第12話 嬉しい変化
サユ「サトル君、おはよう!」
サトル「おはよう、サユ」
翌日、2人は家の前で待ち合わせて学校に向かう
小学校に入学してから初めての事だった
サトル「…………」
サユ「…………」
しかし特に話す事もなく、ただただ歩く
普通だったらそれだけでも新鮮な気分を味わえるのだが、今回はそうもいかない
昨日、いじめの件についての話し合いが終わり表面上終わった
しかしいじめっ子達がそれで終わるとは思えない、いじめをする人間は"自分が楽しければ良い"と思う人間が多い、簡単に言えば他者を思いやる事が出来ない
例えるとするならば、普通の人間は人を殴れば相手は怪我をする、そして親、もしくは先生に叱られると、簡単だが、ここまで想像できる
しかしいじめをする人間はその事が理解できない、殴った後の事が想像出来ないのだ
その為"今が楽しいからそれで良い"
もしくは"相手の気持ちを理解できない"のだ
今回の件も、もしこれと同じ事が当て嵌まれば、先生に叱られた、もしくは親に叱られたと言うことで、同じ事をする可能性がある
サトルもサユもそれが怖いのだ
昨日は2人で一緒に遊んだ為、そんな事も忘れる事が出来たが、今は嫌と言うほど恐怖を感じている
サトル「…………はあ」
サユ「…………はあ」
2人してため息を溢す、この後何が起こるのかわかったものではない
サトル「サユ……」
サユ「……うん」
サトル(宇宙人地球に攻めてこないかなぁ)
サユ(地震とか起きないかなぁ)
決して起きないがついつい考えてしまう、あれを思いながら学校へ向かった
——————————————————————
~下駄箱~
サユ「…………」ハァハァハァハァ
サトル「サユ……大丈夫か?」
学校が見えてからは胸の様子がおかしいと
サトルは感じた
俗に言う胸騒ぎだ
近づくにつれて足が重くなる、今すぐにでも帰りたい、そんな気分だ
そんな中でもここまで行けたのは隣に彼女がいたからだろう
何回も深呼吸をして下駄箱から上履きを取り出して、靴をしまう
そしてサトルがサユに近づこうとしていると
サユは激しい息遣いと共に胸の辺りの服を握りしめていた
サユ「う………うん、大丈夫、ちょっと緊張しているだけ………」ははは
そう言って彼女は無理して笑う
仕方ないだろう、ついこの前まではいじめに遭っており、下駄箱の中には悍ましいものが毎日入っていたのだ、こうなってしまっても仕方ない
サトル「………僕が開けるよ」
サユ「え?」
トラウマとなっているであろうサユの為に代わりに下駄箱を開けようとするサトル………
しかし
サユ「待って」ガシ
サトル「………サユ?」
それはサユによって止められる
まだ呼吸は荒いが、目つきは変わった
サユ「………ここでサトル君に頼ったら、私は前に進めないから、…だから………えい!」ガチャ
目を瞑り勢いよく開ける、中を確認すると
そこには
サユ「………何もない?」
サトル「…だな」
そこにはゴミや虫などは入っておらず、あるのは上履きだけだった、ただし
サトル「………休みの日、洗おっか?」
サユ「………明日でしょ?今日だけ我慢する」
結構汚かった
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~教室前~
ここまでは何もなかった、しかしこの後だ
教室はとても賑やかだ、耳を澄ましてもこちらの悪口や悪巧みは取り敢えず聞こえない
サトル「………サユ」
サユ「………うん」
教室のドアに手をかける
後は開けるだけだ、………開けるだけだが
サユ「…………………」
手からは脂汗が出ており、サユの心臓は今まで以上にバクバクだ
サユ「………っ!」ガラッ
目を瞑り勢いよく開ける
そのせいでみんなの視線がこちらに向く
女クラスメイト「…………」
女子1「…………」
さらに1番会いたくなかった人たちがいて教室に入れない
女クラスメイト「…………」スタスタ
すると彼女はこちらに向かって歩き手を引っ張り中に入らせる
女クラスメイト「………ごめんなさい、後ろにいる人達が迷惑していらっしゃるから」ボソッ
そう言って後ろを振り返ると2~3人のクラスメイトが外で待っていた
サユ「あ………ありがとう………」
女クラスメイト「………いえ、貴女にした事に比べたら、大したことありませんわ」
そう言ってサトルの前にも出て
女クラスメイト「信用して欲しいとは思いませんわ、ですが、私はもう何もしません………」
そう言った後耳元で囁く
女クラスメイト「もし、嘘だった場合はいつでも私の体を……い………痛ぶっても構いませんわ/////////」
そう言ってその場から去る
………え?
