第11話 劇場と舞台
父の職場の劇場につくとエントランスにいた支配人が笑顔でやってきた。
「やぁ、ミーネ。アルテス、今日もかわいいね」
「ミレ伯父様、毎度伝えてますがアルテスを変な目で見ないでくださいな」
「見てないよ、ハーフエルフとして育つアルテスの成長が楽しみなだけだよ」
ミレ伯父さん、最初に会った際に母さまの父の兄と紹介された。
この中央都市でどんなコネがあったら他民族のエルフがこんな劇場を建築、運営できるんだろうか。
私は劇場を見上げる、前世で見たことがあるけど劇団四季の劇場ぐらいのサイズ感がある、中央都市でも城を除く単独の建物としては特に大きく、唯一の施設だ。
劇場は父がやっている劇団を始め、様々なイベントの会場となっている。
一度ミレさんと話してみたいな、劇場の設計や建築、そしてこの劇場を維持する為の興行システムをどうやって思いついたのか。
つい、この人も転生者なんじゃないか、なんてことを考えてしまう。
「アルテス、何か気になることでもあるのかい?」
そんなことを考えてるとミレ伯父さんから声をかけられた。
「伯父様、劇場のような施設は他の都市にもあるのですか?」
私は咄嗟に答えた。
「あぁ、そこが気になるのか、アルテスはほんとに聡い子だね。答えてあげよう、他の大陸を含めてこれだけの規模の、と言うか劇場と言う施設があるのはここだけだね」
「え、他の大陸にもないのですか??」
「そう、私が知る限りではね。たぶん小さなステージだったりって言うのはあるかもしれないけど、それもほとんどないと思っていた方がいいかな。そもそも演劇や歌劇が他の大陸には娯楽として存在しないし、この人族の大陸も歌や踊りが確立しだしたのはここ100年ぐらいじゃないかな」
芸術の文化が殆どないことは薄々感じてたけど、それを記した書物もないし、両親もそういった歴史のようなものは知らないっぽかったからミレさんから聞けたこの話は私に衝撃を与えた。
「そうなんですね、父様と母様は先駆者ですね」
冷静を装いつつ、そう言うと母様はふふんと鼻を鳴らして私の頭を撫でてくる。
「さ、アルテス、ライズのところに行きましょう」
母様は私の手を取ったので私はミレさんにスカートの裾を上げ会釈をする。
「うん、ライズもいい子を持ったね」
「ありがとうございます。ミレ伯父様、今度、劇場の話を聞きたいです。なんで芸術をやろうとしたのか、この劇場を建築しようと思ったのか?とか」
去り際にそう伝えるとミレさんは少し驚いた顔をした後に笑顔で、
「長くなるからゆっくり話せるときにしよう」
と伝えてきたのだった。
父の職場であるこの劇場、主な公演は父の劇団の演劇と歌劇、それと劇団に感化されて個人でやっている人たちの魔法の演出劇、それと一番多いのがえらい人たちの集まり、そんな感じで使われている。
父たちほどの舞台演出や構成を持った人たちはいなかったので如何に両親がすごいのかがわかったのだ。
扉を開け、劇場の中に足を踏み入れると目の前には前世でも映画館や劇場で見たことのある段々になっている椅子が見えた。
その中心には舞台があり、どの席からでもよく見える造りになっている。
「おーい、アルテスにミーネ、こっちだー」
劇場内に入り込むとどこからか父の声が聞こえた。
「ほら、アルテス、あそこにいるわよ」
母が指差す先、建物2階のテラス席に元気に手を振る父がいた。
「父様―」
私も元気に手を振るとそれを見た父がそこから飛び降りた。
父はゆっくりと下降するとそのままこちらに向かってくると笑顔で
「もうびっくりしてくれないんだな、アルテスは」
と言ってくる。
「最初はびっくりどころじゃなかったんだからね」
これを初めて見た時は叫んだものだ。
2階のテラスと言ってもここは劇場、見た目で行くと前世の3階相当に見える高さだ、そこから笑顔で飛び降りられてびっくりしないものはいないだろう。
「母様との訓練が終わったので会いに来ました」
「訓練お疲れ様。うれしいこと言うね、それなら久々に一緒に帰ろうか。もう少しで仕事が終わるからちょっと待っててね」
そう言うといつか見せたスキップをしながら奥に消えていく。
ルンルンだ。
「私も少し舞台の方を見てくるわね。あ、そうね、9歳でいい機会だし、アルテスも一緒に来る?」
9歳、職場見学か。
よし、それなら、と一緒に行くことにした。
舞台はいつも見上げるか、テラス席から見下ろすかしかしたことがなかったから。
私は舞台の前で立ち止まり、いつもと同じように見上げる。
観客席からは1メートル程度の高さがあるが最前列から2段ほど下がっているところから1メートルなので最前列の席からもちゃんと舞台が見えるようになっている。
私がぼーっとしていると母様は舞台横の階段から上がり、劇団の人たちと打ち合わせをし始めた。
そうだ、私は初めて舞台に上がるんだ。
そのことに気づいたら舞台中央にある階段を勢いよく駆け上がっていた。
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