第17話 無茶を止めて得たものと12個のルール
「凄いですわね。どうしてこんなことが起きるんですの?」
「魔力操作と強化魔法の相性の良さ……ですかね? 今日はシャルリエーテ様はいくつ魔力を操作することに成功したんです?」
「2つですわね。3つ目をしようとしたら急に集中力がなくなってしまって……」
「なるほど。でも2つでも効果がしっかりでてるし良い感じですね。そのまま続けてください。シャルリエーテ様なら慣れれば5つもいけちゃいますよ」
「頑張りますわ!」
とにっこり笑ってくれた。この笑顔のために頑張ってる感じだなぁと僕は思うのだった。
翌日、魔力切れを起こして訓練の成果を感じられなかった人たちからも歓声があがる。
僕は内心ほっとしてみんなに効果があったことを素直に喜んだ。
その結果、魔法の訓練の成果を聞いたクラスメイトが徐々に参加してくれた。クラス対抗戦まで残すところあと1ヶ月になった頃には、クラスメイト全員が参加してくれるようになり、程度の差こそあれ全員に訓練で良い結果がでた。
シャルリエーテ様がにっこり笑って
「この訓練の結果をみると、クラス対抗戦にはオリタルトがリーダーになるのが一番いいと思うんですの! みなさんいかがかしら?」
と言い出した。なんでここでいきなり!? と思っていたら
「さんせーい」
「これだけの結果をだされたら文句は言えないね」
「全員に効果があるなんてすごいわ!」
あちこちから声があがる。みんなからの期待の目線も集まる。反対するクラスメイトはいなかった。
「オリタルト、みんなも同意してるけどどうかしら?」
ここまで言われては僕も覚悟を決めるしかなかった。
「分かりました。僕はリーダーとしてできる限り頑張ります! クラス対抗戦はみんなで勝ちにいきましょう!」
こうして僕はこの1年C組のリーダーとしてみんなに認められた。期待に応えられるよう頑張ると心に決めたのだった。
◇
翌日、授業の始まりだ。アルステナ先生が
「さて、C組のリーダーが決まったそうだな」
と僕に目線を向け
「リーダーは大変だとは思うが頑張るように。ではクラス対抗戦があと1ヶ月となったのでルールを説明する。しっかり聞くように」
みんなをみまわしてからアルステナ先生は説明を始めた。
「これがルールが書かれた書面だ。みんなに配る。なくすなよー。クラス対抗戦は団体戦だ。そこをよく考えて取り組むように」
みんなワイワイと騒ぎながら書面を読む。ルールは12個あるようだ。
日時はダントレア暦1253年6月15日より開始。
場所はアルダイア大森林周辺
競技時間は2時間
以下は勝利条件と補足
①リーダーが戦闘不能になるとチームの敗北。
②リーダー以外が戦闘不能になった場合ペナルティで3分動けない。3分経ったときバッジを取られてなければ競技に復活できる。
③頭に取り付けたバッジを取られた場合は取った側に1ポイントが入り競技を続けることはできない。またリーダーがバッジを取られれば敗北となる。
④リーダーが敗北の意思表示した場合。
⑤自陣の旗を取られた場合。
⑥自陣の旗は一度置く位置を決めたら動かしてはいけない。
⑦競技開始後5分以内に旗の位置を決められなければならない。旗を固定した状態でなければ敗北となる。
⑧時間切れの場合はポイントの多い方の勝利。
⑨スキルであえて減少させた味方の体力に治癒の魔道具は作動しない。
⑩戦闘不能になり3分のペナルティ後は、体力は回復するが魔力は回復しない。
⑪魔道具を使い死なないように配慮はするが完全に保証するものではない。
⑫武器の使用は認めない。防具は可。
◇
みんな書面を読んだ後、ざわざわとしだす。
「静かに。質問がある者は手をあげるように」
シャルリエーテ様が手をあげ発言する。
「旗を固定した状態ってどういう状況なんですの? あと敗北となるのはなぜなんですの? 厳しすぎませんこと?」
「まず旗を固定した状態とは砦等を築いた時にできる限り上の階に設置できるようにという配慮だ。また固定させる条件を付けないと旗を持って逃げ続ける者がでるかもしれないからだ」
ため息をつくアルステナ先生。
「このクラス対抗戦は防衛戦や拠点への攻撃等の技術を学ぶ場でもある。諸君らの追いかけっこを私たちは見たいのではない」
それはそうだろう。追いかけっこするなら徒競走を競技に選んだ方が、足の速い人が誰か良く分かるもんね。
「ちなみにこの行事には続きがある。4か月後の10月には1年、2年、3年の優勝クラス同士の総当たり戦も予定している。その際は外部から来賓の方々もいらっしゃる。大舞台で恥をかきたくなければしっかり頑張ることだ」
君たちの頑張りに教師陣は期待してるんだぞ? と
「最後に⑪にもあるようにこれは戦闘訓練だ。最大限、私たちは君たちが死なないように配慮する。治癒の魔道具はいつも君たちが使っている闘技場にあるものを大量に設置してある。だからといってそれが絶対だとはいえない。だから、思いっきり戦うのはいいがしっかり守れ。くれぐれも死なないように全力を尽くせ」
死んでも勝てと言わないあたりは優しいなと思ってしまう僕がいた。競技だから当たり前なんだろうけどね。
「でも先生。それなら⑫の武器の使用は認めないってどういうことですの? 治癒の魔道具があるなら武器の使用を認めてもいいのではなくって?」
それは確かにそうだ。実戦を想定した競技なのに、武器の使用が認められないのはなぜだろうと僕も思った。
「仮に伝説級の武器が持ち込まれた場合、君たちの命は保証できなくなるからだ。それが0.1%あるかないかという話なら問題はあるが私たちも全面禁止にはしない。だがほぼ100%命がなくなる伝説級の武器も存在しているし、まだ他にもある可能性がある。だから全面禁止なのだ」
とアルステナ先生は唇を嚙みしめ、苦々しい顔をして
「本当の実戦では武器は使う。なければ魔族との戦いに負けるからだ。だがこれはルールがある競技だ。現段階では使わないというだけの話だ。以上!」
と言い残しアルステナ先生は教室をでていった。
そんなチート武器があるのかと思った。でも実際には使わない武器のことより目の前にあるリーダーの責任がやたら大きくない? と僕は頭を
僕は自分に落ち着けと言い続け、これは個人戦じゃなく団体戦だ。みんなの訓練の成果を見るいい機会なんだと無理やり思うことにした。
そしてラスカン先生の魔法の実践の授業。
「クラスメイトを半々に
なるほど。予行演習か。みんながどう動くかは興味あるなぁ。先生が適当にチームを割り振って試合開始となった。
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