サユ「…………え?」
サトル「…………銀○のさっ○ゃん」
………今の言葉は聞かなかった事にしよう
そう思った2人だった
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HRが始まるチャイムが鳴り席につく、しかし今日来たのは担任ではなく副担任の先生だった
副担任「えー、皆さんに悲しいお知らせがあります」
サトル(悲しいお知らせ?)
サユ(一体なんだろう?)
そう不思議に思っていると副担任は驚くべき事を言い出した
副担任「担任は昨日、先生を辞めました」
クラスメイト「「「ええ!?」」」
その言葉に皆んなは驚く、勿論サトル達もだ
しかし他の子達と違って"なんで辞めたのかは"知っている
サトル(………きっと)
サユ(パパ達………ね…………)
昨日は夜遅くまで帰ってこなかった両親達
お腹は空いていたが、2人で楽しく遊んでいたので特に気にはしなかった
皆んなで夕食(コンビニ弁当)を食べている時に
明日からは大丈夫だよ
と言われ不思議に思っていたが、どうやらこう言う事らしい
子供の僕達にはわからないが、兎に角あいつは辞めたんではなく辞めさせられたんだ
周囲の子供達は担任が辞めた事を悲しんでいる、それもそうだ昨日のあの件で彼奴の本性がわかったのだ、それがなければサトル達でさえわからなかったし
辞めたとなれば少なからず、悲しい気持ちにはなる
しかしサトルは暴行を加えられ
サユは精神を攻撃された
辞めたと聞いても、悲しいと言う気持ちにはならない、寧ろ嬉しい気持ちになった
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~下校~
今日は特に何もなく無事に帰る事ができた
行間休みや昼休み等もクラスメイトから
絡まれる事もなく2人でいる事ができた
今回の騒動の所為でサトルは友達と遊ぶ事がめっきり減り、今日は誘われる事もなくサユと下校している
サトル(それはそれでなんか悲しいけど………)
サユ「………?」
サトル(まぁ……別にいいか)
こうやって一緒に帰るのも、この前と違って
本当の意味で一緒に帰っているので
2人にとって新鮮な気分だった
朝の憂鬱な気分が嘘みたいに晴れ晴れとした気分になる
緊張から解き放たれた感覚は言い表しようのないほど気分がいい
サユ「ねえ?サトル君」
サトル「?……どうした?」
そんな気分にサトルは浸っていると不意にサユに話しかけられる
サユ「しばらくの間、一緒にいてもいい?」
サトル「………どうして?」
サユ「今日はサトル君がいたから勇気が出たの、でも1人だと勇気が出ないし、あの子達も何するかわからないから」
確かにその通りだ、サトルはこれ以上手を出さないように徹底的にやった
それが許されることでは無いのは承知だ
しかしそのお陰で今日のような感じになったかもしれない
そんな中で、彼女と離れたらまた同じ事をする可能性も否定できない。
サトル「いいよ、一緒に登校する約束もしたし、これからもよろしくな」
サユ「……!!!うん!!」
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こうして僕達の小学生生活は波乱な物語となった
………けど今でも思う、俺はあの時彼女を助けるべきではなかったと、こんな気持ちになるなら、こんな裏切りにあうなら
…………………………助ける価値はなかった
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