第28話【風刃】目指す頂き




 御用商人から買った高位MP回復薬ハイ・マジックポーションも既に底を尽きている。召喚魔術で呼び出したガルグイユの燃費は決して良いとは言えないが、風魔術の習熟が低い今、ガルグイユに頼る他に選択肢はないのだ。


 物理で殴るしかないのか……

 しかし槍術スキルの技がまだ少なく、まだ大型モンスターに効くような技はまだ少ない。


 一言で言えば絶望的だ。

 魔力がない……それはこのゲーム……否、この世界では致命的と言っていい。魔力は身体能力を向上させ、モンスターにあたえるダメージを向上させる……簡単に言えば純粋な物理攻撃よりも与えるダメージがデカい。

 そしていくら金属の大盾があろうとも、数トンもある巨躯の生物の攻撃を耐える事は物理的に不可能と言っていい。それを可能にするのが魔力であり、スキルであり魔術なのだ。


 いざとなる前に魔力を温存しておくべきか悩ましい。

 

 刹那――――。


 突風と呼ぶには生ぬるい。風の濁流だくりゅうとでも言うべき空気の塊が吹き荒れ、タイラントレックスの顔面に直撃し姿勢を崩す。


 一方そのころ俺は……


「うわぁぁぁぁっぁぁああああああああああああああああッ!」


 俺は突風に巻き上げらる落ち葉のように風に巻き込まれ、乱回転からの錐揉きりもみ回転をする。ガルグイユは、名探偵〇ナンの劇場版に良く登場する。怪盗キ〇ドが脱出手段として良く用いるハングライダーのような仕組みで飛行している……より正確に言うのなら滑空しているので風の影響を受けやすいのだ。


「シャオン。あれぐらいの風は、何時いつ如何いかなる状況であろうとも避けなさい」


 そんな言葉を投げかけるのは、黒ずくめの衣装に身を包んだ女性だった。頭にはつばの広い中折れのとんがり帽子をかぶっており、白いシャツの上には大きくて黒い外套がいとうを羽織っており、正に魔女と言う見た目だ。


「すいません。シャーロット先生…… あ゛!? 痛゛だッ!!」


 何かが飛んできてそれが頭部に命中する。


「何度も言っていますが、師匠と呼んで下さいとお願いしているハズです……」


「すいません」


「はぁ……で、あのデカブツは何ですか? 私の図鑑でも見た事ありませんけど……」


 そう言ってタイラントレックスの方を指さす。


「僕らにも何が何だか……一応仮称は付いてます。タイラントレックスです」


「君臨せし暴君……いえ。暴竜と言った所ですね……弱点は分かりますか?」


「中位近接攻撃スキルで骨が露出する程度の脚部装甲で、炎熱系のブレスを吐きます……分かっているのはこの程度です」


 先生は顎に手を当て思考を巡らせているようだ。


「新種……いえ、亜種や変異種と言った方が正しそうですね……できれば詳細なレポートを取りたいところですが……そうも言ってられる暇はなさそうですね……では仕方ありませんせめて綺麗に倒しましょう」


 シャーロット先生はアイツを無傷に近い状態で倒せるのか……


「シャオン。アナタだけで奴を倒すのは諦めて下さい。本当は君に止めは譲ってあげたいんですがね……今まで一人でよく頑張りました。後は私に任せて下さい」


 そう言うと、風属性の付与魔術エアフロートで俺を浮かせてくれる。


「人外と言えるモンスターでなければ、小魔術をうまく組み合わせてやれば倒すことが出来ます。実演しましょう……」


 そう言うと風属性下位魔術の風刃ふうじんを発動させる。薄緑色の風が可視化できるほどの濃密な刃を形成する。


「凄い……」


 俺は感嘆の声を零す。


「この魔術に込められている魔力量としては、大したものではありません。技術で何とかなるレベルのモノです」


 技術……これが技術でどうにかなるレベルなのか?

 

 確かにゲームでは、魔術一つ一つに割り振られた熟練度によって、必要な魔力が減少し【攻撃力】、【燃費】、【射程(持続時間)】、【発動速度】の四つのパラメーターを弄る事が出来るようになるのだが、一体どういう風に弄ればこんな芸当が出来るのか分からない。


「知っての通り、風刃は魔術師が近接戦闘をする際に用いる事が多い魔術です。主に杖や錫杖の先に生成し槍や剣のようにして戦います。なので通常は打ち合えるよう厚めに生成しますが……」


 杖の先に生成されていた風刃は、見る見ると薄くなっていく……


 否。それは正確な表現ではない。密度は薄くなっているモノの刃としての長さは伸びている。


「コレが私のオリジナル魔術……と言うにはいささかアレンジが効いていませんが、一応固有名称を与えられた新魔術です。名を【風ノ大太刀カゼノオオタチ】と言います。剣や魔術との打ち合いには使えませんが、一撃であれば大抵なんでも切れる無敵の刃になります」


 このセリフから恐らくは、攻撃力と射程距離を強化し燃費と速度を悪化させているのだろう……それを技量で補っていると言った所だろう。


 黒い外套をなびかせて空中で、短杖の上部にある宝玉から発生させた。【風ノ大太刀カゼノオオタチ】を振う。


 ブン、と言う軽快な風切り音を立てて、濃密な風の刃は振るわれる。


 その所作は、まるで本当に太刀を使っているような動作モーションだった。

 彼女は大振りな動作で杖の延長線上にある、【風ノ大太刀カゼノオオタチ】を振う。


 ザシュ。


 丸太三本程の太さであるタイラントレックスの首を一刀の元に切り捨てる。

 真赤な鮮血が噴水のように吹き出し、まるで雨のように降り注ぐ。


 ザァー。


 周囲に鮮血が降り注ぐ。


「エアシールド、エアシールド」


 先生が魔術で傘のようなモノを生成し、タイラントレックスの鮮血で濡れない様に防いでくれる。


 俺は張り詰めていた緊張の糸が、プツンと切れてしまったのか視界がぼやけて意識を失った。




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【あとがき】


まずは読んでくださり誠にありがとうございます!


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