キスの話
夏休みも終わり、だんだんと涼しくなってきたある日、私は楓華ちゃんとお昼を食べていた。
「そういえばさ」
「ん?」
「時雨は夏休みに心音さんとめでたく付き合い始めることができたわけですが」
「うん」
「時雨って心音さんとどこまでいったの?」
「どこまでいったってどういうこと? ……手を繋いで夏祭りに行ったりはしたよ?」
「え?」
「え?」
どこかかみ合ってない気がする会話に、楓華ちゃんが爆弾を投下してきた。
「キスとかもしてないの? ちゅーって」
「キ、キス!?」
「あぁ、まぁ大体は理解したよ…… 恋人同士なんだからキスくらいはしてるかと」
恋人同士なんだから、キスくらいは確かに普通かもしれないが、いざ自分の事となると途端に恥ずかしさでいっぱいいっぱいになる。
「おーい時雨、めっちゃ顔赤いけど大丈夫かー?」
「えーっとあのさ」
あれから午後の授業に集中できず、半分放心状態のまま心音さんと一緒に帰り、今は私の家に二人でいる。途中で買ったいちごオレも気づいたら飲み干してしまっていた。
「さすがにずっと隣でキスの事について考えられるとこっちも気になるからさ……」
「あ、うんごめんね」
「それで時雨はさ、私とキスしたいの? 私はさ、私達は私達なりのペースでゆっくりでもいいから二人で歩んでいければそれでいいと思うけど、時雨はどうかな?」
「私は、私は……、……少しくらいは興味があるかなーって」
「嘘つき。心の声はかなり興味津々だよ」
「ごごごごめんね! 心音さんが『ゆっくりでもいいから』って言ったから、つい」
「時雨がしたいなら、私は嫌がったりしないよ」
「じゃあ、してもいい……?」
♢♢♢
そう言って時雨は目を閉じて、私を待ち始めた。私も決心して、時雨の唇にゆっくりと自分の唇を近づける。
「んっ……」
ファーストキスは、いちごの混ざった甘い味がした。さっきまで彼女が飲んでいたからだろう。とろけるほどの甘さに脳が支配される。
「んぅ……んちゅ……っはぁ……ぅん…………」
(こ、これ凄い……)
時雨からも、気持ちいいという感情が流れこんできて、思わず興奮してしまう。互いにそろそろ限界になってきたので、くっつけていた唇を離す。
「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……心音さん、キスって凄いんだね……」
「す、凄かったね……」
甘い甘いファーストキス、時雨から流れこんできた感情でかなり興奮してしまっている。もし時雨が嫌じゃなければ、もっと、先の事を……
「ぁ、ぁの」
「じゃあ勉強しよっか! 今回も数学難しくて困ってるからまた教えて心音さん!」
切り替えの早さに戸惑う私は、思わず時雨の心を読む。
「あーうん、そういうことね……まぁ大体予想ついてたけど」
「?」
私は収まらない興奮に悶々とした気分の中、頑張って時雨に数学を教えた。
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