第16話 母さんに王様ゲームをしていたなんて知られたら大変です……。
もうすぐ母さんが仕事から帰ってくる時間。そのため、次が最後のゲームになるだろう。
……というか、最後のゲームにしなければならない。三姉妹たちと王様ゲームをしているところを母さんに見られでもしたら大変だ。
怒られる? いや……。
きっと、「なになに? 楽しそ〜。お母さんも仲間に入れて〜っ」なんて言うに決まっている。そして、とんでもない命令を下すのだ。
なんたって、母さんはド天然だから……。
「お前ら。このゲームで最後な? そろそろ弥生も帰らなきゃいけないだろうし」
「ああ、もうこんな時間ですか。時間が経つのは早いものですね」
弥生が時計に一瞥くれる。別に俺は彼女をお開きの口実に使ったわけじゃない。実際、あまり遅くなると彼女の家族が心配するはずだ。
弥生の母親は心配性……いや、過保護……それも違うか……まぁ、有り体に言えば、教育ママ的な厳しい人なんだ。ウチの母さんとは正反対と言える。
「えー。泊まっていけばいいのに。弥生のお姉ちゃんも入れて三姉妹会議しようよ~」
「いえ、ヒナさん。お誘いは嬉しいのですが、急に外泊するという訳には……。母が許しません」
「そっかぁ。じゃあ、次の機会っ。んで~、皆で一緒におしゃべりしながら寝るの。ヒナ、スゴく楽しみだなー」
「それは楽しそうですね。次回、来る時は頑張って外泊許可を取ってきますね」
突発的なイベントだったけど、今日一日で何だか弥生と三姉妹の距離がより近づいた気がする。俺としても喜ばしい限りだ。
最初は王様ゲームなんて嫌だなぁと思っていたが、俺が実害を被ったわけでもなし、こういう結果になるんなら、まぁ、悪くない。
「あのー、皆? そろそろ引いて欲しいんだけどー。皆の大事なお姉ちゃんの腕がそろそろ限界だよ?」
見れば、束ねた棒を握ってテーブルの中央あたりに差し出していたアヤ姉の手がプルプルと震え出していた。
偉いもんで、アヤ姉は俺たちが会話してる間もずっとその姿勢を保ってくれていたのだ。
(一回、テーブルの上に置けばいいのに……)
「す、すいません、アヤカさん……」
「うんうん。いいのよ。じゃあ、最後だから弥生ちゃんから引かせてあげようかなー」
「では、お言葉に甘えて。最後ですし……そうですね、折角ですから王様をやらせていただきます」
弥生が迷いなく棒を引き抜く。まるで、どれが「おーさま」と書かれた棒なのか、わかっているかのようだ。
「ふんっ。甘いわよ、弥生。王様になりたいなら、もっと気合いを入れて引かないと。さっき気づいたんだだけど、王様ゲーム神様は祈れば応えてくれるのよ」
どうやら、エリカは、さきほど俺の番号を当てたことで、おかしな宗教を作ってしまったみたいだ。
(素直すぎるのも玉に瑕だな……)
「お前はアホなのか? いねーよ、そんなニッチな神様」
「いるのっ! 見てなさい! ん〜っ……。とりゃーー!」
緊褌一番。エリカが棒を引き抜く。そして、すぐにしかめっ面になった。
どう見ても、祈りが通じたとは思えない。わかりやすい奴だ。
「どうだ? お前の祈りは王様ゲーム神様に通じたか?」
「……ぐぬぬっ」
(それ見たことか、王様ゲーム神なんて、いないじゃねーか)
こうして、棒が行き渡り、お馴染みのコールを全員で掛ける。
「「「王様だ〜れだ!?」」」
「僭越なから当代の王に即位させていただきます」
弥生がスッと立ち上がり、そして、深々と頭を下げていた……。
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