第42話 エリザベス女王杯パドック
パドックに人が溢れはじめ身動きが取れなくなる。
あーG1が始まるぞという雰囲気を感じる。もう3回目だからこの感じにも慣れてきた。
そうしているうちに馬が曳かれてパドックにやってくる。カシャカシャというカメラの音が聞こえ、パドックの周辺の温度がぐっと高くなったような気がする。
言葉で伝えづらいどうともいえない緊張感がG1のパドックにはある。俺はこの感じは嫌いじゃない。むしろこの緊張感が好きになってきている感じがする。
先頭を歩く馬が目の前にきたときにプロパティと呟く。
ゼッケンには1番とかかれ名前はアイポポッチと書かれている。
表示されたステータスは……
アイポポッチ
HP422
MP0
たいりょく354
ちから411
すばやさ624
まりょく0
みりょく54
ちりょく52
この馬は師匠が注目の馬の1頭って言ってた馬だ。そしてたいりょくがポイントとも……確かにたいりょくが低い。このレースは確か2200メートルのはずだから400ぐらいのたいりょくがないとダメじゃないかな?
次の馬は……とゼッケンは2番
ヘリハラ
HP453
MP0
たいりょく401
ちから495
すばやさ486
まりょく0
みりょく43
ちりょく50
わりと能力は高めだけど特筆するべきところはない気がする。
3番はと……
アオイウマノハトコ
これだ秋華賞ってレースを勝った馬。師匠は疲労に注意って言ってた馬だな。
アオイウマノハトコ
HP312
MP0
たいりょく423
ちから451
すばやさ525
まりょく0
みりょく62
ちりょく48
……師匠のいうようにHPが低い……ということは疲労が溜まっているということか? 能力の総合的な力は高いけど
全17頭のデータ入力を終え師匠にノートPCを渡す。
「どれどれ……」
「師匠の言ううようにアオイウマノハトコはHPが低いし、アイポポッチはたいりょくが低いですね」
師匠はスマホとノートPC両方を見比べながら話を続ける。
「ああ、そうだなこの人気2頭は切れるか……3番人気のルーザーズマーリンも事前に状態がよくないという情報の通りにHPが低いな」
「ええ、そうなんですよね」
現在3番人気9番のルーザーズマーリンの能力
HP301
MP0
たいりょく463
ちから463
すばやさ532
まりょく0
みりょく64
ちりょく51
一応一番能力の高い馬はアイポポッチということにはなりそうではあったがスタミナ面が多分持たない。次いでアオイウマノハトコになるのだがこの馬は疲労が抜けていないように見える。そしてルーザーズマーリンも調子が悪いという情報の通りにHPが低い。
「師匠1,2,3番人気の馬全部なにかしらミソが付いてますよね」
「ああ、そうだな。ということはこれはチャンスでもある。俺たちが回収率を捲って勝つなら1,2,3番人気が切れたほうがいい」
「当たらなければ意味ないんですけどね」
「おいおい異世界馬券師を信じられないのチミは?」
「じゃあ師匠の本命はなんですか?」
「……分からん! こんな混戦とは思わなかった!」
「ですよね……」
能力の平均値が高いのは人気通りの3頭だが……この3頭にはミソがついてる。しかし他に能力が突出している馬がいない……
ノートパソコンとスマホみて、新聞を見る師匠。そしてふいに呟く。
「え……まじ?」
もう一度ノートパソコンとスマホと新聞を確認すると師匠の手がぷるぷると震えているように見える。
「ど、どうしたんですか師匠」
「いたぞ……一発逆転の大穴本命が!」
「え? ほんとですか?」
「ああ、この馬だ16番アオイハル!」
師匠はそう言ってノートパソコンの画面を俺の方に見せる。
16番 アオイハル
HP452
MP0
たいりょく425
ちから502
すばやさ489
まりょく0
みりょく33
ちりょく55
確かにちから、すばやさ、たいりょくはまずまずいいが本命に推せるほど抜けているようには見えないが……
「確かに能力は平均よりちょっと上ぐらいですけどこの能力なら1番とか6番の馬も変わりないような気がするんですが」
「ああそうかもしれんがこの馬、京都競馬場の成績がいいんだ9回走って5着以下が1回しかない!」
「京都競馬場が得意ってことですか?」
「前走は府中牝馬ステークスは7着に負けているがこれは東京競馬場だし出遅れてもいるから割り引いていい、それに脚質だ今のトラックバイアスは外差し傾向。この馬の脚質は差しだ。その上に現在10番人気……もうこの馬を買って一発逆転を狙う!」
「確かに全然人気してないですね。この馬、能力は劣ってないのに」
「そうだ。そういうこと。全くバレてない」
「じゃあ馬券はどうするんですか?」
「……」
師匠だまって何も言わない。
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