第7話 神様の加護
移り行く季節を肌で感じながら、ボクは成長していると実感する日々。
そう思わないと気分的に落ち込む時もあるし、何より前向きに生きようと決めたのがこのエリアに初めて来た時だ。
あと数日で15歳になる。
加護の影響なのか、タイムリミットのように魂に響き出したのが1年前、14歳になった時だ。
神様の加護が無くなってもがんばらないと、なのでステータスアップとスキルの修得、この一年はそれを目標に地道にコツコツと頑張った。
私もいい方向に変わってると思うけど、それ以上にスラム街も変わった、気づいたら人の交流が増え、お店も増えた。
元々そんなに多くはなかったけど人が路上で寝ていたり、喧嘩だったり、怒号が響くようなことも更に少なく、スラム街というより、前世で言うところの繁華街のような感じになった。
この街に来てから、と言うかこのエリアに来てからは他に出る機会がないから他所がどうなってるかなんてわからないんだけどね。
悪いことだと14歳になる数日前にばあやが亡くなった。
家に帰ったらもう既に冷たくなっていて、その身体を抱きしめたとき、自然と涙が出た。
この世界に生まれて、血は繋がっていないけど唯一の家族だった人、感謝しかない。
生まれてからずっと支えてくれた、もしかしたら私が城から出された時についてこなくてもよかったのかもしれない。
怖くて聞けないまま、でもそれ以上に、親孝行、できなかったな。
そして1人で逝かせてごめん。
これからは本当に1人だ、がんばろう。
私は変わらずにクレイとスレイのバル「TheBrowBar」で働いている。
そんなある日、お客様たちの話が耳に入ってきた。
「中央都市でとても面白い劇を見たぞ」
「団長かっこいいよな」
「いや、あの奥さんの演技もだが魔法演出がすごい」
「劇団が一つにまとまってるのが壮観だったし、何よりあの劇場がすごい」
4人組がわいわいと話していると横にいたお客様が。
「私も見たよ、今回の劇、企画は団長のとこの子供らしい」
そんなやり取りだ。
この世界にも劇場があるんだ、王城には5年しかいなかったけど劇は見たことがなかった。
と言うか歌や踊りとかも見たことなかったかな。
前世ではボイストレーニングとかダンスレッスンをがんばってやってたから、少しはそっちの世界で大成したいって夢を見たこともある。
生まれ変わった現世でもこれは難しいだろうなぁ、今はお店の空いた時間に少し歌ったりしてるぐらいだけど、他の店でこういったことをやってるって話も聞かないし、何より練習もしてない完全な素人だしね。
でもお店で歌うのはみんなが笑顔で気持ちいいからボクはそれで満足だ。
それにしても子供が企画を考えたってすごい、団長の子共、この世界にも天才とかっているんだろうか。
そんなことを考えながら仕事をして、帰宅しようと外に出た時に、昼間4人組のお客様たちの会話に横入りしたお客様が外にいた。
驚いたボクが立ちすくんでいると。
「あ、怖がらないで。お久しぶり、セレネ、元気にしてたかな?」
神様だった。
「そんなに時間がないから家まで送りがてら話をしよう」
神様と2人で家に向かう、現世にも来るんだ。
「うん、そんなにいられないけど、来ることはできるよ。あと本当は接触しちゃダメなんだけど、ちょっと公平にしないといけないからね」
心の声を勝手に読むあたり、やっぱり神様だ。
「ごめんね、時間もないからこっちから一方的に話すことになると思うけど」
そう言うと神様はアルテス、前世で一緒に死んだあの子の話をしてくれた。
アルテスと言う名前、神様は一度会っていること、そしてボクのことを話し、ボクを探すためにがんばっていること、だから諦めないでがんばってほしいということ。
そして、加護やスキルのことを改めて話してくれた。
家までは歩いて15分ぐらい、この世界に来て、色々理解した私は神様の話をようやくちゃんと理解して聞くことができた。
神様と会って数日が経った頃。
私はひっそりと15歳になった。
15歳はこの世界だと成人、そして神様からもらった加護のリミットだ。
部屋の中で祈りながら時間を待つ。
時間になると加護が弱まったとはっきりわかった、どんな加護だったのかはこの前神様に聞いたけど、今まで助けてくれてありがとう。
そして無くなった訳じゃなくて、弱まったってことはこれからもよろしく、でいいのかな、ここらへんも聞いておけばよかったな。
より一層、気を付けて生きていこう。
それと、ハッピーバースデー、成人になるまで生きれたね。
アルテス、出会えるまでがんばるよ。
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