MP1レベル1の最強魔術師は追放され、メンヘラ魔王とヤンデレ勇者に徹底的に愛される!?

西村洋平

第一話  メンヘラ魔王

暗闇の中で、その光はどんどんと小さくなっていく。

無意識に手を伸ばし、助けを求めるも彼らにその意思はないらしい。

とてつもない絶望感と孤独感の板挟みで、はっきり言って漏らしていた。


「おぬし、ここが王の間と知っての無礼か?」

真後ろからするその男とも女ともつかない内側から響いてくるような声は俺の股間をキュッとさせた。

俺こと九先日ハヤトは、ぷるぷると生まれたての小鹿のように震えていることしかできない。


「顔を見せよ、後ろを見ていては顔がよく見えんだろうが」

そう言うと、その声の主は無理やり俺の顔をガシッと掴みその圧倒的な力で振り向かせた。

振り向いた先にいたのは、褐色の肌に赤い瞳をした…そしてふくよかな胸元に肩まで伸びている黒髪からは大きな角がのぞいていて、キメラのような尻尾に黒いドレスを身にまとっていた。



「裏切られたのだろう?あの仲間だと思っていた者たちに」

そういうと彼女は、俺の顔をクイッと自分の方へと近づける。

松明だけが照らす薄暗い中で彼女の顔が唇が触れ合いそうなほど近づく。



「我が名は魔王、ユグノア・アリアドア。ずっ~と、見ておったぞ。ここからな」

彼女はそういうと、自分の瞳を指さしにっこりと微笑んだ。

「この邪神の魔眼を通して、おぬしの全てを」

「なぜだ…?と思っているのだろう?」

彼女はドレスのすそを掴み、くるりと一回転した。



「私はな…お前のことが好きなんだ…」

「だから…お前のすべてを知りたくて…覗いていた」

「おぬしの好みを知りたかったのだが、なかなかそういう素振りを見せんからもどかしいと思っていたところを」

「あやつらがおぬしを連れてきてくれて、その点は感謝せねばなるまいな」


彼女は俺の疑問を訪ねる前にすべて答えた。

そして大きくこぶしを振り上げたかと思うと、刹那、そのこぶしは地面へと振り下ろされる。

ドゴゴオゴオゴゴゴオゴォォォォォォォォォヲヲヲヲォォオォォォォンンンンンンンンン!!!という爆音が部屋中に響き渡ったかと思うとともに土煙に満たされた。



「じゃが、おぬしを裏切った件については話は別じゃ」

「おぬしには、これくらいには強くなってもらうぞ」

「復讐のためにな」

土煙の中に立つ彼女は、まるで線上に咲く一凛の花の様に凛々しく気高さを感じさせた。

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