第16話 結果と運動会

6月

テストが終わり、テストが返される

昔の日本は廊下にテストの順位を紙で張り出していたが、今はそれがなくなり、自分が言わない限りはわからない仕組みになった


サトル「サユ、どうだった?」100/327


サユ「まぁまぁかな?」50/327


サトル「何処がだよ」


学年生徒数は327人、その中の50番目はそこそこ頭がいい人が入るクラスだ

サトルは平均点より少し高いくらいだ


チサト「………」156/327


チサト「チッ」


サトル「…彼奴は悪かったみたいだな」


サユ「チサトちゃん」


サユがサトルの先にまで来てテストの順位を見せ合う、少し離れたところでチサトが舌打ちをしながら結果を見ていた

どうやら悪かったようだ


チサト「…ん?」


サトル「あら」


そんな姿を見ていると不意に目と目が合う

するとチサトは席を立ちこちらを近づく


チサト「よ」


サトル「お」


チサト「ん」さ


サトル「ほい」さ


チサト「くたばれ」さ


サトル「頑張れ」さ


一文字で挨拶して、一言で見せ合い、感想を言う


サユ「2人ともいつの間に仲良くなったのよ…」


中間テスト前までは接点すらなかったのにいきなりここまで仲良くなるのはあまりにも不思議だ、サユ自身もとても驚いており、ついツッコンでしまう


サトル.チサト「サッカー繋がり」


サユ「え?」


サトル「サッカー部」


チサト「女子サッカー部」


ここの学校は珍しく女子のサッカー部があるらしく、チサトはそこに入っていた


サユ「あのなんでそんなにも繋がりがあったのにサトル君知らなかったの?」


サトル「興味なかったから」


チサト「あたしもこいつがサッカー部だって事は知らなかったよ」


中間テストが終わってサッカー部全体として集まった時に偶々一緒に向かった事で同じ部活(男女で分かれているが)だと知り

なんとなく打ち解けたらしい


それも含めて、2人の関係の変化は驚きだ

サユもそうだが、意外とサトルも不思議な人間の1人なのかもしれない


サユ「ふーん…」


サトル「…なんだよ」


サユ「……別にぃ」


何故か少し不貞腐れているサユを見ながらチサトは去る


チサト「んじゃ」


サトル「あいよ」


サユ「じゃあねー」


サトル「それじゃあ、俺も部活に行ってくるよ」


サユ「私も行ってくる、久しぶりに絵を描くぞー!」


そうやって意気込んでいるサユを見てサトルは


サトル「いや描いてたじゃん」


と答える


サユ「描いてないよ、ずっと勉強してきたんだから」


そう言って否定するので、サトルと簡潔に言う


サトル「…教科書とノート」


サユ「あれはなし」


そんなやり取りをしながら、2人は教室から出た


中間テストが終わったら今度は運動会が待っている、校長先生曰く今度は頭ではなく体を使おうとの事だ


6月となるとちょうど梅雨の時期、どうなるかはわからないが、やるからにはしっかりとやりたいものだ。


しかし

父や母の世代だと人口ピラミッドや棒倒し、二人三脚等があった種目が

子供が怪我をする

男女で走るのは女の子が可哀想だ!

