虫とか?ヤダ!! 」


「 違う!お、おおの…7組の大野くん!… 」


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