第33話兄の実力その一端2
槍はその性質上、間合いに入られると途端に性能が低下する。間合いに入られた時の対処方法は、
1つ 一度距離を開ける。
2つ 盾等の防具や短剣等で槍以外防ぐ。これは今回の勝負では、盾も短剣もないので出来ない。
3つ 石突と呼ばれる槍の柄のお尻の部分にある硬い金属製の部分で攻撃するしかない……
現実でも宝蔵院流槍術では、石突の長さは穂と同じにしており、穂先が打ち折られた際には石突で勝負するとどこかのゲームか時代小説で読んだ記憶がある。
刹那。
俺がグルグルと思考を巡らせている間に、イオンは急接近していた。
バン! ビュン! バン!
片手用直剣を三度振り、甲高い風切り音が聞こえる。
槍の柄を持つ外側の手は、「く」の字に大きく広がっている肘目掛けて一撃目。
続けて腕を動かし避けた事で、イオン兄さま相手に斜に構えてしまい空いた肩から脚にかけての直線に目掛けて二撃目。
腕狙いの一撃目と、一撃目によって空いた体側への二撃目を囮にして、本命の三撃目が籠手に当たり鈍い痛みが走る。
「ちっ!」
基本の三撃攻撃で有効打を打てなかった俺に対して、イオン兄さまは行動で手本を見せているのだ。
一撃目は良く狙い。相手の気が付いていない弱点を突き集中を乱し、二撃目で構え(姿勢)を崩し、三撃目で有効打を取ればいいのだと……
圧倒的な実力差のある相手への立ち向かい方を、実践形式で教えてくれているのだ。
「良く防いだな。一撃目で肘を斬り、二撃目で肩を、三撃で止めをと思っていたが……三撃目以外見事に防ぎよった」
イオン兄さまは不器用な言葉で、俺に賞賛の言葉を送る。
「三撃目もいつも通り盾があれば防げましたよ……」
俺は悔し紛れに言い訳を言う。
だが……
「無いモノ強請りはみっともないぞ……それを言うなら俺とて本来の武具を用いてはいない」
確かにその通りだ。イオン兄さまの本来の得物は、片手剣から派生する曲刀から更に派生した特殊両手武器のカタナ。太刀より短く切れ味に特化した
「確かにその通りですね。お互いに本来の得物を使っていませんから……」
負け時と俺も言い返す。
「変異した中型種を狩った事で随分と慢心しているようだな愚弟よ! この俺直々にその貴様の腐った精神を叩き治してくれるわ!!」
イオンが吠えたその瞬間。
「あ、……」
メイドの一人が声を上げる。
「雨が降って来た……」
パラパラと霧のように細かな小雨が降り始める。
「せやぁぁぁッ!!」
バン! ビュン! バン!
【疾風突き】、【疾風突き】、【薙ぎ払い】と緑の魔力光を輝かせた穂先がイオン兄さまの助言を通り、一撃目で虚を突いて集中力を削るために顔面目掛けて突きを放ち、間髪入れずに再度突きを放つ。最後に穂先側を持った手首をグルりと回転させ、最後の突きを弾いた木剣を持った手首を狙う。
今度は技術を見せるのではない。応用し勝つためにスキルを使用する。
………
……
…
「チョッと待って……シャオンってまだ槍を本格的に学んでそんなに時間たってないわよね?」
シャルロットは国でも有数の魔術師ではあるが、魔力量に優れるタイプではなく、技術と知識で十三杖と言う頂点に立った人物だ。
当然のように周りから無駄と言われるような事をして来た。今も武術を学び魔術に生かすと言う研究のため、魔術師の身でありながら騎士達から剣や槍を教わっている。
稀有な存在だ。そんな秀才タイプの彼女でさえもシャオンの異常さを感じる事が出来ている。
「えぇ……そのハズですが……」
「習熟が早すぎる」
「信じられない」
騎士達でさえもシャオンの異常性を目の当たりにし、二の句が出てこないのだ。
「どこにでも居るのよね……圧倒的に理不尽な才覚と努力だけで、
シャルロットは、自分の学生時代と宮廷魔術師時代を思い出して、ドッと疲れが込み上げ当て来るのをヒシヒシと感じる。
「【
シャルロットはその時の事を思い出し、胃がキリキリと痛み始めパジャマの上から意を抑える。
「シャオンなら私達と同じ高み……いえ。それさえ超えるかもしれない。……でもまだ足りないわ……ただ攻めているだけではイオンには絶対に勝てない」
…………
……
…
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【あとがき】
まずは読んでくださり誠にありがとうございます!
今日から三日間の毎日二話投稿します。この三日のランキング、PVなどを総合的に評価して打ち切りかどうかを判断したいと思います。一部完結までは投降を続けます。
読者の皆様に、大切なお願いがあります。
少しでも
「面白そう!」
「続きがきになる!」
「主人公・作者がんばってるな」
そう思っていただけましたら、
作品フォローと★星を入れていただけますと嬉しいです!
つまらなけば星一つ★、面白ければ星三つ★★★
読者の皆様が正直に、思った評価で結構です!
作者のモチベーションが上がって最高の応援となります!
そうぞ、よしくお願い致します。m(__)m
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