第27話 新たなる刺客
「全て無償で提供するから遠慮なく持っていきなさい」
「ここには1000を超える青の魔石がありますわ。お兄様、どうやってこの魔石を手に入れたのですか?」
「それは商売上極秘事項になっているので、お前でも話すことはできない」
「魔石の流通は商業ギルドがある程度は管理をしています。お兄様・・・何か重大なことを隠しているのですか?」
「いずれ話す時が来るはずだと思うが、今はその時ではないのだよ」
私はカリーナの後ろで大きく首を横に振っていた。
「わかったわお兄様、いずれ話す時がくれば教えてください。この魔石はありがたくいただいていくわ」
1000個の魔石を女性1人で持って帰ることはできないので、後で取りに来ることになった。
「ハツキさん、本当に話さなくて良かったのですか?王都では10万の軍を編成してオークキングの討伐の準備をしています」
「ヘンドラーさんがさっき言ってたみたいに、隕石が落ちてきてオークは全滅したってことにすれば良いのよ」
「それは・・・流石に無理があります」
「私が退治したってことさえ隠してもらえればいいのよ。あとはヘンドラーさんに任せるわ」
こうして、ヘンドラーは私がオークを全滅させたことを言えずに魔石を渡すことになった。
一方冒険者ギルドでは・・・
「ギルドマスター、王都での会議はどうでしたか?』
ギルドマスターの名はアーベン、坊主頭の長い顎髭を生やした中年の大男である。身長は2mあり体重も100kg以上はある。
「オークキングの件だ。オークの森の視察のために、各町の冒険者ギルドにCランク以上の冒険者を3組派遣しろとのことだ」
「3組ですか・・・面倒な案件ですね」
「どうせ王都の役人はいちいち調べることはしないだろう。適当に3組用意してオークの森の探索に出せばいいのだ」
「わかりました。そのようにいたします。しかし、それで大丈夫なのでしょうか?」
「相手はオークキングだぞ。しかも2000体はいるオークの森への視察だ。Cランク冒険者でも生きて帰ってくることはない。どうせ死ぬのなら適当な冒険者を使えばいいだろ。それでなくても『月下の雫』を捨てて、Cランク冒険者の数が少ないのだから」
「ギルマス、その件ですが、アードラーが『月下の雫』に倒されました」
「なんだと!そんなことありえないだろう。アードラーは元Aランク冒険者だぞ」
「何か不手際があったのかもしれませんが、アードラー率いる『真紅の爪』10名は、『月下の雫』と相打ちという形で、死亡しました」
「『月下の雫』の腕を見誤っていたな。依頼が失敗となるとクロイツ子爵への賠償金が発生するぞ」
アーベンは表の顔は冒険者ギルドマスターとして公務を行なっているが、裏の顔は盗賊ギルドマスターとして、裏の仕事を取り仕切っている。
「賠償金を払うことはない!俺がその依頼を必ず達成させる」
今まで2人しかいなかった冒険者ギルドのとある一室に、急に黒装束の男が姿を現した。
「いつから居たのだ」
「お前らが来るまでずっとここで待たせてもらっていた」
「お前は『真紅の爪』の者か?」
「俺は『真紅の爪』のサブリーダーのヴェルデだ。本当にアードラー様は死んだのだな」
「間違いありません。アードラーの命石を確認しております」
「アードラー様を倒す冒険者がいるとは聞いてなかったぞ!さては、お前らはアードラー様を裏切ったのか?返答次第ではお前らの命はないと思え」
「私たち盗賊ギルドが嘘の情報を渡すことなどするわけがありません。これはあくまで想定外の事態が起こったとしか思えないのです」
「アードラー様が死に『月下の雫』も死んだ今となっては何もわからない。しかし、『真紅の爪』の依頼成功率は100%だ。必ず、ヘンドラーの娘は奪ってくるぜ」
「しかし、ヴェルデ様、どうやってヘンドラーの娘を奪うのでしょうか?今回の件で、ヘンドラーはかなり慎重に行動をすることでしょう。おそらく娘には護衛をつけて外出など極力減らすと思います」
「問題ない。今この町に向かっていた全ての『真紅の爪』のメンバーが集結して近くの森で待機している。なので、いつでもヘンドラーの屋敷に突入する準備はできているのだ。今晩にでもヘンドラーの屋敷に潜入して娘を奪ってやる。俺たち『真紅の爪』の恐ろしさを思い知らせてやる」
「わかりました。成功することを祈っております。それでは、クロイツ子爵にもそのように伝えておきます」
「絶対に依頼は成功すると伝えてこい」
ヴェルデ率いる総勢300名もの『真紅の爪』のメンバーが、カノープスの町の近くの森で待機していたのである。そして、今晩にはこのメンバーが町に侵入して、ヘンドラー屋敷に押し入りセリンセを連れ去ろうと計画されていた。
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