第21話 パーティーメンバーは結婚する
神殿を出たルージュちゃんが、爽やかに晴れた空を見上げている。太陽が高い。もうお昼の時間だ。
俺たち3人は野菜市場の食堂で腹ごしらえをした後、次の行動へ移る事にする。
今度の目標は3人目のパーティーメンバーを加える事だ。3人目のパーティーメンバーは『ライナライナ』という名前の王都にいるのだが。
「ルージュちゃん、王都は『ヨイヨイ』から馬車で10時間ぐらいかかるんだよね?」
「そうなの。王都は遠いんだよ」
「そっか。そしたら今日は一度、『ヨイヨイ』に戻って、明日から泊まりがけで王都に行く事にしようか」
「私もそれがいいと思うな」
ルージュちゃんが相槌をうつ。パパレの方はどうだろうか。確認する。
「パパレもそれで大丈夫? 今から『ヨイヨイ』に行って、明日から王都に行くから数日間、家に戻れないけど」
「大丈夫だよー。でも一回、家に戻って荷物を持ってきたいですっ」
「OK。それじゃあ、パパレの家に寄って行こうか」
「パパレの家はこっちだよー。ついてきてー」
パパレは先陣をきって勢いよく歩き出す。パパレに先導され俺たちはパパレの家に向かった。その道中。
「パパレは何かスキル持ってるの?」
「あるよー。〈火球〉に〈倍速撃〉の2つ」
「えっ、凄いな。スキル2つもあるんだ」
「そうだよー。だからパパレ、強いって言ったじゃん。お父さんとお母さんがいなくなる前に、お母さんにはスキル本をもらって、お父さんには棍棒をもらったんだよ。自分の身は自分で守れって」
「パパレは元気だけど、色々と苦労してるんだな」
もしかしたらスキル本と棍棒が両親の形見という事になるのだろうか。
ルージュちゃんもそれを聞いて、すっかりしんみりしている。
「パパレちゃん、頑張ってるんだね。私の事をお姉ちゃんだと思っていいよ。何でも頼ってね」
ルージュちゃんはすっかりお姉ちゃんの気分になっている。
そんな事を話しているうちにパパレの家へ到着した。
パパレの家は大きくはないが、ログハウス風の小綺麗な一軒家だ。綺麗な芝生の庭に物置のような小屋もある。
「お兄ちゃんとお姉ちゃん、どうぞー」
パパレが家へ招いてくれる。
「「お邪魔しまーす」」
少し散らかってはいるが、木の香りがする雰囲気の良い家だ。両親の所有物と思われるものが至るところにあり、パパレの一人暮らしとはとても思えない。
「あれ? お父さんとお母さんがいないっていうのは?」
「お父さんとお母さんはパパレをおいて冒険に行っちゃたんだよー。スゴイ魔物を倒すんだって」
「えっ、パパレ、まだ小さいのにおいてかれたの?」
「パパレはもっと小さい時から、おいてかれているよー」
スキル本や棍棒は形見でも何でもなく、パパレの両親はかなりの放任主義のようだ。俺はパパレに生活力を感じるのも分かる気がした。
ルージュちゃんは、両親が健在だと分かりホッとしている。
「パパレちゃんのお父さんとお母さん、元気なんだね」
「うん、すごく元気だよっ!」
「そっか、良かった。パパレちゃんは、お父さんとお母さんに冒険に行くって言わなくても大丈夫なのかな?」
「大丈夫だよー。パパレも早くパーティーに入って冒険へ行って来なさいって言ってたし」
それで、あんなにパーティーに入りたいと強く押してきていたのか。
そんなほのぼのとしていたところに、パパレは俺を動揺させる発言をぶち込んできた。
「パパレのお父さんとお母さんはね、同じパーティーだったから結婚したんだよー。お兄ちゃんとお姉ちゃんも将来は結婚するんですかー?」
「な?! パ、パ、パ、パパレ。急に何を言い出すんだ?! ル、ル、ルージュちゃんとけ、け、結婚?! ルージュちゃんと俺が。あわわわわわわ」
「えっえっえっ、シンヤ君と私が結婚?! 私が結婚?! 結婚、私が?! えっえっえっ」
「お、お、お、俺たちも昨日、会ったばかりだし。あわわわわ」
「えっえっえっ、そ、そうだよ。昨日、会ったばかり‥‥‥」
「あっははー。お兄ちゃんとお姉ちゃんも昨日、会ったばっかりなんだー。じゃあパパレがお兄ちゃんのお嫁さんになるかもしれないねっ! だって、お兄ちゃん、ロリ‥‥‥フガっ」
俺は再びパパレの口を塞いだ。
「パパレ、ちょっと黙りなさい」
「あっははー。お兄ちゃん、また喋らせてくれないー」
「パパレ、無駄話はいいから、出掛ける準備をしなさい」
「わかりましたっ! 怖いお兄ちゃん」
これは良くない。すぐにパパレのペースになってしまう。vsルージュちゃんに続いて、vsパパレにも勝利しなくてはいけないと俺は思った。
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