第22話 ウェイトレスになってみた

「異世界からこんにちは。リリス・サキュアです♪」


 いつもとは違うウェイトレス姿のリリスが画面の中で明るくいつものオープニングの挨拶をした。


 どうやら撮影場所は宿の部屋の中らしい。


「今日はですね。コスプレをしてほしいっていうみんなのリクエストにお応えしてですね。今私がお世話になっている宿の、ウェイトレスさんの制服をお借りしましたー」


 リリスはそう言いながらパチパチと拍手をする。


「どうですか? 似合ってますか?」


 リリスは立ち上がり、くるりと回ってコーデを見せる。


「エプロンも可愛いですし、ほら! 赤のリボンがすごくかわいいと思うんです」


 リリスはそう言って髪や袖口のリボンを触って見せつけてくる。


「それでですね。今日はこの制服を着て、ウェイトレスさんに挑戦したいと思います♪ いえーい!」


 リリスは再び自分で拍手をする。


「実は今、ゴブリン退治に来てくれた冒険者さんたちがこの宿に滞在しているんです。なのでちょっと緊張しますが、頑張ってウェイトレスをしてこようと思います。それじゃあ、いってきます♪」


 それから画面が切り替わり、リリスがスープの入った器をお盆に載せて運んでいるシーンが映し出される。


「お待たせしました。干し肉と豆とジャガイモとニンジンのポトフです。」


 リリスはにっこりと笑顔でそう言うと、スキンヘッドの大男をはじめとする厳つい男たちの前に器を並べた。


「こちらの黒パンを浸していただくのがおすすめの食べ方です」


 リリスはテーブルの中心に黒パンが山盛りになった籠を置いた。


「おう」


 そう返事をしたが、男たちの視線は大きく揺れるリリスの胸に吸い寄せられている。


「失礼します」


 リリスはそれに気付いていないのか、微笑みを浮かべながらそう言うとすぐに厨房へと下がった。そして他のテーブルにも次々と配膳をしていく。


「エールです。二杯目からは別料金となりますのでご注意ください」


 リリスが二人の女性が座るテーブルにエールを届ける。


「ああ、ありがとう。リリス」

「わたくしたちはそれほど飲みませんわ。ただ……」


 女戦士がお礼を言い、ヴェールを被った女性は心配そうに視線を外した。


「あの? 何か?」

「ああ、大丈夫だ。気にするな」

「はい。それでは失礼します」


 女戦士にそう言われ、リリスは不思議そうな表情をしながらも下がっていく。


「おーい! おかわり!」

「はい。ただ今!」


 リリスはそう返事をすると、足早にエールを持って先ほどの大男のところへと運んだ。


「お待たせしました」

「おう!」


 すると大男はすエールを一気に飲み干した。


「おかわり!」

「俺もおかわり!」


 続々と注文が入り、リリスは大忙しにエールを運ぶ。


 おかわりの声と共にリリスが小走りに厨房へと向かい、エールの入ったコップをテーブルに運ぶ。その様子が早送りで延々と繰り返される。


 そして画面がフェードアウトし、客のいなくなった食堂にぽつんと立っているリリスの姿が映し出された。


「というわけで、ウェイトレスをしてみました。どうでしたか? うまくやれてましたか? まさかあんなにたくさんエールが注文されるなんて思ってもみませんでしたね~」


 リリスはそう言って少し疲れたような笑みを浮かべた。


「というわけで、コスプレしてウェイトレスをやってみました。良かったらコメント欄で感想とか、教えてもらえると嬉しいです」


 リリスはそう言って両手を胸の高さまで上げ、人差し指を下に向けて上下させる。


「いいねボタン、チャンネル登録もよろしくお願いします。それじゃあ、また会いにきてくださいね。バイバーイ」


 リリスは笑顔で右手を振り、動画はそこで終了するのだった。


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 トマに絡まれたシーンはがっつりカットしたようです。次回は日本の様子となります。委員長も登場しますのでお楽しみに!

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