第61話 四天王、水のザルノタール①

 不敵に笑うザルノタール。あれは絶対負けると思ってない顔だなぁと僕は思った。

僕も負けるわけにはいかない。ここは気おくれしたら死ぬ場面と気合を入れる。


「へぇ。俺をれるっていうのか。面白い。お前の実力見せてみろよ」


 ザルノタールは僕をじろっとにらみ僕の動きに注意を払っている。


 こちらとしては特に隠し立てするような能力はもってない。いつも通り強化魔法を身に纏い素早さアップの強化魔法の両方を魔力操作を行って身体能力を強化する。


 まずは相手の実力を調べてみる。話はそれからだ! と殴りかかったが片手で止められた。


 コイツちょっと今までとレベルが違うんじゃないか? と内心焦る僕。


「お魔の実力はそんなものか? そんなので聖女を守れると思っていたのか?しゃらくさい!」


とぶん投げられる。僕は受け身をとりつつ投げられた勢いをわずかでも減らす。


「出直して来いよ。お前じゃ力不足だ」


「そうは言われてもフルコース料理で言ったらまだオードブルです。最後まで食べていってくださいな!」


と僕は炎の強化魔法も身に纏い、魔力操作でこれも強化してみせる。


 さてとこれでどれだけ近づいたかなぁとじりじりと距離を詰める。相手の実力がちょっと大幅に上なのを実感して僕も慎重になる。


 ザルノタールも僕の魔法が気になるのか様子見しているようだ。そういうつもりなら、今のうちに相手の体力を削れるだけ削っておこうと攻撃を仕掛ける。


「ドンッ!」


という音とともに僕の攻撃を右手で受けたザルノタールの体が地面に沈む。力はうまい感じに相手に通じているようだ。


 ザルノタールは僕の攻撃をうけてみて


「なんだ。急にやるようになったじゃないか。俺もちょっと本気をだすか」


と心底楽しそうに笑いザルノタールは自分に水の強化魔法をかけ、そのうえで水の攻撃魔法を仕掛けてくるのだった。


「シリス先輩! 前のヴォラス魔法学校の時の聖女の固有魔法をもらえますか!?」


とお願いする。


「分かったわ。お姉さんに任せなさい!」


と、涙を拭いて聖女の固有魔法をかけてくれた。


 さて、これでスピードはさっきのと合わせてさらに速くなったはず。スピードものせてザルノタールに届くかどうか。


「届いてくれよ!」


と攻撃を仕掛ける。それでもやっぱりザルノタールはこの攻撃にも対応してみせる。でも前程、絶対的な実力差ではないようだ。


 そこへ各魔法学校のリーダーが集まる。


「楽しそうな相手じゃないか。俺も一枚かませろよ」


とガザさんは笑う。今の会話で支援魔法がかかって強くなっているんだろう。


「こういう時の弱体魔法だ。ありがたく思えよ?」


とニヤリと笑うジルニーさん。


「我らの弱体魔法の練度は四天王だろうと弱体する!」


 次々と放たれる弱体魔法。弾かれるものもある。耐性もあるようだけれど、強化魔法は強制的にがされる。


「お――。敵さん強化魔法をさりげなくかけてるじゃねぇか。これで五分五分か? 楽しくなってきたなぁ。なぁサルガタールさん?」


ピクリとコメカミをイラつかせ


「俺の名前はザルノタールだ」


と言い直す。


「失礼失礼ザルガミールさんだったな。ごめんごめん。悪かったなぁ。ほんとに耳が悪くなってしまってなぁ。俺ってホントに最近困ってるんだよなぁ」


とニヤニヤ笑うガザさん。どれだけ支援魔法を自分にかけるつもりだと内心もっとやれ! と応援している僕がいた。


「お前、邪魔だよ!」


とザルノタールはとうとうガザさんを攻撃した。けれどガザさんは自分の支援魔法で強化済み。攻撃を止めてみせた。


 そして反撃だ! 僕たちは代わる代わる攻撃を繰り返す。だから僕はせっかくなのでガザさんの呼吸にあわせて同時に殴りつける!


 相手は回避を選択する。逃げる想定どおりに動いてくれた。そこへ蹴りをいれる! ガンッ! と初めて顔面にクリーンヒット。ザルノタールは吹き飛んだ。


むくりと起き上がり


「よくもやってくれたな!」


と本気で攻撃してくる。


 僕はガザさんと即席の連携をとる。そしてザルノタールと本気の戦いが始まるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る