八十一話:


 昨夜は熱い戦いだった。

 倒すべき敵はハッキリとした。

 そう、死神だ。


「ふぅ……」


 ガチャのラスボス、死神。

 いつか必ず倒して見せる。

 俺は諦めない。

 何度だって挑んで見せる!


「シン……カッコイイ」


 俺が死神への再戦を決意していると、葵が指輪を指さして目をキラキラさせている。

 解るか、この厨ニ病感カッコヨサが。

 さすがは魔法少女葵だ。

 ファッションアイテムとしても優秀なようだが、いつもより五感が冴えている気がする。


 『ヴォルフガング』


 SRランクの指輪だ。

 ランクで言えばヴォルフライザーやバトラータキシードと一緒。

 つまりかなり優秀な性能をもっているはずなのである。

 そう使い方はわからない。手探りで探していくしかない。

 いつものことだ。

 

「んん……木実? んんん?」


「ど、どうしたのミサちゃん?」


 木実ちゃんの周りを訝し気な表情で回るミサ。

 お主は犬か?

 木実ちゃんはいつも通り天使だ。

 心なしかいつもより魅力が20%くらい上昇している気がする。

 ちなみに黒カプセルから出た下着セットは木実ちゃんにプレゼントした。

 白にアクセントの花の刺繡が木実ちゃんに似合うと思ったからだ。


「噓でしょ……そんな、ありえない……これが成長期だというの?」


 ほんとどうしたんだこいつ?

 ぶつぶつとうるさいミサは放っておいて、今日も犬狩りをする。

 猫の万屋『猫の手』にも寄っていこう。

 

 昨夜狩りまくったせいか魔物の気配は少ない。

 玉木さんの魔法と葵のスペルカードで弱らせたところを、木実ちゃんとミサで叩く。

 今日の木実ちゃんの動きは素晴らしい。

 危なげなく野犬をメイスで撲殺していく。


「木実、すごい」


「やるわねー!」


 スキルのレベルでも上がったのだろうか?

 まるでテニスラケットの如くメイスを振るう木実ちゃん。

  

「ふふふ♪」


 すごく生き生きしている。

 変な趣味に目覚めてないよね……?


「くる」


 東雲東高校から離れ、野犬のテリトリーを進んでいく。

 以前にブラックホーンリアで上空偵察したとき、火炎弾が飛んできた方角だ。

 犬耳の聴覚強化が鋭くなった。

 指輪の効果だろうか?


 周囲から野犬が集まる音が聞こえてくる。


 玉木さんの周りを風の精霊が躍る。

 緑光の玉がふよふよと浮かんでいる。

 フェアリードレスの裾がフワリ揺れる。

 ワンドを構え集中していくのがわかる。


『風の精霊、烈風の弾丸、疾駆する風波――エアリアルウェーブ!!』


 風の刃と共に疾駆する。

 最初にめんどうな赤茶色の野犬を排除する。

 こいつは他の野犬をけしかけさせて隙をついて襲ってくる。

 

「がるっ!?」


 周囲の野犬ごとまとめてヴォルフライザーで横なぎに薙ぎ払った。

 

「ん?」


 ヴォルフライザーの刃が高速で回転し、漆黒のオーラを放つ。

 こんなことは今までなかった。

 なんなんだこのエフェクト?

 さらに溢れ出るオーラが指輪の宝石へと吸い込まれていく。


「……」


 ゆらゆらと宝石の中で黒い炎が揺らぐのが見えた。 




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