第17話【お風呂でお世話】

 その店主が妙なことを切り出してきた。

「旦那様、旦那様にお買い上げ頂いた女奴隷は旦那様がどうしようと勝手次第だ」

「はぁ」

「しかし〝〟にも気分というものがある」

「気分ですか?」

「長きにわたり魔物を狩って頂いた結果、旦那様からは〝独特の臭い〟がいたします」

「……やっぱり、臭いですか?」

「めっそうもない。冒険者の臭いですよ。しかしお買い上げ頂いた女奴隷達に対面する際は、臭いを消してからの方が後々よろしいでしょう」

「そ、そうですね、」

「では差し出がましいようですが、旦那様の奴隷にお声がけさせて頂きます」店主はそう断りを入れるとラムネさんの顔を見た。

「ラムネ、旦那様のお体を綺麗にして差し上げろ。それが済んだらお前の身体もだ」そう命令した。ラムネさんは「はい…」と固い返事をした。

「お食事もだいたいお済みのようですね、」今度は店主が自分に向かい、確認するように言った。

 ぱんぱん、とここで店主は手を叩き「浴場にご案内して差し上げろ」と命令した。かくして〝食事の後は風呂〟となった。



 そうして、いま僕は〝浴場〟に踏み込んだ。浴場だから服を脱いで真っ裸状態。浴場は広い。広いのはさておき、これまた広い湯船にしっかりお湯がはってある。湯気もたっぷり立ち上っている。

 『欧米人はシャワーで済ます』というイメージがどこまで正しいのかは分からないが、この中世ヨーロッパ風の世界に『湯船にお湯が』というのはおかしな感じはする。そこは『ここはナーロッパならぬ〝ナアロゥプ〟』ということなのだろうか。


 それより緊張するのは、あの店主の言った『旦那様のお体を綺麗にして差し上げろ』だ。これって〝裸で〟ってことだよな。まさかラムネさんだけ服着てて、こっちが丸裸なんてことは——なにぶんにも〝主人〟と〝奴隷〟の脱衣所は同じ所ではない。

「失礼します」

 ラムネさんの声だ。絶妙のタイムラグで浴場へと入ってきた。でもってそっちを見ると——

 全体的に肌の色そのままのラムネさんっっっ!

 あれって、いや、ことばにして思うのもどうか。それは間違いなく〝おっぱい〟以外のなにものでもなく、ラムネさんはその先端は隠していた。そのいかにもな姿がたまらなさすぎる! ただでさえ〝〟だったのに完全に下半身の棒がいよいよ

 これを見られたら何と思われるっ⁉ 股間を両手が隠していた。

「べつに隠してくれなくても大丈夫です。もう見たことありますし」とラムネさん。


 ラムネさん、ズレたこと言ってる割には……


「そうは言うけどそっちも隠してるよね?」そう訊いた。胸の先端もそうだが戦端以上に大事なところ、股間を覆い隠すようにラムネさんの手の平が。

「あっ、そうですよね。なんでわたし恥ずかしがっているのか」

 あっさりと〝恥ずかしい〟を認めたラムネさん。ある意味潔い。

「はい、丸見えです」

 そう言ってあっさりと〝恥ずかしい部分〟からぱっと手を離してしまうラムネさん。胸からも股間からも。これで完全に丸見えてる。こうなると男の自分がいつまでも股間を隠しているのが逆に恥ずかしい。


「じゃあこっちも丸見えで」と言って股間から両手を離す。

「やっぱり〝棒〟になってるんですね」とラムネさん。

 見られて凄く恥ずかしい。さすがに勝手に触ろうとかはしない。この下半身の〝棒〟はそれこそ天を指しているのかといった状態で、縦方向にひくひくんと自然と動いてしまう。

 しかしラムネさんは極自然にラムネさん。〝この状態〟に言ったことばが、

「我慢してもらって申し訳ありません」だった。

 確かに我慢してる。〝男〟としてもの凄く。

「いま我慢できないと誰の赤ちゃんか分からなくなる、んだったよね?」

「はいっ!」

 中に出してしまうのは論外としても、ここで摩擦をかけて一気に放出してしまいたい気分だけど、それって〝女の子の前でオナニー〟ってことだから、それは絶対やりたくない。

「お体の臭いをどうにかしないといけないんですよね? 早くお湯の中につかりましょう」ラムネさんはそう言うと湯船の方へと先導した。背中を向けられ胸と股間は死角になったが今度は丸いお尻が丸見えに。

 ダメだ。〝お尻〟でもこの破壊力。


 湯船に入るとようやく隠したい部分が自然に隠れる。だがラムネさんときたら——

湯船に入らず傍で控えている。

 見えないように隠すことを〝失礼〟とでも考えているのか胸も局所も隠す様子が無い。しかもこっちが湯船につかっている傍でしゃがんで控えているので必然目線の高さにラムネさんの局所が。うっすらを毛が生えていてそれでいて毛が局所全体を隠さないという〝嬉しい長さ〟で——


 完全にダメだ。湯の中で爆発してしまう! 『我慢して』と言う割に目の前にごちそうが。そんなおいしそうなモノ目の前で並べないで欲しい!

「ラムネさん。いっしょにつかってよ」

「わたしは奴隷です。いいんですか?」

「いいも何も、そこにいられると我慢するのがつらい」

「しっ、失礼しました」そう言ってラムネさんは立ち上がり湯船の中へ。その〝動き〟でいま瞬間的にラムネさんの局所と最大接近。なまめかしく動くトコ見てしまった。


「ありがとうございます」肩までお湯につかったラムネさんが声をかけてくれた。ようやく見えているのは肩だけという状態に。これでようやく少しだけ落ち着くことができた。〝少し〟だけ。

「あっ、でもそんなに近づかないでいいからね。我慢のためには」とおよそ男とも思えないことばが出てしまう。

「すっ、すみません。でもロクヘータさんだけがお召し物を召されていない状態でわたしだけが着たままというのもロクヘータさんの裸を一方的に鑑賞しているようで、いただけないですし……」

「〝鑑賞〟するようなモンでもないでしょ。僕の裸なんて」

「いえ。何というか、正直な気持ち、裸を見て嬉しい、わたしも見られて嬉しい気持ちがあります」

「えっ? そうなの?」

 とは言えあまりことばでも刺激をして欲しくない。次の瞬間ラムネさんを襲わない自信が無い。

「はい。こんな気分は初めてです。あと何ヶ月かしたらロクヘータさんと裸で合体したい。そんな気分がしています」

 ぐはっ!

「とにかく身体を洗おうよ」そう言って話しを逸らした。これ以上こういう話しを話しているとことばだけで暴発し、しかもその暴発ぶりをラムネさんに見られてしまう。絶対女の子の目の前でオナニー的爆発だけはしたくない。

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