第7話 積極的なキスに動揺する
和馬との初めてのキスは、好奇心と寂しさによる衝動的なものだった。口と口を押し付ける行為に、気持ちが悪いと抵抗感はあったが、相手が和馬だったから出来た。和馬以外の好きでもない男子とするのは、やっぱり不快でしかない。ほんのちょっと唇が触れただけだったが、こんなものかと思った。
二回目のキスは一緒に初詣に行った帰りで、人込みの中ではぐれないように手をつないでくれた。そして、神社の裏の鎮守の森を歩いている途中で、
「キスしていい?」と和馬から迫ってきた。しかも口を吸ってきたので、吸い返すと唾液が絡んで少し気持ちが悪かった。それでも、徐々に気持ちが高ぶっていくのを感じた。
初めてのキス以来、シャイで受け身だった和馬は、人が変わったように男らしく積極的になった。和馬から手をつないできたリ、キスを求めてきたりするようになった。今まで夏奈の言い成りになっていた少年に、男としての本能が芽生え始め、二人の立場は逆転しつつあった。
ぼくと夏奈の関係は、親にも学校の誰にも知られていなかった。二人だけの秘密を共有している事が、小気味良かった。とは言っても会う度にキスする訳でもなく、お正月にキスしてから1か月後のバレンタインの日に、思い出したようにキスをしたのが三回目だった。夏奈にとってキスは興味本位であって、遊びの一つであるようだ。でも、ぼくは夏奈が異性として好きで、キスができるだけで満足だ。
春休みに入ってデートという訳でもないが、二人してショッピングセンターへ出掛けた時、よりによって修学旅行の時に夏奈に告白した椎名と出くわした。
「あれ、二宮?それと桜庭?二人は付き合ってるの?」と冷やかされ、逃げるようにその場を立ち去った。夏奈は機嫌が悪くなり、立ち寄った公園のベンチで怒っていた。
「嫌な奴に会っちゃた!わたしたちは付き合ってるの?和くんは、どういうつもりなの?」と怒りの矛先を和馬に向けていた。和馬は彼女がどうして怒っているのか理解できなかったが、
「付き合ってるって言えば良かったけど、言い触らしても仕方ないよ」と冷静に対処していた。
公園で和馬は、わたしと付き合っていると吐露した。わたしの気持ちが通じた事がうれしくて、
「当たってごめん!キスして!」と自分から口をとがらした。それに応じた和馬のキスは長く、初めて舌を絡めたディープキスだった。頭の中も体も性的な欲求に駆り立てられていたが、その先どうするかは二人とも幼な過ぎて知らなかった。亜季の話によると、抱き合って体を探り合うのが次の段階だ。
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