第9話入院中の現実生活

 2016年のオバマ大統領の世界平和、平成天皇の生前退位以降。テレパシーでそれはそれは色々なことがあったのだが、現実の入院生活は相変わらずというか、相当ヒドい症状のように周囲のスタッフには映ったようで。隔離室と「急性期」である1病棟を行ったり来たりで、淳子先生や看護師からは「根岸さんは一生退院は無理ね」と言われていた。


 豪志はとりあえずテレパシーで分かったこと、「LGBTの研究」であるとか「Multi Account の研究」であるとか、文学では「がじゅまん」「伊勢崎王国」「松戸愚連隊」などを売店で買ったキャンパスノートにメモしていった。これは決してワタクシしてはならない人類の大いなる共有財産であるという使命感を持ちながら。


 だが、看護師などのスタッフたちに話して聴かせると反応はあまり芳しいものではなかった。特に「LGBTの研究」など誰でも理解できる分かり易い話から始めたのだが、やはり評判はよくない。

「へー、そうなんですか、」とか、

「だからナニ?」とか、

「妄想だよ、妄想!」とか。


皆なぜこの法則の重要性が理解できないのか、が豪志には理解できなかった。こんなスゴい発見があるか。男の半数はホモということが分かるだけで人類史の、いや生物学の謎が相当解けるというのに。


 豪志も初めは精神病患者の言うことだから関心を示さないだけ、看護師レベルの知性ではこの法則の重大性が理解できないだけだとタカを括っていた。しかし、退院して2年経った今をもっても、この研究の重要性に関心を示したのは伊東乾と「他人」の千葉雅也さんぐらいだった。しかも千葉さんには結局Twitterもブロックされてしまった。


 伊東乾だけが「こういう変なモノを拾ってくる人がノーベル賞を取るんですよね」と言ってくれた。豪志は、こんな分かりやすい話はない、みんなすぐに受け容れてくれると考えていたが、「LGBTの研究」ひとつ取っても相当「碩学的な」人間でないとその重要性が理解できないようだ。


 東浩紀さんから「キミは孤立している」と言われた。何が悪かったのか。一気に情報を出し過ぎると人間は反作用を起こすものだというのは、哲学を少し齧って分かっているつもりだった。時間がいずれ解決するであろう、と。


 だが、ここまで孤立しきって、寛大な目で見守って下さっていた、左巻健男先生や茂木健一郎先生にまである意味見離され、しかも頼みの伊東乾先生はAccountが凍結されてしまった。美夏ちゃんや柚里絵、あやかんぬといった嫁候補たちも引いていく。元々寂しがり屋の豪志にとっては非常に堪える、隠している情報はまだまだあって、どこかのタイミングで全てオープンにしなければいけないと思っているのに。時間が解決するといってもそれほど待てない事情もあるのだ。

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