9日目 女神の行方

 虫が掘ったであろう砂の痕跡を置い続けていたが、途中でその跡が途切れてしまった。

 3時間近く追いかけて来たが遂に、目で見える範囲にはそれらしき目印が無くなってしまった。


 しかし、俺は途方に暮れなかった。

 追いかけている最中に、俺の胸の内側から、ジェシカの生存を確信させる感情が湧き上がっている。


 間違いなく生きている。そして、近くにいる。

 理由はないが、確信を持っていた。胸の感覚に誘われるように、歩き続けた。


 痕跡を見失い、自分の感覚に従って歩いて約10分。胸の高鳴りがピークに達して立ち止まる。

 ジェシカがここにいることは間違いないと思うが、周囲には只々砂漠が広がるのみだ。


 既に食われてしまったか?

 しかし、あのジェシカがそう易易と死ぬわけがないと否定する。


 それに、ジェシカの特徴的なマントの残骸もなく、巨大な虫の食事の痕跡も無い。


 一体どこに居る……?


 ふと昨日の虫の逃走の様子を思い出した。

 アイツは砂に潜ることが出来る。

 そして、逃げるときも砂の中を通っていたが、比較的浅い位置を掘り進んでいた。

 今までの痕跡は、砂漠上に盛り上がった畝が出来ており、それを見ながら追いかけてきたのだ。

 

 先程痕跡を見失った時、より深く潜ったのではないか?

 地上には見えなくなるほどの深さまで潜行し、巣に帰っていったのではないだろう。


 最早ジェシカは足元にいる事は確信に変わり、素手で砂を一心不乱に掘り始めた。

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