【完結済】無能呼ばわりされてパーティーを追放された俺だが、《神の力》解放により、《無敵の大魔導師》になっちゃいました。
マツヤマユタカ
第1話 追放
「おい、アリオン!剣がぶっ壊れた!早く新しいのよこしやがれ!」
町外れにある上級者用ダンジョンの地下五階にて、この冒険者パーティーのリーダーであるゲイスが叫んでいる。
俺はゲイスのいつにもまして偉そうな言い方にも関わらず、大人しく返答した。
「今コピーするからもうちょっと待ってて」
だがゲイスからは心ない罵詈雑言が飛んでくる。
「何してやがるんだ!前もってコピーしておけよ。お前の取り柄はそれしかないんだぞ!このグズ!」
俺は内心で、雑に攻撃しているからそんなに早く壊すんだよと思いつつも、ゲイスにはこのパーティーに拾ってくれた恩もあるため、無言でコピーを急いだ。
すぐさま予備で持っている剣を地面に置き、その上に左手をかざして念じた。
すると空いている右手の下に、まったく同じ形の剣が現れた。
これは俺の『アイテムコピー』という特殊スキルで、どんな物体でも寸分違わず複製が作れるという能力だった。
俺は新たに現出した剣を手に取り、ゲイスへ投げた。
「ゲイス、出来たよ」
ゲイスは振り返りざまに剣を受け取ると、その勢いで敵に斬り付けつつ言った。
「遅いんだよ!危うく俺がやられるところだったじゃねえか!この役立たずが!」
俺はこのパーティーの連中による罵声に慣れているとはいえ、これにはかなり腹立たしいものを感じた。
ゲイスはいつだって俺を役立たず呼ばわりする嫌な奴だ。
だが何といっても、他に取り柄のない俺を拾ってくれた男でもある。
仕方ない。ここは大人しく……。
「おいアリオン!俺の盾の替わりをよこせ!早くしろ!」
これはパーティーの最前線で、盾役をしているキリオだ。
とても身体がデカく暴力的な男で、すぐに凄んでくる嫌な奴だ。
だがいくら腹立たしくとも、パーティーでの俺の役割を放棄するわけにもいかない。
俺は急いで盾の予備を取り出し、コピーした。
「ほら、キリオ」
俺はキリオに向かって水平に盾を投げた。
盾はフリスビーのように回転してキリオの足下へ。
キリオはそれをすぐさま拾い上げた。
「おっせえぞ!後で殴るぞ!」
冗談じゃない……。かなり早くコピーしたじゃないかよ……。
俺がそうして憂鬱な気持ちを抱えていると、しばらくしてゲイスの声がダンジョン内に響き渡った。
「よし!片づいたぞ!」
どうやら最後の魔物を仕留めたらしい。ずいぶんと苦労した。どうもこの上級ダンジョンではここ五階あたりがこのパーティーの限界のようだ。
皆、疲れ切った顔をしている。
だがリーダーであるゲイスは下卑た嫌らしい笑みを浮かべて宝箱を漁っていた。
俺はいつもの光景ながらも、気分悪くその様子を眺めていた。
するとゲイスがひときわ大きな宝石を取り出して、俺の方に近付いてきた。
俺は何やら嫌な予感がした。そしてそれは大当たりだった。
ゲイスは俺の目の前で立ち止まると、いつものように言ったのだった。
「おい、アリオン。この宝石をコピーしろ」
俺はうんざりしながらため息を吐いた。
この台詞を聞くのは一体何度目だろうか。そのたびに俺も同じ台詞を言っている。
それは、「断わるよ。冒険のためならコピーはするけど、金儲けのためにはコピーはしない」というものだった。
そしていつも同じように殴られる。ボッコボコに殴られる。ゲイスだけじゃない、キリオや他の連中にもボコられなじられるんだ。
だが今回は違った。
ゲイスは殴りかかっては来なかった。そしてそれは他のキリオたちも同様だった。
だけど、いつの間にか皆無言で俺の周りを囲んでいた。
俺は不気味なものを感じ取った。
「……なに?どうしたの?」
思わず口を突いて出た俺の台詞に被せるように、不気味な表情を浮かべたゲイスが重々しく言った。
「これが最後の通告だ。アリオン、この宝石をコピーするんだ」
俺は全力で断わった。
ゲイスたちの様子は確かにいつもと違う。だけどこれは俺の信条だ。母さんとの約束でもある。
『アイテムコピー』は冒険目的以外には使用しない。これは俺にとっては絶対なんだ。
するとゲイスが先程とは打って変わって激怒した。
「てめえ、ふざけんじゃねえぞ!何が信条だ!そんなもの俺が知るかっ!大体何が冒険目的以外はコピーしないだ!てめえがいつ冒険者らしいことをしたんだよ。してねえじゃねえか!」
俺は必死で抗弁した。
「確かに俺は魔力が無いし、まだ14歳だから力も弱いよ。だけどみんなの武器や防具、それにアイテムなんかをコピーして充分役に立ってきたじゃないか」
「うるっせいよ!そんなものただの小間使いと一緒だろうが!さっさとコピーしろや!それが一番お前の能力の有効利用だろうが!」
「ダメだよ。そんな安易なことは出来ない。そんなことをして大金持ちになろうなんておかしいよ!」
すると横から痺れを切らしたキリオが殴りかかってきた。
俺は不意を突かれて吹っ飛んだ。右の頬が痛い。たぶん相当に腫れていると思う。
そこへ嫌みったらしい黒魔法使いのレットーレが、ゲイスの腰巾着らしく言った。
「ゲイスさんのおかげで我々のパーティーに入り込めたってのに、どうしてそのゲイスさんの頼みを断れるんだよ。この恩知らず」
すると次いで、蛇のようにネチっこい女盗賊のミリヤも同調する。
「ほんとうにねえ、あんたなんてコピー能力以外、てんで役立たずじゃないか。だったらその能力を最大限にいかしてあたしたちに還元したらどうなんだい?」
ミリヤは、キリオにぶっ飛ばされて地面にうずくまる俺の痛い右頬をわざと撫でながらサディスティックに言った。
「そうだど!ミリヤの言う通りだど!おでもそう思うど!」
こいつはグリエル。とてつもなくバカでかい男で、超弩級の力持ち。だけどしゃべり方で判るとおり、とてつもなく頭が悪い。
俺は痛い頬をさすりながら起き上がり、もう一度決意を込めて言ったのだった。
「断わるよ。俺は絶対にこの能力で金儲けはしない」
すると、満を持したようにこのパーティーの副将格であるギョージャが、その冷酷な性格そのままに俺に言い放ったのだった。
「ならば此奴は用なしですな」
ギョージャはそう言ってゲイスを見た。
俺は不安な気持ちを抱えながらゲイスを見た。
するとゲイスが俺に近付き、見下しながら言ったのだった。
「いつもいつも、青臭い正義感振りかざしやがって。目障りなんだよ!」
ゲイスが言うや、右脚を振り上げた。
そして俺のどてっ腹に、ドンと大きな音を立てて蹴りを入れたのだった。
「ぐっ!」
俺は思わず大きなうめき声を上げつつ後ろに吹っ飛んだ。
だが問題は後ろに吹っ飛んだことではなかった。
問題は、俺の後ろには大地がなく、切り立った崖があることであった。
俺は落ちた。
崖に身体を打ち付けながら奈落の底へと真っ逆さまに落ちていった。
何てことだ。こんなところで命を落とすことになるなんて。
俺は運命を呪った。
だがこの後俺を待ち受けていたのは過酷な運命などではなく、明るく拓けた大いなる未来なのであった。
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