第38話魔術の復習



 俺は飛竜車の中でシャルロット先生の授業を受けていた。


「授業の復習です。魔力は貴賤を問わず人々に宿っている力です。しかしそのなかでも実践で使える程の魔力量を持つ者はごく一部と言うのは知っているわね……

 魔力量が高い者は体表のどこかに、痣のようなモノが現れます。コレを【聖紋クレスト】と呼称し、その大きさと複雑さから大まかに【大聖紋】、【中聖紋】、【小聖紋】と評価し呼び分けています。また魔術師は幾つかの位階に分けられており、下から順番に平人級ウォーン術士級ウィザード貴人級ノブレマ聖人級ハイリ王級ロード皇帝級インペラトーレ神人級テオスの七階級に分かれています。」


 因みに俺は【大聖紋】である。


 教科書テキストを見ると第七階梯。【神人級テオス】に達したと公式に認められているのは、長い人類史の中でもたったの数人のみと書かれている。


「【平人級ウォーン】は、初級魔術が使える程度であり【小聖紋】が該当し多くの冒険者や兵士が該当します。術士級ウィザード」はそれより強力な魔術が使えますがはありません。【小聖紋】が実力で到達できる限界は【貴人級ノブレマ】までだとされています。

現在魔術大学で特別講師をしている一代貴族キャリア・マーキスグレン・フォン・ベルベッド氏は【小聖紋】でありながら魔術を連鎖、共鳴、融合させること上位の魔術を行使したことから異例で、魔術大学の特別講師に任ぜられた事で一代貴族キャリア・マーキスに取り立てられた方です」


 そう言って彼の著書を一冊取り出した。

 どうやらファンのようだ。


「階級とどれぐらいかと言うのを軽く説明します。

第二階梯術士級ウィザードで魔術大学が卒業できるレベル、第三階梯貴人級ノブレマが平均的な魔術師が至る最高階位で、第四階梯聖人級ハイリは一言で言えば天才、第五階梯 王級ロードは鬼才、第六階梯皇帝級インペラトーレは人外、第七階梯神人級テオスは神話ですね」


 纏めるとこうだ。

【小聖紋】 平人級ウォーン術士級ウィザード

      貴人級ノブレマ

【中聖紋】 貴人級ノブレマ聖人級ハイリ

      王級ロード

【大聖紋】 王級ロード皇帝級インペラトーレ

      神人級テオス

 ――――とされているが、これはあくまでも限界値の目安であって絶対にこうなるわけではなく。【大聖紋】で神人級テオスになったのを確認された人物は存在しない。


「因みに、世襲貴族になれるのは【中聖紋】以上の【聖紋】を宿した者だけで、【聖紋】の数と質こそが国家の軍事力に直結するので、【大聖紋】は【大聖紋】と結婚し二人以上子を持つ事が王国貴族の義務とされています。また男性は【中聖紋】以下と結婚する事で【大聖紋】【中聖紋】【小聖紋】を持つ者を増やすのも義務とされているので……貴族席を持っていない私やシャオン君には関係ないの。身近な人物で言うとイオンは正妻との間に最低二人、妾や側室との間に一人以上作らないといけないのよ……面倒よね貴族って……」


「はぁ……」とシャルロット先生は溜め息を付く。どうやら思うところと言うか……昔何かあったようだ。


 アレ? 貴族になれば合法ハーレム? 最低嫁は二人出来ると考えると……転生してよかったぁぁぁぁああああああああッ!!

