私は強い子

『というわけで、妖怪は人が理不尽を理解するために名付けられた、人のための認識番号とでも言えるわけだ……とまぁ、堅苦しいお話はここまでにして、本日はスペシャルゲストに来てもらっている! カモン、ソラ』

『……これもう話していいのかしら。どうも。本を読むでもなく映画を見るでもなくYouTubeを摂取している皆さん、こんこんにちばんわ。ミーコの飼い主く……ソラです』

「ちょちょ、空!」

「ちょっと、本名呼ばないでくれる?」

「今はミュート中だ。それより今のあいさつ! 煽り散らかしてないか?」

「そう? 私は真実を伝えたまで。受け取り方はリスナー次第よ」

「とにかくあまり刺激しないでくれ……もう炎上はこりごりなんだよ……」

「仕方ないわね」

「お願いだからな……。『ごほん、ちょっと事故があったけどそれはそれ。今日はソラとミーコで、私たちのナイトルーティンを再現しまーす』

『そんなことよりいいかしら』

『や、あの』

『さっきのミーコの話。人はわからないものが怖いというわけだけど、その最たる例を今日発見したから紹介してあげる。歯医者よ』

『ソラさーん』

『歯医者って、治療のときタオルで顔を隠されるじゃない? そして謎の音を放つ謎の機械が侵入してくるのを呑気に口開けて待つわけだけど、もし自然界なら即死すると思う。あまりに無防備でしょう? せめて、今、口に入っている機械がなんなのか、施術前に見せてほしい。見たことある? 私はない。シャーペンの先がくの字に曲がっている何かをいつも想像しているわ』

『ミーコは歯医者に行ったことがないからなんとも』

『正体がわかれば、きっと怖くないのにね。あと痛いとこありますか、って言われても手を上げたことありません』

『医者も教えてもらったほうが、治療の役に立つんじゃないのか?』

『どこまでが異常な痛みなのか、素人では判断がつかない。そうそう、ミーコは家計を食い潰しながらYouTuberをやっています。収益は家計の足しになりますが、現状は赤字垂れ流し。そこで皆さんにお願いがあります。高評価を押してください。押してくれても何もあげられませんが、低評価一つにつきミーコの食事は1%ずつ貧相になります。この子を哀れと思うなら何卒』

『初耳だ!』

『頑張りなさいよ。それでは、ええと、コンコンまた今度、でよかったっけ?』

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