第2話 僕の分は無かったので別の物を貰いました。

その日もいつものように教室で寝ていた。


昨日の倉庫整理は大物が多くて疲れた。


そのせいで熟睡していたようだ。


だがこの日はいつもと違っていた。


「セレス、起きろ」


「黒木くんで最後だから早く女神様の所にいって」


「えっ女神様? 何が...」


「セレスが寝ているときに異世界の召喚で呼ばれたんだ、そして今は異世界に行く前に女神様が異世界で生きる為のジョブとスキルをくれるって。」


「冗談は...」


僕は周りを見渡した。 白くて何もない空間のようだ。


嘘ではない、僕をだますためにこんな大掛かりな事はしないだろう。


「それじゃ、先に行くぞ、お前もジョブとスキルを貰ったら来いよ」


そういうと彼らは走っていってしまった。


どうやら、ジョブとスキルを貰った者から先に転移していくみたいだ。


僕は、女神様らしい女性のいる列に並んだ。


次々にジョブとスキルを貰っていく中、いよいよ最後の僕の番がきた。


だが、ここで急に女神様がおかしな事を言いだした。


「あれっおかしいな、ちゃんと人数分ジョブとスキルは用意したはずなのに...なんで一人分足りないの?」


「あの、女神さま?」


「あっさっき寝ていた子だよね? ほかの子が「アイツ疲れているから寝かせておいてあげて」というから寝かせて置いたんだけど、事情は解らないよね?」


「はい」


「簡単に言うと、異世界で魔王が現れ困っている、そしてその国の王族が勇者召喚をして君たちを呼ぼうとした...ここまでは解る?」


「何となく小説とかで読んだ話に似ています」


「うん、同じような小説が最近はあるよね! まさにそれ! それで私は女神イシュタリカって言うんだけど、そのまま行ってもただ死ぬだけだから、向こうで戦ったり暮らせるようにジョブとスキルをあげていたんだけど...」


「そうなんですか?」


「困った事に一人分足りないのよ...そうか解ったわ...担任の分が計算に入ってなかったんだ...失敗した」


「あの、女神様?」


「あのさぁ...ごめん、君の分のジョブとスキルが無い...どうしよう?」


「僕に聞かれても困ります」


「そうよね..困ったわ...このままだと君だけ何もない状態で行かなきゃならなくなる」


「元の世界に戻すのは?難しいですか」


「この魔法はクラス全員に掛かっているから無理だわ...」


「そうですか...じゃぁ僕だけ何もない状態で行くしかないんですね」


《普通はこの状態だと泣き喚いたり、罵倒するんだけど何故、何も言わないの?》


「あの、ごめんなさい」


「良いですよ...僕が行かないと勇者が召喚できなくて国が困るんですよね? 僕が我慢すれば...それで助かるんでしょう?...行きますよ...ううっ」

《何で僕だけいつも...いつも..こんな思いしなくちゃいけないんだろう》



「あの、本当にごめんなさい..何かないかな..あっあった、これ私じゃなくて前の担当の神様が数百年以上前に作ったジョブなんだけど、これで我慢して..少なくとも神様が作った物だから良いものだと思うわ《多分》」


「そうですか?」


「あと、そうだ、これだと私から何もあげてないのと同じだから神託で教会に貴方の名前を伝えて力になってあげるようにお願いしてあげる...本当にごめんなさい!」


「解りました、逆に迷惑をお掛けしました」


「良いのよ..私のミスだから...ではセレス黒木、あなたのご武運を祈ります」


こうしてクラスの最後の僕は異世界へと転移した

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