第52話 面接不合格?
『バターン』
ついに面接室の扉が開かれた。扉が開かれた先には大きな長方形の木製のテーブルに3名の面接官が腕組みをして、品定めをするように眼光を光らせていた。
3名の面接官の1人目は、この専門魔法学院のトップである学院長のカメロパルダリス【男性】。若干30歳で学院長に就任した全魔法適性を持つ元英雄ランクの冒険者である。2人目は攻撃魔法の担当教師のデルフィヌス【男性】。第2魔法騎士団に所属し、そこでは団長を務める攻撃魔法のスペシャリストである。3人目は防御系魔法の担当教師であるアーモンド【女性】。彼女が初案した防御系魔法を応用した美容魔法は、ヴァイセスハール王国で今1番注目を浴びている新魔法である。この美容魔法を習得するために他国からこの学院に入学する者も多い。
「なぜ、シェーネ君がいるのだね?それにショコラ君。そして・・・」
最初に言葉を発したのは学院長のカメロパルダリスであった。本来面接では、扉を開けると受験生である私が挨拶をして、名前を名乗るのがしきたりである。しかし、その面接の作法を私はすることはなく、シェーネが勢いよく扉を開けてしまったのである。
「メアリーまでいるのだね」
メアリーとは事務員のことである。
「私が説明いたします」
シェーネが3人の面接官に近寄る。
「私がするよん」
ショコラも前進する。
「いえ、私が説明いたします」
負けじとメアリーも前にでる。私はわけがわからずに後方で待機している。
「説明などいりません。すぐに3人は出て行きなさい。ここは神聖なるシェテーネン専門魔法学院の面接室です。面接に関係ない者が入ることはできません」
「学院長がおっしゃることは私も理解しています。しかし、面接の場は開かれた場ではなければいけないのではないのでしょうか?」
「そうよんよん」
「その通りだわ」
「シェーネ君、何が言いたいのですか?」
「きちんと公平に面接が行われているか私たちがチェックをしたいのです」
「そうよんよん」
「その通りだわ」
「君たちがチェックをしなくても、私たちは公平に面接を行っています」
「こんな密室で面接をしておいて、はたして公平と言えるのでしょうか?公平に面接を行っていると言うのであれば、私たちがここに居ても問題はないのではありませんか?それとも、私たちがここに居たらまずいことでもあるのでしょうか」
「そうよんよん」
「その通りだわ」
「それは屁理屈というのです。面接とはこのような場でおこなわれるものです」
「今まではその言い訳で通用していたかもしれませんが、私にはその言い訳は通用しません」
「そうよんよん」
「その通りだわ」
「・・・わかりました。あなたがたに何を言っても無駄みたいなので、今回だけは特別に面接を観覧することを許可します」
「さすが学院長、話の理解が早くて嬉しいです」
「そうよんよん」
「その通りだわ」
「それでは面接を始めたいと思いますので、ハツキさん席にお座りください」
「はい。失礼します」
「よんよん」
「それでは私も」
「あの〜私の座る席がないのですが・・・」
シェーネたちが真っ先に座ってしまったので、私の座る席がなくなってしまった。
「ここがあなたの席よ」
シェーネが自分の膝をポンポンと叩く。
「・・・」
「早く座るのよ」
私に拒否権はないようだ。なので、私はシェーネの膝の上に座った。3人の面接官も何を言っても無駄だと悟っているのでスルーする。
「それでは、いつもより少し異例な形ですが、面接を始めたいと思います。では、こちらから質問をさせてもらいます。ハツキさん、なぜこの学院に入学したいのでしょうか?具体的に説明してください」
「学校に通ってみたかったのです」
「・・・それだけでしょうか?」
「はい。一度学校に通ってみたかったのです」
「何か大きな目標を持ってこの学院に入学したいわけではないのでしょうか?」
「目標???そんなものはありません。学校に通いたいのです」
「なんて短絡的な理由なんだ」
今まで黙っていたデルフィヌスが机を叩きながら大声をあげた。
「全然やる気が感じませんわ。これ以上面接をする必要があるのかしら」
アーモンドも表情を強張らせながら発言した。
「ハツキさん、この学院は魔法を探究する場なのです。遊びに来る場所ではありません。これ以上の面接は無駄だと判断しましたのでお帰りください」
カメロパルダリスは私の推薦状を破り捨てた。
「ちょっと待つのよ」
「待つよんよん」
「待つのですわ」
「何かね、シェーネ君。もう面接は終わりましたよ」
「学院長・・・あなたには私はガッカリしましたわ。あなたは元王者ランクの超一流冒険者なのに、物事の本質を見抜く力を持っていないのですね」
「そうよんよん」
「その通りだわ」
「何を言いたいのだね」
「あなたはハツキちゃんの発言の本当の意図を理解していないと言っているのよ」
「そうよんよん」
「その通りだわ」
「発言の意図ですか・・・彼女の言葉に重みを感じることはありませんでした。ただ単に学校に行きたい。ただそれだけです。あまりに平凡でやる気のない返答でした」
私は面接に落ちてしまった。はたして、ここからの巻き返しはあるのだろうか・・・
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