などなど親御さんやPTAからの苦情で殆どなくさないといけなくなった


さらに

騎馬戦は危ない

リレーは熱中症で危険

玉入れは当たると危険

綱引きは負けると怪我する

組体操も裸足でやるな


等、正直に言って頭が可笑しい親御達によってこのようなクレームが毎日来るらしい

それに反論しようとするとPTAや教育委員会に訴える

ネットで晒す

等過保護を超えた自己満足の為に子供を出汁に使い自分の思い通りにする今の親達によって学校は言いなりになるしかなく

それにキレた校長先生が


校長先生「今後一切、運動会を行う事を禁止する!!」


と言い、運動会は無くなってしまった


そのせいで楽しみにしていた子供達は全て親の所為だと知ると一部の子供達は大喧嘩をしたそうだ


逆に喜ぶ者達もおり、現代日本の体力低下の原因と今の世代の悪い所が、この件で明るみになった


——————————————————————

~教室~


サトル「…てな事がテレビやってけど、そこまでしてまでも文句を言う親ってなんなの?」


サユ「モンスターペアレントって呼ばれてるらしいよ、それ」


サトル「……なにそれ」


チサト「学校などに対してそう言う事を言う親の事よ、何でもかんでも自分の子供の為と言って、あれこれ文句を言う親って事」


サトル「過保護って事?」


チサト「まぁそんな感じ」


サユ「私達の事が心配なのはわかるけどね」


サトル「でも、周りから見れば頭のいかれた親としか思えないよな、父さん達も言ってたし」


サユ「…なんとも言えないね」


チサト「恨むなら、それを許してしまう今の世の中を恨むしかないね」


サトル「本当、名前を書いたら死ぬノートとか落ちてないかなぁ」


チサト「無理だね、…それと」


チサト「………あがり」


サトル「嘘!?」


サユ「あ!私も!ラッキー」


サトル「嘘だろ?おい!また負けたぁ!」


サユ「サトル君って意外と弱いね」


チサト「だな」


サトル「くそー!もう一回だ!」


………サトル達はこの前見たテレビの内容を話し合っていた、他のところでも、賛成の人達と反対の人達でまとまって話していた


この日は本来運動会の日なのだが、運動会は無くなってしまった為、今日一日授業も何もないのだ、しかも梅雨の時期のせいで雨がずっと降っており、外にも行けないので3人でトランプをしていた。(ババ抜き)


サトル「しかし、なんで今日学校あるのかな?」カード混ぜ混ぜ


サユ「元々この日が運動会だったからねぇ」


チサト「学校自体はあるけど、運動会に向けて授業を早く進めてたから、やる事がないんだよ」


サトル「だったら休みにすればいいのに、振替休日とかいらないからさ」カード配り配り


サユ「えー私はこれでよかったかなぁ」


サトル「なんで?」配り終えた


サユ「だって、これで授業が1日潰れて、平日休みだから、行きたいお店とか空いてるし」カード確認


チサト「まぁ、今は梅雨だから、どこにも行きたくないけどな」同じカードを捨てる


サトル「それは同感」残り7枚


サユ「だったら家でゴロゴロしてる」残り5枚


チサト「結局休みの日はこうなるんだよね」残り8枚


そんな事を言いつつ、3人はまたババ抜きを始める


因みにババ抜きでサトルが最初


サトル「これは俺の一人勝ちだなw」


と言い2人が


サユ.チサト「なんで?」


と質問すると、サトルは不敵に笑って


サトル「だってババァ抜きだからw」


と言ったら真面目なトーンで


サユ.チサト「は?」


と、あたりの気温が低くなるのを感じる程、場の空気が凍り、サトルが土下座で謝まったのは言うまでもない


——————————————————————

今日の学校は午前中だけで終わり、部活もない為、2人は帰宅する


チサトは別の通学路なので校門で分かれて帰る


サトル「本当、毎日毎日雨で嫌になっちゃうな」


サユ「ね、でも晴れたら晴れたで嫌なんだよねぇ、暑くて」


サトル「特にこういう日の次の日、とかね」


サユ「ああ、たしかにサトル君はチサトちゃんと一緒にサッカーをやっているんだよね?」


サトル「ああ、そうだけど、てかお前知ってるだろ」


サユ「そうだけど、一応の確認………成る程だからチサトちゃんも嫌がっていたんだ」


サユ曰く、一緒にトイレに行く時に聞いたらしい、夏の時期は地面からの熱が凄く、雨の次の日が晴れの場合、地面からの熱気と水溜りが蒸発し暑い水蒸気となり汗が止まらず、更にキツイと言っていたらしい


サトルもその話を聞いて、同感せざるを得ない………そして覚悟しなければならない


サユ「サトル君?」


サトル「?…どうした?」


サユ「いや、なんで目が遠い所を見ているのかなぁって」


サトル「ん?そんなの簡単だよ」


サユ「簡単?なんで?」


サトル「………明日の天気」


サユ「………頑張ってください」


サトル「…はい」


明日は全国的に晴れとなり、気温もぐんと上がる、所によっては30度を超える為、ある意味運動会より危険な事をするのだ


サトル「全く、運動会は駄目でなんでこんな地獄がOKなんだ?」


サユ「………頑張れしか言えないよ」


サトル「…はあ」


サトルの心は梅雨の様に憂鬱だった。


——————————————————————


中学生編はこんな感じが続きます、幸せの時間と言う意味です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る