第17話 ルージュちゃんの告白
「ルージュちゃん、聞こえた?」
「ガサガサしているのが、聞こえたよ」
ガサガサと音がする方の草木が揺れる。目の前の草木が大きく揺れたかと思うと、1つの影が俺に飛び掛かってきた!
びっくりして剣を振り回すが空振りに終わり、体当たりを食らってダメージを受けてしまう。
「痛いっ!!」
さらに反対方向から、もう1つの影が俺に体当たりをしてきた。
今度は、はっきりと姿を見ることが出来た。1本のツノが生えた目付きの悪いウサギだ。クエスト対象の一角ウサギに間違いない。
「これが一角ウサギ! こ、怖い」
とても怖いが、この場は俺が戦うしかない。気合いを入れつつ、ルージュちゃんへ声をかける。
「俺が戦ってみるからルージュちゃんはサポートをお願い!」
「わかったよ! シンヤ君」
俺は一角ウサギの注意を引きルージュちゃんを守りながら戦おうと思うのだが、俺がそんな事を考えなくても一角ウサギはどういうわけだか俺だけを狙ってくる。
なんなら一角ウサギはルージュちゃんに近づかない。むしろルージュちゃんを少し恐れているように見えてきた。
「ん? 俺だけ狙われている? レベル1だからウサギに舐められてるの?」
そう思ったら腹が立ってきた。
ノーマルスキル「電撃!」
右手に剣を持ち、左の手のひらから稲妻のような電撃を放つ。
そう言うと魔法剣士のようでカッコいいが、実際は剣を振れば空振りし、電撃自体は極めて小さなものだ。
俺はさらに、もう1発〈電撃〉を放った。
ノーマルスキル「電撃!」
〈電撃〉を2連発する。スピードのある一角ウサギではあるが、さすがに電撃2連発はかわせずに直撃する。
『ピギャ』
一角ウサギは鳴き声を発して倒れるが、まだ死んではいない。
トドメを刺そうと俺は剣を振るおうとするが、その隙にもう1匹が俺に体当たりしてくる。またダメージを受けた。
「痛え。それでもっ」
俺はその攻撃に何とか耐えて、倒れている一角ウサギに剣を突き立てトドメを刺すことに成功した。俺は初めて魔物を倒した。
これで残る1匹を倒すだけだと思ったのだが、草むらからさらに、もう1匹の一角ウサギが現れてしまった。
俺は2匹の一角ウサギから交互に体当たりを食らい、徐々に体力が減ってきた。
ノーマルスキル「電撃!」
『ピギャ』
俺はなんとか隙をついて、一角ウサギに電撃を当てる事に成功し、倒れた一角ウサギへトドメを刺した。
今度こそ一角ウサギはあと1匹になったのだが、いよいよHPとSPの残りが少なくなってきた。
俺はルージュちゃんへ回復を頼む。
「ルージュちゃん、回復スキルをかけて欲しい」
「わかったよ! シンヤ君! 私の出番だね、回復スキルだよね。あれ?! これは?! えっえっえっ」
しかしルージュちゃんは、なかなか回復スキルをかけてくれない。
その間も一角ウサギは攻撃を仕掛けてくるため、徐々にダメージが増えていく。
「ルージュちゃん、どうしたの? 回復をお願い!」
「シンヤ君、こんな時に言う事じゃないんだけど、ス、ス‥‥‥」
「なに? 俺、このままだと死んじゃうから」
「シンヤ君、ス、ス、スキ‥‥‥」
俺は耳を疑った。ルージュちゃんが俺を「好き」と言っている。とても嬉しいが、今、言う事ではない。
「俺も好きだけど、今は回復スキルをお願い! ルージュちゃんの好きな俺が死んじゃうよ!」
「シンヤ君、ス、ス、スキ、スキルの名前が読めないの! なんて読むのかな?」
なんだって?! 「好き」ではなく「スキルの名前が読めない」と言ったぞ?! なんて事だ! もしかして俺は恥ずかしい勘違いをして、とんでもない事を言ってしまったのか?! これは色々な意味で死にそうだ。
それにしてもスキルの読み方が分からないとか、本当にこんな時に言う事ではない! なんという名前だったか俺は一生懸命に思い出そうとした。そして思い出したというか、走馬灯のように記憶が蘇ってきた。
確か〈仁恕の回復〉だった気がする。
「じんじょのかいふくって言って! じ・ん・じょ・の・か・い・ふ・く!」
「わかったよ! じんじょのかいふくだね!」
レアスキル「仁恕の回復!」
ルージュちゃんが叫ぶ。すると俺はポワワワワワと暖かい空気に包まれ、HPとSPが回復した事を感じた。
残った1匹の一角ウサギに最後の攻撃をかける。
ノーマルスキル「電撃!」
ノーマルスキル「電撃!」
ノーマルスキル「電撃!」
俺は復活したSPでヤケクソのように〈電撃〉を連発、ついに最後の一角ウサギを倒した。
これで合計3匹の一角ウサギを倒した事になる。
「やったね、シンヤ君!」
「うん、やったよ。そんな事よりルージュちゃん。俺が戦闘中に言った事は聞こえたかな?」
「うん、ありがとう。じんじょのかいふく、だよね。ごめんね、読めなくて」
「いや、それはいいよ、大丈夫。それより、その前のところ‥‥‥」
「その前? 俺もスキ‥‥回復スキル‥‥‥? 私、慌ててて、ちょっとよく分からなかったよ。何て言ったの?」
「いや、分からないなら、それでいいんだ」
俺は心身共にダメージを負った。一角ウサギとの戦い、俺は頑張ったと思う。
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