百三十四話:黒のガチャ試練

 気が付いたら寝ていて限定ガチャの時間を逃した!

 

「はぁあっ!?」


 そんな夢をみて飛び起きた。

 時刻がわからない。

 辺りは暗く夜のようである。

 場所は神社の中だ。

 赤い布団を掛けられて寝ていたみたい。


「まさかほんとうに?」


 木実ちゃんに覆いかぶさったとこまでは覚えている。

 いや、あれが夢だった可能性もある……?

 んん。

 ファーストキスの感触は忘れない。

 極上の甘美である。

 あれは現実だ。


「……よかった」


 木実ちゃんの行方もきになるが……。


 俺は黒のガチャを起動する。

 まだ時間内のようでSR以上排出率UPのPOPも健在だ。

 魂魄ポイントも十分にある。


「250連、いってみようか」


 UR排出率50倍。

 このチャンスを逃すわけにはいかない。

 神々よ、祝福せよ!

 いつ終わってしまうかわからないから、サクサクいくぜ。


「SRキタ!」


 サクサク行きたいけど、イケメンシャム猫さんの演出が飛ばせない。

 スキップ機能プリーズ。

 まぁいきなり熱いSRなので飛ばせても飛ばさないけど。


「鎖……手錠?」


 普通の手錠よりも大きく、輪っかの間がチェーンで繋がれている。

 ブラックメタルな手錠だ。

 対魔物戦には使いづらそうだが……。

 どういった効果があるのか、要検証かな。


「ノーマル」


 黒のガチャはさすが100魂魄の高級ガチャというべきか、ノーマルでも出るアイテムがバカにならない。 まぁ高級ランジェリーが多いのだけど。

 ガコンと黒いカプセルが排出される。

 イケメンシャム猫さんがさっと割ってくれる。


「おお?」


 人形だ。

 どこかイケメンシャム猫さんに似た猫剣士の人形。

 イケメンシャム猫さんがサムズアップしている。

 なんだこのシークレットレア感。



 絶望と希望を繰り返すこと幾星霜。

 

「ふぅぅ……――――セイッ!!」


 あらゆるレアリティのカプセルを引いてきた。

 おそらくその数は500回。

 そしてついに、その時は訪れた。


「ッ!?」


 ガチャの周囲が歪む。

 黒と白の世界は交互に現れる。

 かつてないほどの神秘的な演出。


「きたか!?」


 オォォ……

 

 聞こえる。

 深淵の狭間から奴の声が。


 オォォ……オォォ……


「なんだとっ――――」


 焦る俺をあざ笑うかのように。

 黒のガチャから漆黒の閃光が放たれた。



◇◆◇



 どこだ? 


オォゥ……オオゥ……


 周囲から呻き声が聞こえ、高い燭台の上で蝋燭の火が揺らいでいる。

 先ほどまでガチャをしていた場所じゃない。


「……」


 目の前には玉座。

 ボロボロの灰色のマントを着たナニカが座っている。

 フードを被っており顔は見えない。

 

(まさか……)


オォォ……オォォ……


 広間に呻き声が木霊する。


「ッ!?」


 ボロボロの灰色マントのナニカは立ち上がる。

 その手には禍々しい大鎌。

 漆黒の刃と柄の間。

 いったいどれほどの血をすすればそこまで赤くなるのだろうか?、と思うほど赤い宝石がついている。

 

「まてまて!?」


 中腰に必殺の構えを見せる死神。

 何度もガチャで見たその技を知っている。


 『クリムゾンストライク』 


 魂を狩りとる死神の一撃が迫っている。


「っぐあぁああ!?」


 漆黒の斬撃。

 体を真っ二つに切り裂かれた。

 上半身と下半身が真っ二つにされている。


 ――――死んだぁ!?


・・・・・

・・・



『黒のガチャ試練 Take2』

 

 どこだ?

 

オォゥ……オオゥ……


「……いやまて」


 真っ二つにされた体が戻っている。

 それに目の前の玉座にまたナニカが座っている。


オォォ……オォォ……


 立ち上がったナニカは大鎌を中腰に構えた。


「クソッ!」


 訳がわからないが、戦うしかない!


 ヴォルフライザーを装備し斬りかかる。

 しかし、死神を守る障壁に阻まれた。

 阻んだ障壁がおぞましく嗤っている。


「――ぐあっ!?」


 真っ二つ。

 俺は2度目の死を迎えた。


・・・・・

・・・


『黒のガチャ試練 Take3』


 ……嘘だろ。


オォゥ……オオゥ……


「おおぅ……」


 どうやら俺はガチャに、囚われてしまったようだ……。


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