第44話 救出と提案
オークの処理を終えた僕たちは、これからどうするかを話し合う。
「今更なんだけど、全ての処理が終わってから救出に行くって不自然かな?」
『助けてあげるのに不自然を気にする必要がありますか?』
『だったら、捕まっているのを知らなかったことにするのはどうだ?』
「なるほど、たまたま殲滅して町の中を探してるときに見つけたってことにすればいいんだね! 凄くいい案だよ」
『さすがは
「次は助けたあとをどうするかだね」
『助けて終わりではないのですか?』
「さすがに森に放置ってのはどうかな? 最低でも森を抜けるまでは面倒みないと。それにここはエンシェントトレントの墓みたいな感じなんだから、住みつかれても困るでしょ?」
『確かに住みつかれるのは困りますね』
『ではこういうのはどうだ? 助けてから森の脱出まで我が眷属が隠れてついてくれば、他の魔物は寄り付かないから安全に森から出られる。問題はその後だ』
「まだ何か問題ある?」
『エディはその辺りの感覚が鈍いな、あの身なりは貴族というやつだろう、助けられてそれで終わりと行くのか? そもそも森を抜けてもボロボロの女共だけで帰られるのか?』
「騎士みたいな女性もいたけど、そこまで面倒を見なければいけないかな?」
『エディよ。助けると決めたからには最後まで面倒見るのだ。中途半端に助けるぐらいなら最初から助けるでない』
「ヴァイスの言う通りだね。どうなるか分からないけど、必要なら町まで連れて行くことにするよ」
『それでよい。お礼に美味しいものを食べさせてもらえると良いな』
僕の感動を返して下さい……。
女性たちが閉じ込められた小屋に行き、鍵のようなものを外して扉を開ける。
「ウッ」
アンモニア臭が漂ってきて思わず手で鼻を覆う。中には5人の女性が縛られたままぐったりしていて、目もどこか虚ろだ。
「えっと、ここにいる人は生きていますか?」
こんな質問をしたのには理由があって、1つはこの町へ彼女たち以前に連れ込まれたと思われる女性の遺体があったのだ、もう1つは彼女たちがここにいると知らないで扉を開けたという設定を守るためだ。
僕の声に反応があったものの、皆んな怯えて奥に這いつくばって逃げようとする。ちょっと傷ついたな。彼女たちの股間は濡れていて、彼女たちのズレた後には水溜りができている。ずっと縛られたまま閉じ込められていれば、しょうがないな。
「生きているなら良かったです。外のオークは倒したので、取りあえず安心してもらえますか?」
「本当なのですか?」
僕と同じぐらいの女の子が答える。
「僕がこの扉を開けたのが理由にはなりませんか? まだ生き残りがいるかもしれませんが、取りあえずこの辺にはいませんよ。近づいてもよければ、その拘束を解きますけどどうします?」
彼女は一瞬躊躇するが、諦めたのか喋りだす。
「お気遣いありがとうございます。情けない事に長く閉じ込められていたため粗相してしまいまして、申し訳なく思いますが解いていただけますか?」
「お気になさらず、酷い状態で亡くなってた方もいましたので」
そう言って拘束してある縄やロープを切る。
「ある程度オークを倒したとはいえ、この町跡も安全とは言えないので、取り急ぎ向こうの家で今後のことを話しませんか?」
「分かりました。皆いきますよ。オリビア、怪我をしているモニカを支えてあげなさい」
近くにあった大きめの家に入り、ダイニングルームの椅子に座ってもらう。
この家にあったコップを洗い、魔道具で水を入れて渡す。
余程喉が渇いていたのか、凄い勢いで飲み干したので、おかわりを注ぐと少し落ち着いたようなので話を始める。
「まず最初に1つ提案なんですが、これから話を進めていく中で、お互いに名乗らないというのはどうでしょうか?」
「それはどうしてでしょうか?」
「そうですね、たまたま襲ってきたオークを撃退してあなた方を見つけたわけですけど、身なりからして何処かの貴族というのは容易に推察できます。どうしてここに捕まっていたのかは分かりませんが、オークに捕らえられていたという状況は誰にも知られたくないのではと思いまして……僕も折角助けたのに、口封じに命を狙われたのでは割に合いません」
「そんな恩知らずなこと!」
女の子がちょっと怒る。
「まあ、話は最後まで聞いてください。僕もちょっと先を急いでるのですが、あなた方を見つけてしまったからには、できるだけ手助けしたいとは考えています。そこであなた方に選択肢を用意しますので選んで欲しいのです」
