夏、時々勝ち
@MKT94
第1話
「暑いぞ!脳みそ溶けるだろうがっ!」
今日は最高38度らしいからな。当たり前だ。
夏なら当然であろう事をわざわざ口に出して、颯太と俺は暑さで今にも閉じそうな口を、無理に動かし続けた。
扇風機から送られる生暖かい風を、一切の快感と思えぬ程に暑い。アイスを食べた。お昼は素麺だった。おでこには冷感シート。畳の冷たいところを求めて、なめくじのように這った。肝心のエアコンは壊れている。でも颯太は喋り続ける。
「お前、なんでそんな冷静なの?暑くねぇの?」
はぁ。なんでこいつは当たり前のことを、こう何度も聞いてくるのだろうか。
言ってるだろ。暑い。当たり前だ。
このやり取りも3回目。こんな会話をしていると、余計に暑くなる。
「あー。海行きてぇな。女の子と。」
おい。ニヤニヤしながらこっちを見るな。
おまえの言いたいことはもう分かった。あかりの事を指してるんだろう。
あかりは同じ高校に通う女の子だ。俺から見ると、総合的に"中の上"と言ったところだった。目は少しつり上がっていて猫みたい。鼻筋がすっと通っている。白い肌で冬は雪女の様。唇は、いつもリップだかグロスだかを塗っているため、"グロス"の響きと同様程よい色気を感じる。高校生には十分な色気。性格は"鉄壁" "冷酷"と言う類の言葉が似合う。"クールビューティ"と言えなくもない。
まぁ俺はあの強気な顔と、可愛げのない性格の女性は好きでは無かった。だから"中の上"。と思っていた。ああ全く。君もなんと無く分かってんだろ?
「好きでは無かった。」「中の上と思っていた。」
何?はっきり言えって?
よし。一旦まだ隣でニヤニヤしてる奴がいるから、そいつに1発ぶち込んでからだ。ぶち込んだ後に詳しく話してやる。あかりの事が好きって言うのは当たり前だ。そんな事分かりきってるだろ?
まぁ、それ以外にも色々あんだよ。
そう焦るな。麦茶でもいれよう。ゆっくりしていけよ。恋焦がれる青春の夏は、始まったばっかなんだから。
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