第32話
さて、設計図が完成したのでまずは土台の準備から行って行きます。これが完成すればこの世界で久しぶりに登場する建物になるはずです。
ベルジュさんとヤジカさんには木材の方をお願いして、私とマジクさんは建設予定地に来ています。
「それでススム!!新しい理とは何だ!!」
「そうですね、ではマジクさん。地面とは何で出来ていると思いますか?」
「地面?地面は地面では無いのか?」
「違います、地面とは土地の表面上にある我々が視認している場所の事を指します。そして土地とは大地、大地とは土の塊なのです。」
私が開設し始めると何処からか木の板を取り出して熱心にメモを取っています。書く事で記憶に残りやすくなりますのでこのまま説明を続けましょう。
「では土とは何か?その答えは細かい岩石の破片や植物、動物の遺体を含んだ複合物質の事です。」
「・・・・・。つまり土と言うのは1つの物では無いと?」
「その土地、その場所に含まれている成分は自然環境に由来します。土地により内容物が変わり、金属を含んでいる赤土、植物の栽培に適している黒土等に分類できますね。」
土の色の違いはその場所にどの成分が入っているか、という違いです。さらには水分を多く含み粘土質なのか、逆に水分を含まない砂なのかという違いもあります。
「今私達が立っている地面の中には無数の成分が眠っているのですよ。ここまでは良いですか?」
「・・・・・色々な物が混ざった物が地面であり土・・・・大丈夫だ。」
「ではここからがマジクさんにして頂きたい事です。まずは“地面の中の固い成分”を取り出して線に沿って固めて下さい。」
「その成分が解らないのだが?」
「そこは魔法を頼りましょう。魔法はイメージです。土の中の固い成分が地面深くまで突き刺さり、平らな一枚岩になるイメージです。」
「地面の中の固い物が一枚岩になるイメージ・・・・・。ぐぬぬぬぬぬぬぬ!フンッ!!」
マジクさんの気合の声と共に魔法が発動しました。地面は・・・・金属の光沢になっていますね。土中にはケイ素を筆頭にアルミニウムや鉄、チタン等が含まれています。その中でケイ素の量が一番多いので結晶の床が出来ると思ったのですが、固いというイメージが金属を引き寄せたようです。
「ぜぇ・・・・はぁ・・・・・かなり疲れたぞ・・・・。」
「それはそうです、地面の中で複雑に混ざっている成分をこれだけ集めたのですから。どれくらいの範囲から取り出したのか想像も出来ません。その分魔力を消費したでしょうからね。ですがまだまだこれからですよ?床を沈め、その上に柱を立て、壁を作り、建物を建てて行きます。マジクさんの働き次第ではかなり速く家に住めるのですから頑張りましょう。」
「ちょっ、ちょっと休ませてくれ!!」
「駄目です。早く作りませんとマジクさんの家もありませんから。さぁさぁ次はこの床を地面に埋めますよ!その後は金属で柱を作って行きます!楽しくなってきましたね!!」
「一緒に住むなんて言うんじゃなかった・・・・。」
まぁ全てをマジクさんの魔法に頼るのはさすがにかわいそうなので、ヤジカさんに鋼鉄の柱や梁を作って貰いましたけどね。大物を作る為に炉を外に追加で作る羽目になりましたが。
魔法はイメージですので超能力のサイコキネシスの様に重い物を持ちあげる事も出来たりします。その為マジクさんは人間重機と化してドンドン家を組み立ててくれました。(組み立てさせたとも言いますが。)
自由自在に地面から金属を取り出せるマジクさんとヤジカさんの相性は良く、次々と作られて行く建材たち。私と言えばマジクさんにお願いしてある素材を地面から集めて貰い、今はベルジュさんと一緒に水で捏ねている途中です。
「ススム、これはなんだ?粘土か?」
「これはコンクリートと言います。石灰岩が見つかりましたのでそれを1100℃に熱して生石灰を作り、砂と砂利そして水と混ぜた物ですね。壁は耐火煉瓦とこのセメントで作り、外側を石で、中を木材で覆います。断熱効果と放火や衝撃に対する備えですね。」
