第34話 柊ちゃんの憂鬱・窮鳥入懐
私は柊。実家の神社を再興するため、悪霊に魂を売った女だ。
その悪霊、ゴードラちゃんが、例によって突然「海賊王になる!」とか言い出した。
悪徳社長が持っていたクルーザーを乗り回して気分が高揚したらしく、幽霊船を手に入れるとかサルベージするとか言い出して、鉄砲玉のように飛び出して行ってしまった。
まあ、スマホ霊のギーグルちゃんを持たせたので、飽きたら戻ってくるでしょう。
しばらくは静かになりますね。
っと、ボスであるゴードラちゃんが不在になったタイミングで、私に助けを求めてくる人がいる。
例の悪役令嬢マリーちゃんだ。
…私が何者なのか、わかってんだろうか、こいつは。
先祖代々受け継いできた祠を奪われ、両親を死に追いやられ、そして両親の仇に対して復讐を遂げた。それが私だ。
そして、悪役令嬢マリーちゃん、あなたは私の復讐対象だ。
なになに?
組長…ゴードラちゃんに毎日折檻されて死にそうです?
…死んでないじゃん。死んでから文句言ってよ。
え?
憑依されて長時間体の自由を奪われる?
体は生傷だらけでボロボロだ?死んでないじゃん。ガマンしろよ。
え?
ラーメン食べたいとかい言って憑依されて暴飲暴食、恥ずかしい映像を撮影された?
ロボットバトルの対戦相手にされた?
温泉に入りたいからって憑依されて全裸で温泉内を走り回らされた?
違法行為の数々を尻ぬぐいさせられた?
…うーん、ヒトゴトとは思えないエピソードっていうか、今まで私がゴードラちゃんからされてた仕打ちを、今はこの悪役令嬢マリーちゃんが引き受けてるって感じか。
身につまされる…。
マリーちゃんさ、貴女の受けてる状況、私も経験あるから分かるけど、死にはしないから耐えて。…え?なんでそこで泣く?
わかった、わかったから!
くっそ。
なんで親の仇の一族であるコイツを心配しなきゃならんのだ。
私なんかよりずっと恵まれた環境で生きてきた上級国民のコイツを。
くっそ。
これが窮鳥入懐ってやつか。
くっそ、くっそ。
これが復讐に走った私への罰か。
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