第48話 三つの銃声音【3】
「止まれ! そこのガキ共!!!」
そう言われなくても子供達は音にビビって足を止めてしまっているし、俺はすぐさま子供達に怪我がないか目視で確かめて。抱き上げていたプティ君を降ろして双子に任せ、近づいてくる敵と向き合う。
「牛の担当は盗めるだけ盗め! それ以外はガキだ!」
そう言ったリーダーらしき男の指示に従い、ほとんどの者達が牛を捕まえにかかったが残り6人の馬にまたがっている者達が俺達をぐるりと囲むように馬の脚を止めた。
馬を止めた男達は、馬から降りるとザクザクと牧草地を無遠慮に踏みしめながら俺達に近づいてくる。
まず、そいつらの顔が俺は気に入らなかった。
ニヤニヤとした気持ちの悪い笑みをどいつもこいつも浮かべてやがる。
そんな気持ち顔でこちらを見ながら近づいてくる奴らを逆に睨み返し、俺は震える子供達を庇いながら様子を見る。
「さあて、そこにいる一番小さいガキ。お前がここの末息子だなあ?」
「っひぅ」
「この子になんのようだ」
「…………そして、今喋った兄ちゃんが異世界から来た異世界人」
「っ……、だったら、どうした」
どうやら相手は俺の事も、プティ君の事も知っているらしい。
今喋っているこいつがリーダーなのだろうか。先ほど他の奴らに指示を出していたのもこいつなので、そうだとは思う。
怯えて俺にしがみついているプティ君を汚い目をしているそいつから隠すように俺は前に出る。
「今言った二人、末息子と異世界人。俺達と一緒に来てもらおうか」
「リ、リンとプティをどうするつもりだ!」
「何かしたら許さない! もうすぐ母上達が助けに来る!」
リーダーらしき男の言葉に噛みつき飛び出しそうな双子を俺は慌てて両手で制す。
危なっかしい。下手なことすればタダでは済まないだろう。
なんてったって相手は銃を持っているのだ。男たちは長いローブを着ており、今誰が何を持っているのか見えないので分からないが、先ほど発砲してきたので間違いない。
サロモン君の言うとおり、異変に気付いたパルフェット様達が助けに来てくれるだろう。
だが、それもいつになるやら。
「お前らの母上様が助けに来るのは確かにまずいが、それも計画の内だ。ここに来るまで半年かけて計画を立てたんだ。それだけ長い時間かけてきたってのに、目的のモノ手に入れずに帰るわけにはいかねえよ。安心しろ、無駄な殺しはしねえつもりだ」
半年……そういえば、ベルトラン君が行ってた最初の窃盗事件は半年前だった。
それからずっと、これの為に領内の家畜を盗んで様子見をしてたってことか。
しかも狙いは家畜だけじゃなくプティ君と俺もだと言う。
だが、半年も前から計画立てていたのに、俺も狙いの一つになったのはここ最近なのか?
無駄な殺しはしないと言ったが、それは逆を言えばこちらが抵抗すれば殺すって事だろ。
そう思うとますます周りに居る男達の下卑た笑みが気に食わない。
「お前ら! ガキと異世界人を捕まえろ!」
その指示に従い周りに居る男達の中からまず二人が近づいてくる。
その手には手錠を持っており、どうやらそれを付けて拘束するつもりなのだろう。
目の前に迫った男の一人が手錠を付けようと俺達に手を伸ばしてくる。
「大人しくするんだなあ……」
「…………そう言われて、はいそうですかとは、いかない、っね!」
一人の男が俺に触れる直前に、俺は相手の持つ手錠を叩き落とし、手ぶらになった手を捻り返して派手に地面へと叩き付けた。
「二人とも! 壁を!!!」
「「っは! ぅんりゃああああああああ!!!」」
俺の言葉を理解した双子は普段制限している力を思いっきり使ったんだろう、俺と少し離れた所に居た男達との間に土壁を一瞬で築き上げた。
しかし、すぐ近くに居たもう一人の手錠を持つ男は壁の内側に残ってしまっているが、問題はない。
「クッソガキ共!!!」
手錠を持つもう一人の男は、持っていた手錠を投げ捨てるとローブの内側からなにやら取り出そうとしているが、俺からすればそれは遅い。
俺はそいつが何か取り出そうとする前に横っ面を肘で思いっきりぶん殴り揺らいだところを両手を組んで頭に振り下ろし地面へと叩き付けた。
「リ、リン……」
「すごい」
双子は放心気味に俺の所業を見ていた。
こんな事ができる理由はあまり気分は良くないが、前の世界でのストーカー被害などで護身術を習い多少なりの実戦経験があったのでできたことだ。
でも、今はそんな事より。
「二人とも! 次は……っ!」
俺は次に二人に指示を出そうと言葉を言いかけたが、周りを囲んでいた壁がガラガラと崩れさっていく様を見て言葉が止まってしまった。
「…………はあーあ、言っただろう? これも、計画の内だ」
崩れ去る土壁の隙間から先ほどのリーダーらしき男が下卑た笑みを止めて、真顔でこちらを睨みつけながら銃をこちらに向けて構えていた。
良く周りを見ると壁の外に居た全員が銃をこちらに向けている。
まずい!!!
この機会を逃してしまうとこれ以上の逃げ道がなくなる。
そう思ったその瞬間。
――――――――ズガァアン!!!
先程とはまた違う銃声音。
それが響いたと思ったら、目の前に居るリーダーらしき男以外全員の銃が続けざまに撃ち落されていく。
「――っ!? くそ! こんな遠距離、どうやって!」
俺もリーダーらしき男と同じ考えを持っていたら、答えは簡単に出てきた。
「「母上!」」
「セリュー!」
どうやら助けが来てくれたようだ。
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