七十九話:リミテッドガチャ


 なんだかんだ疲れていたんだと思う。

 リミテッドガチャの内容を確認していたらテンションぶち上りすぎて叫んでた。

 

「お酒はダメよ」


 ちなみになぜかドアの近くにいた玉木さんに琥珀色の美味しいやつは没収された。

 どうも酔っぱらっていると思われたらしい。


「ゆっくり休んでね? 添い寝、してあげよっか?」


 なんでそこでフェアリードレスに手をかけるんですか?

 裸で添い寝エルフたん!?


「冗談、だよ? おやすみなさい、シンク君」


 俺の反応に満足したのか、ニマニマして去っていった玉木さん。

 これが年上のお姉さんにもてあそばれるという感覚なのか?

 最高かよ。



「しかし、参ったな……」


 唐突に増えた選択肢に、俺は迷ってしまった。

 うれしい誤算ってやつか。

 五つもあるリミテッドガチャをじっくりと吟味する。

 

「期間限定ガチャかな?」


 おそらくリミテッドガチャを最初に起動したときからカウントダウンが始まっている。

 10日間限定のようだ。

 実装記念ガチャのようなモノだろう。

 これはまず間違いなく当たりガチャだ。……ゲームならだけど。


「黒のガチャ、ね」


 黒の魔皇帝さん協賛とかじゃないですよね?

 いや、ありえそうで怖いよ。

 ガチャのレバーを引いてくれる猫さんが、黒いロングコートを着たイケメンシャム猫だ。

 ドヤ顔がムカつく。


「3回引ける」


 1回100魂魄とか。震える。

 1万円ガチャなみの高額ガチャ感。

 ワクワクしてきたぜ。


「ハァァァァァァ……せい!」


 気合を込めいざ!

 黒いロングコートを着たイケメンシャム猫さんは指を鳴らし華麗にガチャのレバーを引く。

 黒いガチャの筐体ガタガタと揺れ、力を溜め込むような黒い光のエフェクトが舞った。

 やはり高級ガチャ。 演出もノーマルとは一味違う。


「イケッ!」


 ガコン!、と音を立てて黒いカプセルが排出された。

 これは、なんだ? 当たりか? 当たりなのかっ!?

 羽演出キタッ!

 どこからか黒い羽根が舞い散る。


「おっ!」


 さらにイケメンシャム猫さんが剣を構えた。

 見据えるのは黒いカプセル。

 繰り出される高速の剣技。

 黒いカプセルに銀閃が奔る!

 割れたカプセルから黒い光の粒子が俺の体にまとわる。


「おおおお?」


 その粒子は右手の中指に収束していく。

 指輪だ。

 中心やや上に小さい黒い宝石。その周りに剣のレリーフが施されている。サイドには狼のようなレリーフが施されている。色合いも派手すぎない感じが良い。サイズももちろんフィットしている。

 はっきりいってカッコイイ。

 俺の厨ニ病が最高に刺激されている。

 イケメンシャム猫さんのドヤ顔も今なら許せるぞ。

 

「ふむ」


 詳しい効果はわからないが、力が漲る。

 能力アップ系か? いや今の高レアリティー演出、さらに一回100魂魄のリミテッドガチャ!

 つまりただの能力アップ系の指輪のわけがないだろう。

 まさかのファッションアイテムではなかろうな?


「ふぅ……」


 高まった気持ちを落ち着ける。

 びーくーる。

 あとで猫の万屋で聞けばいい。

 落ち着け。

 まだ後二回引ける。


「ふふふ」


 そう、まだ後二回も引けるのだ。

 この波がきている今、引くしかない!


「イケェ!」


 イケメンシャム猫さんがガチャのレバーに手をかける。

 お? なんだ演出か!?


「ちょ、おま……」


 著作権が心配になる決めポーズはやめろ!

 ガコン、と黒いカプセルが排出された。

 特に羽の舞い散るエフェクトはなし。

 イケメンシャム猫さんが剣を真横に振るとカプセルは割れた。


「……」


 黒い光の粒子のエフェクトもなく、急に俺の目の前にモノが現れた。

 それはノーマルでも一緒だった、ハズレだ。

 俺は握りしめたソレを信じられなかった。


 そうだってこのガチャ100魂魄よ? 一回。

 ノーマルガチャなら10回引けるんだよ。

 それなのに、ねぇ?


「く……」


 ダメだ、どこをどう見ても、ブラジャーです、はい。

 心なしかノーマルより高級そうだ。 

 ああ、下とセットで出てた。

 

 どうでもいいわっ!



  

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