音ゲー
画面には、リンゴ・ミカン・スイカの3種類のフルーツが流れている。
右から左にコンベアに乗って流される様は、まるで、出荷前の果物工場だ。
だが、ここは工場ではない。
≪リズム・フルーツ≫という音ゲーだ。
コンベアの左にある水色の丸い枠にフルーツが入ったときに、リズムよく叩くだけの簡単なゲーム。
ゲームオリジナルのチープな音楽が流れる中、オレは固定文言を言う。
『どの籠のフルーツで遊ぶか選べるよ!』
木製の台の上には三つの籠がある。
一つはリンゴとミカンの籠。
一つはリンゴとスイカの籠。
一つはリンゴとミカンとスイカの籠。
『リンゴとミカンとスイカの入った籠を選ぼう!』
オレはチュートリアルとして、全種類のフルーツの入った籠を選ばせる。他の籠は選ばせない。
選ばれた籠の中のフルーツがコンベアを流れていく。先頭はリンゴ。リンゴが水色の枠に重なったとき、コンベアが止まる。
『フルーツが重なったら、枠をタップしよう!』
シャーン! というタップ音が鳴り響く。
『クール! リンゴを叩くと100ポイント!』
水色の枠のそばに100という数字が表示される。
コンベアが再度動き出す。次は、ミカンが水色の枠に重なりコンベアが止まる。
シャーン!
『グレート! ミカンを叩くと10ポイント!』
『え? なら、ミカンの入っていない籠を選びたかったって?』
『実は……。リンゴを叩くのを失敗するとマイナス100ポイントなんだ』
『ミカンは叩くのを失敗してもマイナスにはならないから安心してね!』
『だから、曲が難しかったら、ミカンの多い籠を選ぶといいかも!』
コンベアが再度動き出す。次はスイカが水色の枠に重なりコンベアが止まる。
シャーン!
『パーフェクト! スイカのポイントは……おや? さっきと変わってないね』
水色の枠のそばの110という数字が強調される。
『実は……。スイカは籠に入っているスイカを全て叩けたときにだけポイントが入るんだ!』
『その点数はなんと……。スイカの数×200ポイント!!』
『全部叩ける自信があれば、スイカの多い籠を選ぶといいかも!』
コンベアが再度動き出す。
シャーン! シャーン! シャーン!
ゲームオリジナルのチープな音楽に合わせ、フルーツが叩かれていく。
ポイントには関係しないが、叩くタイミングが完璧に合うとフルーツが粉々に弾ける。果肉が飛び散るのを見ている間だけが、オレの心を癒す時間だ。今回のプレイヤーはヘタクソで、フルーツが弾けることはなかったが。
しばらくして、音楽が終わる。コンベアのフルーツが全てなくなった。
『完璧!』
はぁ……。
ため息が漏れる。
固定文言を言うだけの簡単なお仕事。
つまらないいつもの仕事が終わった。
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