二人きりのクリスマスイブ
「時雨ちゃんごめん! クリスマスのことだけどさ……」
「うん、どうしたの?」
「24日の夜にお仕事になっちゃってさ、25の夜にケーキ作って二人で食べることはできるけど……その……いつもは24も25も一緒にいてあげられたから本当にごめんねって」
「お仕事ならしょうがないよ……じゃあさ! お願いがあるんだけどさ、24日に心音さん泊まらせてもいい?」
「心音ちゃん? 私はいいけどちゃんと本人にも確認取らないとね~」
「ありがとう叔母さん! 早速連絡取らないと……」
「……なんとかなりそうで良かった」
♢♢♢
「……それで泊まりに来てほしいと」
「うん! 心音さんは大丈夫?」
「勿論。時雨のためなら大丈夫だし、なんなら私も楽しみだな」
「そう言ってくれるとすごく嬉しい……」
「当日、楽しみにしてるね。じゃあ時雨、また明日学校でね」
「うん、また明日~」
そう言って通話を終える。楽しみで忘れていたが、両親にこの事伝えないとな……
自室を出て、一回でくつろいでいる両親に話しかける。
「あ、今ちょっと話いい」
「ん?いいぞ心音。どうした?」
「24日、友達の家に泊まっていいかなって。向こうからOKは出てるんだけど」
「友達って時雨ちゃんのこと?」
「時雨ちゃんって最近心音と仲のいい女の子だっけ?」
「う、うん。そうだけど……」
「違うでしょー心音。命の恩人の彼女さんでしょー?」
「ちょ、ちょっと」
「え、それってどういう」
「お父さんにはちゃんと後で私が話しておいてあげるから。あ、もちろん泊りには行ってもいいよー楽しんできてね」
「あ、うん、ありがとう……」
父親にも時雨との関係がバレてしまったが、両親からの了承はあっさりと得ることができた。
♢♢♢
「お邪魔します」
「「いらっしゃい心音さん(ちゃん)」」
いつものように心音さんを迎え入れる。ただいつもとは違い心音さんは大きな袋を持ってきていた。
「その大きな袋は何? 心音さん」
「せっかくだし、ケーキでも作ろうかなって、材料を持ってきたんだ。眞冬さんは今日のお仕事まで時間ありますか?」
「少しだけなら手伝う時間はあるわよ~」
「時雨も一緒に作る?」
「もちろん! 邪魔にならないよう頑張るよ!」
途中私が危うく塩と砂糖を間違えて入れそうになったり、叔母さんが仕事に出かける前にクリームをつまんだりしたけど、無事ケーキが完成した。
♢♢♢
あれからケーキを食べた後、軽い夕食を食べ、二人で後片付けを済ませた。
「片づけお疲れ様! 心音さん!」
「時雨もお疲れ様。疲れたしお風呂使ってもいいかな?」
「あ、うん! いいよ! それで、あの……」
「二人で一緒に入ろっか。せっかくだし」
最近は心を読まずとも、なんとなく時雨の考えてることがわかってきた気がする。
「まぁ私の家のお風呂、特別大きいわけではないからちょっと狭いね……」
「仕方ないよ、それよりどうする? 湯船に浸かる前に洗いっこする」
「うん! まずは私が心音さんを洗うよ! そこに座って!」
お風呂用の椅子に私が座り、洗いっこが始まる。時雨の優しい手つきは少しくすぐったくて、時雨の髪、肌はとてもスベスベだった。
「ふぃ~あったかいねぇ~」
「そ、そうだね……」
二人で洗いっこした後は、二人でのんびり湯船に浸かる。時雨が小さいので思ったより窮屈ではなく、私の上に時雨が乗っている形だ。気まずい沈黙ではなく、気持ちが安らぐ沈黙が続く。ただ、私の胸が意外と大きいなんて思ったりするのは、肌と肌が触れ合ってる感触も相まってかなりドキドキするからやめてほしいなぁ……
お風呂を上がり寝間着に着替え、二人で寝室に向かう。ベッドに座った私達。私はあれを渡そうと時雨に話しかける。
「ねぇ時雨、その……クリスマスプレゼントがあるんだけど」
「わ、私もある……」
「じゃあ、プレゼント私から渡すね」
そう言って私はラッピングされた小さな箱を時雨に渡す。
「わぁ……! これ、開けていい?」
「うん。喜んでくれるといいな」
時雨が開けた箱から出てきたのは星形のブローチ。
「ブローチってさ、胸のあたりにつけるからさ……その、心で私を感じてほしいなって思ったりして……」
「ありがとう……嬉しい! 大切にするね!」
そう言った彼女は、ブローチをじっくりと眺めた後、
「あ、私もプレゼント渡すから、目を開けていいよって言うまで心音さんちょっと目を瞑ってくれる?」
理由は謎だが言われるがままに目を瞑り、時雨の行動をじっと待つ。すると突然、左手に不自然な感触がした。
「目、開けていいよ」
そう言われたので目を開けて左手を見ると、ちょっと高そうな綺麗な腕時計が着けてあった。
「私も心音さんみたいな、自分の力と関係あるもので被っちゃった。だからちょっと凝った渡し方してみようかなって」
「ありがとう。びっくりしたけど、とても嬉しいよ」
プレゼント交換も終わり、甘い雰囲気が部屋に溢れた気がした。
「ねぇ時雨、時雨も目、瞑って」
「心音さんも何かあるの? うん。わかった」
勇気を出して私は、目を瞑った彼女にくちづけを交わした。
「わっ……んんっ……んむっ……」
唇を離した後、時雨が恥ずかしがりながら話しかけてくる。
「もう! びっくりしたじゃん!」
「ごめんごめん。それで時雨。……もっとする?」
「……うん」
クリスマスイブ。その日に時雨から、綺麗な腕時計、大切な思い出、そして甘い甘いひとときを貰った。
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