第6話 ヤンデレ勇者は現実世界からのストーカー?

日本から来たって…それホントに言ってます?」

俺があっけにとられていると彼女は嬉々とした表情で語り始める。

「マジのマジ…大マジです…っ!」

俺は一瞬背筋が凍る思いがしたが、俺の普段が誰かに見られていたのだと気が付くと恥ずかしさもわいてきた。



「なんで…俺とあなたって別に何の接点もありませんよね…?」

俺からすると、彼女と俺は初対面に思えた。

この異世界に転生してきたことで見た目が変わっているのかもしれないと思ったが、俺の現実世界での異性との交流は精々母親程度だったはず…。


「まさか…母さん…?」

自分の母親だと思ってみてみると、何故かどうしても安心感が出てくる。

「いや…違うけど…ってどんだけ異性と交流ないんだよ君はぁ!」

彼女は若干憤慨していたが、俺にはほかに思いつく女性がいなかったのだから仕方がないことだ。


「君からすれば、確かに初対面かもね。僕…ずっとキミをつけてただけだし…」

つけていたという言葉に引っ掛かりを感じたが、一旦おいておくことにした。

「申し訳ないがまったく気が付かなかったんだが、あなたからすると何処かで会ったことがあると?」

彼女は大きく頷き、俺の周りを回り始める。


「そ、だけどリアル(現実世界)の私の名前を教えるのは僕にこれで一撃与えられたらにしてあげる」

彼女はそういうと、何かをつぶやき、手元に剣を召喚させた。

「これで僕に切りかかってきなね。それとも女の子の肌に傷をつけるのがちょっとあれだなーって思うんだったら大丈夫」

彼女はそういうと、持っていた剣で自分の腕を軽く切った。


あまりに唐突な行動に、俺は一瞬何が起こったのか分からなかった。

まるで爪を切るみたいに、腕を切傷を付けた。

「大丈夫大丈夫。ま、見てて」

俺が慌てて彼女に駆け寄ろうとすると彼女はそれを手で制止した。



「ここ、見てみて」

彼女が指さす箇所を見てみると、先程彼女が自分でつけた切り傷がみるみるうちに直っていっているのが分かる。

「これが冥級魔法。僕はね、回復魔法を常に体内で血液と一緒に循環させてるんだ」

「だから並大抵の傷はすぐに治るし、急所に攻撃が当たっても致命傷になることはないしたとえ心臓をつぶされても即死することはない」

確か以前オンラインゲームで、いくら攻撃を与えてもHPが減らないチーターに出会ったことがあるがそんな感じだろうか。


「じゃ、君の不安は以上かな?」

あと一つ、聞いておきたいことがあった。

思い当たる節があったので、それを聞いてみたかった。

この口調、そしてあのさっき感じた違和感の正体。

「お前、ユウヤか?」

「えっ…」

彼女が一瞬うろたえたこともあり、俺のその疑念が一層確信を持つ。



「なんで…なんで、分かったの…?」

黒宮ユウヤ、俺の昔からの幼馴染だった男だ。

そう、俺は異性との交流はなかったというところから見落としてしまった。

ただ一人称が僕でやけに俺にやさしく似ている奴がいたのでまさかとは思っていた。



「いや、隠す気なかったろ」

まさか…俺にやさしかったのもそういう意味だったのだろうか…。

俺は、何故かどうも一癖二癖あるやつを引き付けるらしい。

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