第3章
第51話 王都での休日
俺たちはゴブリンの森でアグライアさんたちを救出した。いよいよゴブリン狩り本番といきたいところだが、その前に。
「そういえば明日、勇者パーティー凱旋ライブだっけ?」
「そうなの! だから今日は頑張ってゴブリンたくさん倒そうと思っていたんだけど」
「いいよ、いいよ。来週また頑張ろう。ライブは夕方からだっけ? 明日は午後に王都へ行けば良いのかな?」
「えっえっえっ、あ、あの、グッズを買いに朝から物販に並びたいんだけど、それでもいいかな?」
ルージュちゃんはかなりのアイドル勇者オタクのようだ。気合いが入っている。
「物販? 俺はそういうの詳しくないけどいいよ。朝からだね。パパレも一緒で良いのかな?」
「パパレもお姉ちゃんと一緒に行きたい。物販に並んでみたいっ」
「OK! じゃあ朝、パパレを連れてルージュちゃんの家に行くから準備していてね」
◇
翌日。勇者パーティー凱旋ライブのためにルージュちゃんとパパレを連れて〈次元の神秘〉を使って王都へ転移する。
ルージュちゃんを見ると過去の勇者パーティーライブで買ったと思われるグッズを身につけている。浮かれている。
それを見て俺は、この世界の最高神様たちが頑張って開催してくれた転生者応援キャンペーンでもらったレアスキルなのに、こんな使い方で良いのだろうかと少しだけ疑問に思った。しかし、これもパーティーメンバーのモチベーション維持のため。この行動も魔王討伐へ繋がるはずだと思い直した。
「じゃあ、ルージュちゃんにパパレ、存分に楽しんできてね」
「ありがとう、シンヤ君。行ってくるよ。パパレちゃん、行こっ」
「うん、お姉ちゃん。お兄ちゃん、行ってくるねっ」
◇
2人と別れた俺はせっかく王都へ来たので、勇者になる条件とレイナス様をパーティーメンバーにするための条件を再確認しておこうと思う。前回の記憶通りだとは思うが念のためだ。
まずは東の神殿に行き、神官のフランチェスコさんから上級職になるためのガイド本を貰う。勇者になる条件は変わっていない。
次に冒険者ギルドへ行き、レイナス様へ面会のアポイントを取ってもらう。
威圧感のあるお城に圧倒されながらも2度目なのでなんとか平静を保つ。
「ふぅ、お城は緊張するな」
城兵に案内されてレイナス様のいる部屋の前にきた。いよいよレイナス様と面会だ。
「初めまして。神界の仕事人のシンヤと言います」
「聞いておりますわ。シンヤさんね」
前回の挨拶は酷かったが今回は及第点と言っても良いだろう。
俺は落ち着いてレイナス様へパーティーメンバーになってもらうための条件を確認した。
やはり条件は前回と変わらず〈カリスマの腕輪〉を装備する事、聖騎士オリヴィアさんを同行させる事だった。
「‥‥‥今は〈カリスマの腕輪〉を装備できないので出直して来ます」
「楽しみに待っておりますわ。私も‥いえ‥頑張って下さい」
「はい。期待して待っていて下さい!」
そう力強く答えて俺は部屋を出た。前回はガックリして頭が真っ白になっていたが、リセマラで戻ってきた今回の俺は違う。
今の俺はレイナス様をパーティーメンバーにする道筋を持っている。ルージュちゃんとパパレの応援がある事も分かっている。それにレイナス様から「楽しみに待っている」という言葉も聞けた。これも嬉しく心強い。
俺はレイナス様をパーティーメンバーに加えるべく気合いを入れて取り組む事にした。まず最初の仕事は、もの凄く浮かれているであろうルージュちゃんとパパレの回収だ。
勇者パーティー凱旋ライブが終わるまでは、まだ随分と時間がある。決意を新たにしたところではあるが、今日は休日なのでレベル上げはせず王都をぶらぶらする。
すると『競兎場』という看板を発見した。
その看板によると王都の郊外に競技用の一角ウサギがレースをする公営ギャンブルがあるようだ。
時間もあるので立ち寄ってみる事にした。
俺は人気を知らずにパドック見て1匹を選んだのだが、どうやら1番人気らしい。俺は一角ウサギを見る目があるのかもしれない。
「いけーーーそのままーーー!」
レースが始まると俺が選んだ一角ウサギが最初からトップを独走して圧勝した。やはり俺は一角ウサギを見る目があるようだ。伊達に草むらで一角ウサギに襲われて続けていた訳ではない。
その後も俺は何度か的中し小銭を稼いで浮かれながら競兎場を後にした。
しばらくしてライブが終わり、ブリランテ様Tシャツを着たルージュちゃん、リアム様Tシャツを着たパパレと合流した。2人ともライブが楽しかった事を興奮気味に伝えてくる。
浮かれた俺、浮かれたルージュちゃん、浮かれたパパレ。皆それぞれ楽しい休日になった。
来週からまたゴブリン狩りだ。
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