複合の壁とすることでその強度と耐久性を上げるという狙いもあります。壁にヤジカさんに作って貰った鉄骨も埋めますので強度は折り紙付きですよ。
「ここまでする必要があるのか?鍛冶工房でもこれほど厳重にはしなかっただろう?」
「これからやる事を考えるとこれでも不足していると思います。間にゴムも挟みたいですし、金属壁にする事も考えました。まぁそのような事をすれば工期が1年以上になってしまいます。今回は早期建築が目的なので諦めました。」
「ススムの頭の中にはどのような要塞が浮かんでいるのだ・・・。」
外よりもむしろ中に防御の手段を用意したいのですよ。
「さぁコンクリートが出来たら壁を作って行きますよ!!マジクさん頼みます!!」
「死ぬ・・・・・ススムに殺される・・・・・。」
「魔法の腕も扱える魔力量も増えてるんだから頑張れ。私にはそれぐらいしか言えん。」
「さぁさぁ!!マジクさん早く!!」
「これなら死刑の方が楽だったんじゃないだろうか?」
基礎を作り、金属の柱と梁を組み立て、複合材の壁を建造。内部は床と壁を木材で作り、何と建物は3階建てに。ここまで高くするのに土台と柱をしっかりした物にしたのです。
1階部分は広い運動場を設置。運動場の壁と天井、床には壁と同じく複合材を。2階部分は学び舎部分、現代の教室を踏襲した部屋が30部屋用意されています。椅子と机はヤジカさんに、黒板やチョークなんかは手っ取り早くマジクさんに作って貰いました。棚は私とベルジュさんが木材で加工していますよ。
3階部分は私達の私室です。こちらも教室と同じ30部屋。他にも人を増やすつもりなのでそれぐらい用意しています。
工期なんと1カ月!!マジクさんの重機としての力はかなり凄い物でした!!まぁ最後はヘロヘロのゾンビの様になっていましたが。ちょっとテンションが上がり過ぎてしまった様です。反省しなければ。
「し・・・・死ぬ・・・・・。」
「すみませんマジクさん。無理させ過ぎました。」
「これも罰だ・・・・・仕方ない・・・。」
「しかし、建物とはここまで大きく作れるのだな。」
「建物の上に建物を建てる何て頭がおかしいと思ったが、実際に見るとなるほどこうなるのか・・・・。」
出来上がった建物を見上げながら、ヤジカさんとベルジュさんがそう感想を漏らしています。
「生活部分は全て3階ですけどね。2階と1階は全て学び舎として使います。」
「まなびやというのは?」
「人を集めて私の知識を伝える場所にするのですよ。その為にもこの街の領主様の許可が必要ですが。」
「そう言えばススムの所に使者が来ていなかったか?」
「はい、話がしたいから来て欲しいと言われました。ですが建築に忙しかったので待って頂きました。」
「大丈夫なのか?」
「街の将来を担う場所を作っているとお話をしたら待つと伝言が帰って来ましたよ。」
ヤジカさんの工房を作った事が知られていますので、それを最大限使わせて頂きました。街の発展に貢献できる物と言う事で、快く待って下さっています。
「俺も冒険者ギルドから呼び出されている。そろそろ行かないと催促が・・・・。」
「ここ最近は毎日の様に冒険者が来ていたものな。」
「その度にこの建物を見て腰を抜かしていたがな。」
一般の方も見物に来ていましたからねぇ。作業の邪魔になっていたのと、事故が怖かったので先に周りを囲う壁を作る羽目になりましたよ。
「では私は領主様の所に行ってきます。事前に連絡はしてありますので。」
「俺も冒険者ギルドに顔を出してくる。」
「私はススムの指示通りに物を運んでおく。」
「私も手伝おう。中をじっくりと見たいしな。」
さて、では早速向かいますかね。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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