第26話 破壊神【3】







「あぁもう。そんなことだろうと思ったよ」

「「あ、母上」」



 …………パルフェット様?


 仕事に戻っていたと思ったパルフェット様が、何やら小さな箱を持ったセリューさんを連れてもう一度戻ってきたではないか。



「はい。これ使って」

「?? これ、ブレスレット?」



 セリューさんが持っていた箱の中から一つのブレスレットを取り出したパルフェット様は、それを俺に差し出してきた。

 ちょっと俺には大きい気がするけど。



「これを手首に付けると……」

「ん? …………おぉ! サイズがピッタリになった」



 パルフェット様がブレスレットを俺の手首に付けると、ちょっと大きかったブレスレットがピッタリサイズになったではないか!

 凄い!



「サイズがピッタリになるだけじゃないよ」

「え? どういう??……」

「「クンクン」」

「おぉう、どうした?」



 急に双子お兄ちゃんズが近寄ってきたかと思えばクンクンと匂いを嗅いでくるではないか。

 え、俺また匂い増した?



「「……リン! 匂いが減ったぞ!」」

「え! ホント!?」



 俺は匂いは分からないので実感がないのだが、横でベルトラン君もうんうんと頷いているので本当なのだろう。



「それは、制御装置ですか。パルフェット様はお持ちだったのですね」



 せいぎょそうち??

 …………制御装置!!


 それって、魔力の!?



「そうそう。シャルルとサロモンは主人に似て生まれつき魔力量が多かったんだけど、私に似ずに魔力操作が苦手でね。幼い頃はよく感情が高ぶると暴発してたんだよ。これはその時使っていた魔力制御の魔道具。今でも、たまに力加減を間違えるからお仕置きで付けてやろうと思って残しておいたんだ」



 でた! 魔道具!


 …………ていうかちょっと待てよ?

 双子お兄ちゃんズは俺の事どんくさいって散々言っていたのに、お前達も魔力操作苦手だったんじゃないか!


 俺は勢いよく双子お兄ちゃんズを見ると、双子お兄ちゃんズはパッと視線を外して口笛吹き始める。


 …………こいつ等、思っているよりいい性格してやがる。



 とりあえず、魔力操作ができるまではこれを付けておくことになった。

 ということは、その間俺はまだ生活に必要な物が使えないわけなので、パルフェット様達に助けてもらうのは継続となる。


 その後は寝ていたプティ君を起こして一度皆で昼食をし、昼食を終えてから再び魔力操作の特訓をイケメンと子供達と夕方のお仕事の時間まで続けた。


 結局その日は魔力操作はできずに終わった。

 俺は夕方の子供たちのお仕事を手伝い、今日一日で沢山の慣れない出来事にクタクタになりながら皆で屋敷に戻る。

 そうすると、パルフェット様がお風呂を沸かしてあるので子供達とお風呂に入るよう勧めてくれたので疲れをとるためにも喜んで入ることにした。



「俺はドゥース様と話があるから一緒に行けない。残念だけど、皆でゆっくりしておいで」

「絶対お前とは入るつもりないからな!」



 イケメンがいらない言葉を言ってきたが、無視だ。

 ちょっと噛みついたけど。



 俺は、ベルトラン君、双子お兄ちゃんズ、プティ君と一緒に風呂に直行した。


 双子お兄ちゃんズはいの一番に服を脱ぎ捨て風呂場に駆け込み、俺とベルトラン君はプティ君の服を脱がせて風呂場に向かう。



「おっと……これって、濡れても大丈夫なのか?」



 俺の腕に光るブレスレット。

 魔道具って、なんか高価な物っぽいよな。

 濡れて壊れたら困るし、ここは草花が生えるような場所でもないし、外さないといけないか?


 これって外れるものなのかと、試しにブレスレットを引っ張ってみると、ピッタリサイズだったブレスレットはサイズが少し大きくなり簡単に外れた。



「あ、外れた…………」



 とても簡単に外れたブレスレット。


 外した直後、また魔力が漏れ出て何か起こるかと一瞬しまった! と焦って周りを見るが。



「リンタロウ様ー! どうかされましたかー?」

「「リーン! 早くー!」」

「リンにいちゃー?」



 先に風呂場に入った子供達から声をかけられる。


 あれ……皆俺の魔力の匂い感じてないっぽい?

 ……一度魔力を制御したから収まったままになったのか?


 子供達から匂いの話は出てこないので魔力は収まったのだろう。

 そう思った俺は、脱いだ服の横に制御装置を置いて風呂場に入った。


 中に入ると双子は既に頭をわしゃわしゃと泡立てて洗っており、ベルトラン君もプティ君の頭を濡らして髪を洗ってあげるところだった。



「お待たせ―」

「リーン、シャワー取って―」

「取ってー」

「あぁ、はいはい」



 俺は前が見えなくなるまで泡でいっぱいになっている双子お兄ちゃんズに、言われるままシャワーヘッドを手に取って渡そうとした。



 バキッ!!



「「「「え?」」」」

「ぅ?」



 バキーン!!!

 バシャァアアアア!!!!!!



「「「っぶ!!!!!」」」

「うわぁあ!!! リンタロウ様!?」

「っぅきゃぁ!」



 シャワーヘッドが…………。


 こ・わ・れ・た!!!!!!



 シャワーヘッドを持っていた俺と近くにいた双子お兄ちゃんズは壊れたシャワーヘッドから勢いよく溢れるお湯に襲われて、ベルトラン君とプティ君にも余波がかかっている。



「って! リンタロウ様! ブレスレットは!?」



 ベルトラン君はそう言うと俺の手から壊れたシャワーヘッドを抜き取る。

 すると、ピタッと止まるお湯。

 水が出なくなっただけでシャワーヘッドは壊れたままだけど。



「ちょっと!!! 何の音!? シャルル! サロモン! また何かやったんじゃないだろうね!?」

「俺達じゃないぞ! リンだ!」

「濡れ衣だ!」



 着替えを持ってきてくれていたパルフェット様が風呂場に駆け付ける。



「ご、ごめんなさぁああああああい!!!!」








 どうやら、ブレスレットは水に濡れても火に入れても大丈夫らしい。


 俺がブレスレット外した直後、魔力の匂いがしなかったのは制御装置の効果が若干残っていたからだけど。シャワーヘッドを持つ頃には、俺の漏れ出る魔力はシャワーヘッドの魔力耐久量をオーバーしていたので、ぶっ壊してしまったとのこと。


 もちろん。

 俺はパルフェット様にそれはもう、怒られました…………。

 タオル一枚で……。


 俺はその事件の後、魔力の制御ができるようになるまでは、保護者の監視下以外での制御装置着脱の権利は無くなり。双子お兄ちゃんズには、濡れ衣を着せられた嫌がらせにという名で呼ばれるようになりました。










 そうそう。

 シャワーヘッドはパルフェット様の再生で元通りです。



















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