07 閑話~その頃のガルタイト国内~
葛野 ひなたが、無能扱いされた友人を……、佐々木 暁斗を助けるために、ガルタイト国に反逆してから早くも一週間が経過した。
他の勇者達の反応の殆どは、怒りや憎悪といった感情に包まれていた。
「くそっ!! なんでこんな……!」
クラスメイトの中ではイケメンの部類に入り、かつ『陽キャ』グループの筆頭の一人である
「ホントだよ。 葛野さんがなんであんな陰キャでかつ無能な奴を……」
光輝と一緒にいるのは、悪友かつ同じく『陽キャ』グループの筆頭の一人の
「ああ、全く納得ができねぇ。 お前は特に葛野が気になってたんだろ?」
「そうさ、なのに彼女は……」
貴之はひなたに対して想いを寄せていたが、いわば片思いというもの。
当の彼女は、常に暁斗の側に居続けていた。
光輝や貴之にとって、それが気にくわなかった。
「で、どうするんだ光輝? 一週間たっても国王からの指令も来てないし……」
「ザナ王女の片足が、切断せざるを得ない状態だったからな。 だが、これ以上は待ってられねぇ」
そう。
ザナ王女……当時、暁斗をサンドバッグにして殺めようとしたがひなたに背負い投げされただけでなく、片足の太腿を剣でおもいっきり突き刺された人物だ。
ひなたが暁斗を抱えて去ってから、時間を掛けて回復魔法を使ったが 、刺され所が悪かったらしく結局は片足を切断せざるを得ないと判断された。
それによって、光輝達勇者は、指示があるまで個室で待機させられていたのだ。
だが、二人は限界に達していた。
最悪、自分たちも抜けて、ひなたを暁斗から奪い返そうと考えていた。
だが、ようやく出された指令は、魔王討伐の方だった。
二人は納得がいかなかったが、クラスメイトの中ではステータスが高く、魔王討伐欠かせない力を持っていたため、無理やりおさえ込まれた。
これが、彼らの破滅の結末になることも知らずに。
◇◇◇◇◇◇◇
一方、別の部屋では担任の先生である
「いい? あなたはザナ王女を傷つけた葛野ひなたと無能の佐々木暁斗を殺害する部隊に属することになったわ」
「はい……」
返事のトーンがかなり暗い。
それでも担任は続ける。
「これはザナ王女からの命令でもあるの。 明日からその部隊で訓練を行ってから遂行してもらうから、準備はしっかりしなさいね」
にやけた表情でそう言い残して、担任の
1人残された女子生徒。 彼女の名は、
クラスメイトの中では、引っ込み思案な性格が災いして、彼女も友達が、ひなたと暁斗くらいしか居ない。
また、引っ込み思案ながら、暁斗に片思いを抱いていた。
それなのに、あの時の一件では、ひなたのように助ける事が出来ず、ただ見てることしか出来なかったのだ。
周囲から発生していた
その悔しさを思いだし、由奈は泣き始めた。
「ううぅぅ……、ひっく……」
ベッドの中で、由奈は泣きじゃくる。
こんなつもりじゃなかった。
本当は、自分も暁斗を助けてあげたかったのに、周囲の威圧に気圧されて何も出来なかった。
威圧を跳ね除け、積極的に動いたひなたが羨ましかった。
自分はこんなにも臆病で、こんなにも弱い。
悔しかった。
後悔に苛まれ 、声を押し殺して泣いていた。
そしてやってきた指示は、ひなたと暁斗の殺害。
それを遂行する時は、二人は強くなってるかも知れない。
おそらく、今回の指示で自分は死ぬかもしれない。
それが分かっていても、諦めたくはなかったのはこの理由だった。
「せめて……、せめて最後に二人に謝りたい……。許してくれなくても……謝るチャンスさえあれば」
そう、どうせ死ぬなら、一言謝ってから。
彼女は密かにそう決意した。
だが、この時の彼女は知るよしはない。
そんな由奈の心情を察し、手を差し伸べてくれる事を……。
そして、由奈以外のクラスメイトは、無能とバカにしてきた少年たちに対する死亡フラグを立ててしまった事に……。
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