転生吸血鬼さんは地位向上を訴える!~決して悪い種族ではございません~
玉響なつめ
プロローグ
「こんにちは! この馬車は学術都市まで行きますか?」
「ああ、前金で銅貨三枚だよ。元気な嬢ちゃんだなあ、いいこった!」
元気いっぱいに声を上げれば、周りがにこにこと応対してくれるのはなんとも嬉しいことだ。
やっぱり挨拶って大事である。
特にそれが美少女って、大きいよね……。
ふふん、自慢じゃないが私はなかなかの美少女ですぜ!!
私の名前はマリカノンナ=アロイーズ・ニェハ・ウィクリフ。
金の髪に紫の瞳、白い肌に華奢なボディ。お胸に関してはまあ……ほどほどってことでまだきっと成長する。するんだったら。
とにかく、
大体見た目で言えば十七歳か十八歳か、そのくらいかなあ。
そう、夢にまで見た。
自分を表現するのにおかしな言い回しだと思うかな? 思うよね。
その通りだと私も思う。
だがそれも仕方のない話なのだ。
だって私は、転生者。
転生なのか転移なのかはたまた憑依なのか、正直なところはわからないけど
「よろしくな! 嬢ちゃん!」
「はい! よろしくお願いします!」
魔法……すなわち、ファンタジーな世界。
そのことに私はテンションが上がったよね。
しかも美少女。
さらに言うと魔道書が読めるくらい頭がいい。魔法も使えちゃう。
ナニコレ最高!
前世の私ってのが何をしていた人なのかわからないけど、ゲームとか小説とかで魔法の世界に憧れていたってことはよく覚えているのですごいじゃないかと気分が最高になったのはちょっとした黒歴史だ。
(……あわよくば、かっこいい男の人と出会って恋愛なんかも……って思ったこともあったわね……)
うん、あったあった。
でもそのくらいはいいと思うんだよね。
きっとあれは記憶を取り戻したせいでのハイテンションだったんだよ……。
でもそのハイテンションも長くは続かなかった。
何故なら、完璧な美少女である私には大きな大きな問題点があったからだ。
そう、それは……。
(私、吸血鬼なんだよね……!!)
不死者の王、血と生気を喰らい人々を恐怖の底に陥れるとまで言われる存在。
その痕跡を見つけたならば、いかなる犠牲を払ってでも滅ぼさねばならない危険な存在。
なんて世間では言われているが、それは誤解なのである。
ええ、ええ、それは大きな誤解なのである!!
「お嬢ちゃんは学術都市で下りるんだったな? さぞかし頭がいいんだろうなあー! うちの倅に爪の垢を煎じて飲ませてえよ」
「えへへ、それほどでも……」
いや、そりゃまあ伊達に百歳越えてませんからね!
実年齢はちょっとわからないんですけど……記憶を取り戻した辺りでそのくらいだったので……その間はどうやら本ばかり読んで過ごしていたみたいなので、知識だけはすごいんですよ。
「試験、合格するといいなあ」
「はい、がんばります!」
そう、私は学術都市に通いこの世界で地位を確立してみせる。
そして吸血鬼の地位向上を図るのだ!
主に私の安寧な将来のために!!
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