第130話 ゲームでのエンディング

ユウキの知るドラゴンファンタジーでは、魔王バラデミラ戦は文字通り最終戦である。ユウキがアイをカツヤに取られた事で先走って魔王に突撃し死んでしまうので、戦闘はカツヤ、アイ含む4人パーティで行われる。もちろん魔王バラデミラに負ければは事前にセーブした所からのやり直しになる。


無事に魔王バラデミラを倒すとそのままエンディングだ。スタッフロールとともに各町、各城の様子が流れてゲーム終了となる。エンディング後に再開してフリーシナリオを楽しめる。という事もない。


そして今、ユウキの目の前にいる魔王バラデミラは・・・


ユウキの知る魔王バラデミラとは全く見た目が変わっていた。


(はっ?なんだこれ?俺の知ってる魔王と全然違うんだけど・・・。どっちかと言えば3回変身した宇宙の帝王って感じなんだが。闇の宝玉を取り込んで変身したのか?3回も?まじで!?)


「どうしたのユウキ?」ユウキの驚いている表情にジュリアが気づき、ユウキに尋ねた。


「いや・・・なんでもないよ。それより気を付けて魔王は闇の宝玉を使ってる。」


(ジュリア達は元々の魔王を知らないから言ってもわからないか。でも困ったぞ。あきらかに強くなってるよな?カツヤ達の手に負えないよな。カツヤ達は後方に下がらせるしかないか。ビーム一発撃たれて殺されるって訳じゃないだろうけど、気を付けないとカツヤ、アイ、リヨン、アイカが死ぬ。って可能性もあるもんな。)


ユウキはすかさず、鑑定を使い魔王バラデミラを調べた。


【名称】魔王バラデミラ最終形態

【強さ】闇の宝玉を使い、魔王であり、魔神となったバラデミラ。その強さは勇者をも凌ぐ。


※ようやくここまで来たわね。しかもカツヤ達を連れてくるなんてユウキはお人よしね。文字通り最終形態の魔王は強いわ。後の事なんか考えちゃダメよ。ただでさえお荷物、じゃなかった、カツヤ達を守りながら戦わないといけないんだから。


それに・・・見えるでしょ?魔王の後ろに見える黒い渦が。あれが邪神に繋がってるのよ。さっさと魔王を倒して邪神もやっちゃって。


月に変わって、じゃなかった、女神に変わってお仕置きよ!頼んだわよユウキ。


(そうだな。俺がやらないと。カツヤから主人公の座を奪ったんだ。ちゃんと責任とらないとな。)


「ジュリア、リーネ、ニーチェ。俺達で魔王に対抗する。カツヤ、アイ、リヨン、アイカ、フローラの5人は俺達の後ろで待機してくれ。」


「ユウキ!?俺も戦えるぞ。」


「ユウキ?私も支援ぐらいならできるわ。」


「カツヤ。アイ。悪いけどお前達がくると邪魔になる。後ろで俺達を見ていてくれ。」


「リーネ。カツヤ達の守りはまかせた。精霊を呼んで守りを固めてくれ。」


「わかりました。」リーネはジン、ドリュアス、ガーディアンの精霊を呼び出し指示を出す。更に防御系のスキルを連続で使って守りを固めていく。


「よし。ジュリア、ニーチェ俺達で魔王を倒すぞ。」


「「了解。」」


ユウキはそう告げると、自分自身もフェンリルとドラゴン夫婦を召喚し、さらに聖剣エックスカリバーを取り出した。それに合わせてジュリアも神剣スライムソードを取り出す。


ユウキは新たに覚えたデーモンバスター極を連発し、魔王に攻撃を仕掛ける。ジュリアも同様に新たに覚えたデーモンスラッシュで攻撃を仕掛けた。


後方からはニーチェがこれ又新しく覚えた破魔の歌を使いダメージを与える。


魔王はユウキ達を攻撃を受けるも何事もなかったかのように激しい攻撃を仕掛けてきた。


激しい炎や、輝く氷、唸る雷など、多種多様な魔法を使ってきた。守りの要のリーネはカツヤ達を守っている為、ユウキ達はアイテムや魔法を使って自分自身で回復していく。


ユウキ、ジュリア、ニーチェ、フェンリル、ドラゴン夫婦が攻撃する間に、同じ数だけ攻撃してくる魔王バラデミラ。


一切喋る事もなく、グフフ、グフフと不気味な笑いを浮かべながら攻撃の手を緩める事はない。


「ユウキ!どうする?このまま続けるの?」


「ああ。表情には出さないがダメージは与えてるはずだ。手数は信じられないが互角だ。ここで手を緩めたら一気にこっちが不利になる。ここが踏ん張り所だ。」


(といっても後一手足りない。リーネが参加してくれれば、手数でもこっちが有利になるんだが、リーネがあそこを離れるとカツヤ達がヤバイ。我慢比べか・・・)


お互い激しい攻防を繰り広げる中、勝機は不意に訪れた。


後方でリーネに守られているはずのカツヤが勇者の剣を握って魔王に突撃したのだ。


「カツヤ!?」


カツヤの持つ勇者の剣は魔王特攻の効果がある。ゲームとは姿形が違っているとは言え魔王は魔王。カツヤの攻撃は魔王にダメージを与え体勢を崩す事に成功する。


「今だ!!!一気に行くぞ!!」


カツヤが作ったチャンスを無駄にはしないと総攻撃を仕掛けた。リーネやアイ、リヨンにアイカ、フローラも自分達が出せる最高火力で攻撃を仕掛けた。


ゲームならここで、


『魔王バラデミスをやっつけた』


と出るだろう。


だが・・・現実は残酷だった。


魔王を倒す事に成功したが、魔王が倒れている横には、同じようにカツヤが倒れていたのだった。






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