 

「シャルロット先生……」


「え、なに急にどうしたの? シャオン君……」


「俺 世襲貴族を目指します!!」


(あれ……もしかしてシャオン君ってハーレム願望があるタイプだったの? まぁ仕方ないよね年頃の男の子だしお爺様……閣下は子だくさんで知られ、奥様二人で今までに七人も子供がいらっしゃるんだから……遺伝かしら……)


 シャルロットの脳内では、もっとも閣下の跡継ぎに相応しいのはシャオン君ではないかと想像していた。


(まぁ、実際に好きな人や婚約者ができれば、心変わりもするでしょう……まぁイオンくんの願いでもあるし、本人が嫌がってないなら問題ないか……)


 シャルロットはそう考えていた。


「いいんじゃないかしら? 人間どんな事でも原動力は必要よ。最初は食欲でもお金が欲しいでも何でもいいから、原動力と目標を見つけないとね」


「先生疑問なんですが、エルフなどの種族も【聖紋】を持っているのでしょうか?」


「良い質問です。宗教と学問で考え方が変わりますが……基本は一緒です学説上 一人ないしは少人数の原初の【聖紋】を持った人物と交わった人々が貴族の祖先と言われています。

宗教では、神が遣わした救世主とその十三人の弟子こそが【聖紋】の祖であると言われていますが……数千年も前の話ですしモンスターや災害、国をも滅ぼす神龍によって資料は失われています。近代の学説ではエルフやドワーフと言った、他種族と交わり人間種は魔力を得たのではないか? と考えられています」


 確かに貴族……この世界の人間はゲームのせいか顔が整っている人が圧倒的に多い。美人やイケメンが多いエルフの血を引いているのなら納得できる。


「実際人間とエルフやドワーフは交配できます。可能性はゼロではないでしょう……エルフやドワーフも【聖紋】持っておりバラつきはありますが【大聖紋】~【小聖紋】までいますから」


「【大聖紋】同士や【中聖紋】、【小聖紋】同士でそれ以上やそれ以下が生まれる事はないんですか?」


「もちろんあります。確率は低いですが【大聖紋】同士から【中聖紋】が生まれることがありますが、大体は両親や祖父母の代で他の【聖紋】が混じっている場合ですね。【聖紋】は基本的に遺伝する事から貴族間での不倫や、自分の子の認定にも使われています。確率はゼロに等しいですが、魔力無しの平民から【大聖紋】がポンって出る可能性もあります。そうなれば貴族は狂喜乱舞するでしょう……」


やっぱり【聖紋】はメンデルの法則で言うところの有性遺伝子で、その受け継ぎ具合で決まらうのだろう。

 この世界では中世ヨーロッパのように、認知で不倫相手の子でも自分の子になるみたいな、乱れた道徳が蔓延って居なくて良かった。夫が遠征にでて若いカラダを持て余した妻と、多感な青年騎士の不倫などありふれていたらしいかな……だから貞操帯やランスロットが流行ったのだろう。


「どうしてですか?」


「エルフやドワーフなどの亜人種とは違い。人間の寿命は貴族でも60年程ですそうなれば、貴族の血が濃くなりすぎるのです」


あぁ……現実世界でも神聖ローマ帝国などの王家であるハプスブルク家が、青い血に別の血を混ぜない様にした結果。血が濃くなりすぎて遺伝病が当たり前になったと言う話を見た事がある。


「多少のリスクはあっても新しい血が欲しいんですね」


「その通り、その点私も貴方も狙われていますますけど……」


「え?」


「私は分家の分家程度の下級貴族の生まれで本来は【中聖紋】を持って生まれてくるハズでしたが……何の因果か【大聖紋】を持ってきてしまったのです。私は元下級貴族のため血統はハッキリとしつつも比較的血が薄いので、貴族にとっては垂涎モノです。シャオン君あなたの場合は半分がエルフであり血が薄いと言えるためです」


 半分血が違うだけで血が薄い扱いって……この国の貴族特に【大聖紋】を絶やさないようにとしている一派って近親婚すぎないか?


「俺種馬なんですか?」


「良いじゃないですか。お望み通り向こうから女が来ますよ?」


「嫌ですよ。そんなの」


「まぁ本来はの話なので今は来ません。多くの貴族は、閣下に目を付けられたくありませんから……」


 こうして雑談を交えながら、魔術の復習(座学)は幕を閉じた。




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【あとがき】


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作者のモチベにつながり、執筆がはかどりますますので宜しくお願いしますm(_ _)m

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