・自分たちで帰れるので僕の助けなんかいらない。
・森を抜けるところまで僕が手伝えば帰れる。
・近くの町まで連れて行って欲しい。
「以上、3つが僕からの提案です。もちろん3つ以外でもいいですが、2つ目の森を抜けるところまでが、お互いにちょうどよい提案かなと思ってます」
「どうしてですか?」
「最初の名乗らないってのに繋がるんですが、森を抜けるまでなので、あなた方が自力でオークを倒して森を出たってことにすれば、あなた方の名に傷が付かないし僕も早く旅立てますので。ちなみに3つ目の町までと言っても僕はこの辺りの土地勘はないので、どこに町があるのかは知りません。森を抜ける方向は頭の上の従魔のおかげで分かるって程度なので注意してくださいね」
彼女たちは不満ありそうな顔をしている。
「まあ色々聞きたいこと言いたいことはあるでしょうが、まずは一晩あなた方で相談してください。この家は内鍵がついているようなので、あなた方が使っていいですよ。干し肉とポーション、あと桶に水を張っておくので体を拭いたり服を洗ったりするのに使ってください。これ体を拭くのに使ってください」
能力で出しておいた麻布を何枚か置いて出て行く。
◆
「それじゃあ、ヴァイス。町を探検してみよう!」
『おお! なんだか楽しそうだな!』
「エンシェントウルフが1日で森に飲み込まれたっていってたでしょ? さっきの家もそうなんだけど、食器とかもそのままだったから、逃げる暇もなかったと思うんだ。だからお宝とかあると思うんだよね」
『何か美味そうなものが出てくるといいな!』
まず向かったのはオークキングがいた建物。おそらく偉い人の持ち物だったと思うのだが、今は瓦礫となっている。
瓦礫を調べる前に、隣の元エンシェントトレントの樹にお礼をする。
『樹に向かって何をするのだ』
「エンシェントトレントにお礼を言っておこうと思って」
『ただの樹にお礼とは変わっているな』
エンシェントトレントの樹に向かって、手のひらを合わせてお礼する。
エンシェントトレントさんのおかげでオークキングを討伐できました、ありがとうございます。エンシェントトレントさんにとっては不本意かもしれませんが、連れ込まれた人たちは帰そうと思います。オークもいなくなってもう少しで元の静かな状態に戻ると思いますので、あと少しだけ辛抱してください。
お礼が終わって目を開けると、エンシェントトレントだった樹が一瞬輝く。
「えっ⁉︎」
『ほう』
輝きが終わると、上から1本の枝がゆっくりと落ちてきて、目の前で止まるので持ってみる。
『エンシェントトレントから、少年への贈り物だそうです』
どこから現れたのか、エンシェントウルフが来ていた。
「贈り物ですか?」
『力を使い果たし、ただの樹になってしまったエンシェントトレントの本当の最後の力ですね。少年に託すそうです』
「僕にですか?」
『エディの近くにいると飽きがこないな! エディの能力に役に立つのではないか?』
なるほどと思い、取り込んでステータスを確認してみる。
【名前】エドワード・ヴァルハーレン
【種族】人間【性別】男【年齢】7歳
【LV】1
【HP】400
【MP】230/1035
【ATK】390
【DEF】390
【INT】770
【AGL】400
【能力】糸(Lv4)▼、魔(雷、氷)
【加護】モイライの加護▼、ミネルヴァの加護、フェンリルの加護
【従魔】ヴァイス
レベルが上がってる! オークキングとジェネラルを倒したからか。【MP】がついに人族の限界値777を超えてしまったどうしよう……。
考えるのは後にして糸の詳細を見る。
【能力】糸(Lv4)
【登録】麻、綿、毛、絹
【金属】鉄、アルミ、鋼、ステンレス、銅、銀、金、白金、ミスリル
【特殊】元素、ジャイアントスパイダー▼、
【媒染剤】鉄、銅、アルミ、ミョウバン
【魔物素材】ホーンラビットの角(18)、ダウン(3)
【形状】糸、縄、ロープ、網、布▼
【作成可能色】24色▼
【解析中】無
【特殊】に蔓が追加されている。植物だから【登録】なような気もするが【特殊】の特別枠扱いとはさすがはエンシェントトレントだな。
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