第15話 五芒星ってなんだよって話
コースケが自室に向かってからもリュウジと隆の話は続いていた。
新宿区の地図を広げ、爆破事件のあった場所に隆が印をつけている。
「歌舞伎町、ヨドバシ市場、タカダノババ駅、現時点ではこの3か所、であってますよね?」
「はい、ただ先ほどの少女の口ぶりだと」
「まだ続きそうってことですね」
隆とリュウジは唸る。
「爆破箇所、その意図、何かしらヒントがあれば一番いいのですがこれだけだと何とも言えませんね」
「あの少女から何かしら引き出したいところだが」
「そうですね、ただ私たちはもう警戒されてしまっていると思うので、もし遭遇できたとしても何かを聞くというのは難しいかと」
そう言ったあとチラリとカノを見る隆。
先ほどの読唇術と転生の話にはまだ2人とも触れていない。
カノ本人がカミングアウトした後に放心状態になってしまっているのもあるが同級生でわざわざ学校を抜け出して病室まで探し当てたコースケがいないのも大きいと感じたからだ。
それに病室でのやり取りでカノが何かしらの覚悟を持って付いてきてくれたことには本当に感謝はしているがまさかすぐに爆破事件が起き、その犯人にも会い、不可思議な力を見せられたのだ。
隆はその眼の力により、カノ自身にも何かしらの力があるのはわかっているが色々なことが重なり過ぎているこの状況で聞く気にはなれなかった。
「そうだ、比屋根さん。先ほど呪術の一族と言われてましたがその方面には詳しいですか?」
「まぁ、一般の人よりは。ただ、呪術と言っても色々な種類、流派があるから全てを知っているという訳ではないよ」
「はい、今起きている連続爆破事件を呪術で何ができるかを前提に考えた場合、想定できるものはありますか?」
「うーん、現代のものだとそんな大それたものは出来ないと思うが、我々ユタ一族の力で考えると結界ぐらいしか思いつかないな」
「その結界だとこの3箇所の次にポイントとなるエリアって考えられますか?」
「言わんとすることは勿論わかるが、推測は難しいな。どこが起点になっているか、どこに力を込めるか、どのエリアを対象にするか、それに元々の土地としての力を持っている場所もあるからね」
「わかりました。それでは何パターンか、地図上に書き込んでもらってもいいですか?あ、ペンは違う色にしましょう」
「そうだね、何かが浮かぶかもしれないからね。わかった、書いてみよう」
そんなやり取りをしているとコースケがリビングに戻ってきた。
先ほどとは違い、目に力が込められているように見える。
リュウジはそれを確認して、声をかける。
「コースケ、お茶が冷めたから新しいのを入れてくれ。須堂さんにも手伝ってもらって」
放心状態ではあったが呼びかけられたことに気づいたカノはコースケを見ると立ち上がり、声を掛ける。
「ネコ、大丈夫?」
「それはこっちの台詞だ、カノこそ大丈夫かよ」
大人2人はそれを見て少し安堵した。
リュウジは改めて地図を見直し、気になるポイントを書き込み始める。
お湯が出来上がり、人数分のカップをお盆に乗せたカノが戻ると続いてコースケが戻ってきた。
リュウジはそれを見ると書くのを一旦やめて、カップを置くのに地図を移動させる。
「で、親父は何書いてたのさ?」
そう言ったコースケは自分のカップを口につけ、ズズズっと中身を口に含む。
「あぁ、九葉さんに言われて、次の予測地点をな」
「爆破事件のですか?」
カノが聞く。
「えぇ、呪術を使ったものであるとわかった以上、リュウジさんにお手伝いしてもらってます」
カノも自分のカップを持ちながら地図を見る。
「結構予測地点、多いですね」
「まぁ、何パターンも想定してってのもあるからね」
「お2人も何か気づかれたら言ってください、いくらでも聞きますから」
「わかりました」
そういってカノはソファに座ると再び地図を見る。
「コースケも座ったらどうだい?」
リュウジがコースケに聞くと、コースケは首を傾けながら地図を見ていた。
「これって探偵とか刑事もののテレビとかでよく見る感じで線とか引いてもいいやつ?」
「もちろんいいですよ」
「この赤色が爆破事件のあった場所でそれ以外の色のところが親父が予測したとこだよな」
コースケはおもむろにペンを取るとブツブツと言いながら定規を色々な角度で地図に当てる。
「あー、やっぱこの角度ならしっくり来るかも」
斜めになっていた地図を自分の前に持ってきて位置を戻すとそのまま定規を引きだすコースケ。
赤色の3箇所を通るように、その他のポイントを使い、線を引いていく。
「おー、すごい」
隆が声を漏らす。
「へへ、中二病まっしぐらだぜ」
出来上がった地図を見て、コースケが自慢げに鼻をこする。
「このマーク、漫画とかアニメで見たことあるわ」
そうカノが答える。
コースケはリュウジに感想を求めようと目線を動かす。
他2人もどうなのかとリュウジに視線を集めた。
「これは、五芒星」
3人から見られる中、このマークを見てリュウジはそう呟いた。
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