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名残惜しい、そう思ってもダンスの時間は終わりを告げる。
会場の二階へ閉会の挨拶をしに行くマルカラン王子へ、ロザーラは手を伸ばそうとするのをグッと我慢した。
これ以上、彼を求めても悲しくなるだけ。諦めましょう。
「宝石、後で返しておきますわ」
「気にしなくていいよ。そのオッカムは既に君のものだし」
「そうはいきませんわ。……返しておかないと踏ん切りがつきませんし」
「……そうか」
無理をしてでも王子様に求婚すれば、もしかしたら婚約してくれるかもしれない。
ロザーラ自身の中に湧いて出た恋心が満たされるかもしれない。
そう考えても彼女は、王子様を引き留めておくことなど出来なかった。
さようなら、もう二度と会う事はないでしょうね。
閉会の挨拶が終わった瞬間、ロザーラはそう思いながら父と共に舞踏館を出た。
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「ステリックが婚約破棄!? ……一体、奴は何を考えているんだ?」
舞踏会の日から一週間が過ぎた頃、王城にある自室で、マルカラン王子は手元にある報告書を読んでいた。
思わず大声を出してしまった内容の報告書を。
ロザーラとの婚約を破棄する為に噓を吐いて陥れたステリックが、今度は新たな婚約相手との関係を終わらせたのだ。
ロザーラに再び婚約を迫る為に、彼女に対する嘘を撤回するとまで約束して。
……舞踏会でのダンスを見て再び動き出すと思ったが、これは不味いな。
「彼女は自分が王子様と結婚するなんて出来ないと思ってる。それに彼女の親だって叶うかどうかも分からない相手より、確実に結婚が出来る相手を選ぶはずだ。……こんな事なら、もっとしっかり彼女の手を握っておくべきだったな」
後悔を抱えながらも、マルカラン王子は次の一手を考える。
ロザーラがステリックと婚約をすれば、彼女の家も捜査の邪魔をするかもしれない。
問題を公にして婚約の話が流れるより、秘密にしておけば家の繁栄の為になる。
そう考えると、ステリックが再びロザーラに婚約するのを邪魔した方がいい。
……その資格が僕にあるのか?
一度、彼女の手を離したのに、捜査の邪魔になるから婚約してくれと言えるのか?
「……こんな事なら、最初から好きと言えばよかったのに」
自分の恋心よりもステリックの調査を優先した事を、王子は今になって後悔するのだった。
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「……ロザーラよ、お前は嫌と思うだろう。ステリックと再び婚約するなんてな。だが、他に道はないのだよ」
フランコ侯爵家の屋敷で、ロザーラは父から重大な選択を突き付けられていた。
ステリックと結婚するか、もしくは家から追放させるかという選択を。
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