第12話 3人でお話し

「それで、ルージュさんをパーティーメンバーにしてしまったんですが、大丈夫でしょうか?」


 俺は、ルージュさんのお母さんに尋ねてみた。


「もちろんよ。神界の仕事人さん」


「シンヤと呼んでもらって良いですよ」


「そう、それじゃあ、シンヤ君と呼ばせてもらうわね。でも本当にこの子で大丈夫なの?」


「はい。もちろんです。魔力値も高いそうで、女神クレアによると運命に導かれた人という事で期待しています」


「あらあら、うちの子が。女神クレア様に。それでルージュはどう思っているの?」


 ルージュさんがうつむき加減で自信なさげに答える。


「もちろん嬉しいけど。でも私‥‥‥」


 何か気になる事があるのだろうか。


「何か気になる事があったら、言って欲しい」


「私、ミスが多くて冒険者ギルドでも失敗ばかりして‥‥‥」


 それについては冒険者ギルドのニーナさんも言っていた。


「大丈夫だよ。誰だってミスはあるよ」


 俺の言葉を聞いて、お母さんが話を始める。


「それがね、この子ったら冒険者ギルドで、上級者クエストを初心者クエストの枠に貼っちゃって、初心者パーティーを壊滅させちゃったのよ。もちろん全員すぐに復帰させたし、冒険者ギルドのニーナさんがすぐに対処してくれて、大きな問題にはならなかったんだけど」


 えええっ、パーティーを壊滅させてしまったのか。

 パーティーを壊滅させてしまった時点で大きな問題な気もするが、まあ良い。

 とりあえず俺は次にクエストを受ける際には、自分でもしっかり内容を確認しなければいけないと思った。

 そして、それよりも今はパーティーメンバーの話を進めたい。


「そ、そうなんですか。そのぐらいのミスはありますよ。それでパーティーに‥‥‥」


 しかし、お母さんは構わずに話を続けてきた。


「それからね、この子ったら冒険者ギルドで横領の疑いをかけられたのよ。報酬を受け取る時の水晶に自分の手をかざしてしまって、レベルアップしちゃったのよ。その時もニーナさんが対応してくれて、大きな問題にはならなかったんだけど。『ルージュが横領なんかするわけがない』って皆、言ってくれたのよ。最終的には、冒険者さんも報酬はルージュにあげたかったという話にまとまったのよね」


 パーティーを壊滅させた後は横領の疑いか。色々とやっているようだ。

 それにしても冒険者ギルドでのニーナさんは本当に頑張っていたんだなとつくづく思った。


「他にも何かあったかしら? ねぇ、ルージュ?」


「うん、お母さん。あとね、この間は‥‥‥」


 ルージュさん本人まで自分の失敗談を続ける気か。もうダメだ。聞くに忍びなくなってきた。


「も、もうその話は大丈夫だから。ちょっと事務作業に向いてなかっただけだよ。これからは冒険者として頑張って欲しい」


 その言葉を聞いてルージュさんが少し驚いたように言った。


「えっえっえっ、今の話を聞いても私でいいんですか?!」


「もちろん!」


 ルージュさんは、少し間を置いて何かを考えている。

 そして覚悟を決めたように言った。


「私、頑張ります。神界の仕事人さんと冒険に行きます!」


「本当? ありがとう。あと、これからはパーティーメンバーなんだし、神界の仕事人じゃなくてシンヤでいいよ」


「そっか。そうだよね。じゃあ、シンヤ君。これからよろしくね」


「こちらこそ、よろしく。ルージュちゃん」


「良かったね、ルージュ。ずっと街の外を旅してみたいって言ってたものね。母さんもルージュには冒険して欲しいと思っていたのよ」


「うん、お母さん。行って来るね」


 ルージュちゃんがパーティーメンバーになってくれた。ルージュちゃんは冒険者ギルドの職員よりも冒険者の方が向いている、そんな気がする。ルージュちゃんとの出会いで、女神クレアが運命と言っていた事が俺は少しだけ分かる気がした。



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