第29話
一度魔法の指南はヤジカさんにしているので簡単な物です。マジクさんはヤジカさんよりも扱える属性が多いのですが、魔法とはイメージが全て。それさえわかれば詠唱さえもいらないのですよね。
「もっと詳しく言えばどうして火は燃えるのか。水が何から出来ているのか。土の内容物は何か。風が起こる原理はどんな物か。光りとは、闇とはと深く理解するほどに使う魔法は強くなります。」
「ちょっちょっと待ってくれ!!書き留める!!」
「なら私にも魔法が使えるのか?」
魔法はイメージという一番重要な所をお話した所でマジクさんが木の板を持って来て書き留めています。ベルジュさんと言えば、一緒に話を聞きながら自分にも魔法が使えるのではと興味津々ですね。
「スキルとは才能の表れ、もしスキルが表示されていないのであれば魔素を扱う才能が無い事になります。」
「つまりは出来ないという事なのか?」
しょぼんとしてしまうベルジュさん。私は彼女に正しい知識を伝える為に話を続けます。
「全ては練習次第です。魔素は普通の人には感じ取れません。魔法を使う才能のある人が魔素を感じ取り、その中から自分に合う属性を体に取り込んで魔法として使うのです。つまりは、魔素を感じ取れさせすれば威力は低いでしょうが魔法は使えます。」
「なんだって!!じゃあ魔道国が教えている魔法は神から送られた物だというのは・・・。」
「それ間違いなのですよね。元々人の中に魔素を感知できる人が生まれた事で、魔法が生まれたのです。ですが、本当に才能のある人しか攻撃に使えなかったので、神様がスキルを与えたのです。」
突然人が手から火を噴きだして驚いたと女神様も言っていましたし。
「ならやっぱり私は魔法が使えないんじゃないのか?」
「その才能ある魔法使いの血筋が今の皆様の祖先になっています。」
「生存競争に生き残るのは力のある者だけ・・・・。もしや最低限の魔法の才能は全員が持っている?」
「マジクさん正解です。」
スキルが与えられる前に魔法を使う才能のあった人が生き残り、子孫を残していきました。魔素を完治できるDNAは広がり、今やほとんどの人は最低限魔法が使えるのです。ですが、スキルが発現した事で魔法の、正確には魔素の扱い方を伝える人が居なくなり、廃れてしまったのでしょう。
「ススムも魔法が使えたりするのか?」
「残念ながら私の体では魔素が扱えませんので無理ですね。」
元の世界の体をベースとして作られているらしいので、魔素を感知するDNAが入っていません。本当に残念な事です。
「おっと話が反れてしまっていますね。つまりは皆さん一定の魔法が使えるはずで、マジクさんはかなり強力な魔法が撃てるという事です。」
「さっき言っていた火や水の理の話を聞かせてくれ!!それで魔法の威力が上がるんだろ?」
「良いですよ。ですがその前にイメージのみで魔法を発動してみてください。」
さすが研究者ですね。どんな知識でも吸収したいという意欲が見られます。
「イメージ・・・・イメージか・・・・。」
「例えば火です。指先に小さな火を灯す光景を思い浮かべられますか?」
「・・・・・・難しいな。」
「ならば、焚火を思い浮かべる事は?」
「それならば出来る。」
ふむ、ここら辺は日頃火や熱と接していたヤジカさんとの違いですね。火という物がどういう物なのかというイメージが作りにくいのでしょう。焚火でしたら、野宿等で使いますし思い浮かべやすいです。
「では目の前の地面に焚火があると思って下さい。もし目標が定めにくいなら少し地面を掘っても良いかもしれません。」
「ちょっと待て、むむむむむ・・・・・・ふんっ!!」ボッ!!
マジクさんは眉間に指を当てて難しい顔をした後、手を地面にかざして気合を入れました。すると、地面に赤々と燃える炎が立ち昇ります。
「おぉっ!!出来ましたね。」
「むむむむむ・・・・・・ぷはぁ。私には無理だ。」
「ベルジュさんは先に魔素を感じ取れるようにならないと出来ませんよ。」
「出来たぞススム!!火の理を教えてくれ!!」
マジクさんの真似をしていたベルジュさんが肩を竦めて諦めています。魔素を感じ取る訓練はマジクさんかヤジカさんに手伝って欲しいので後回しですね。
マジクさんの方は立ち昇った炎を消して私に詰め寄っています。教えてくれと言われたら教えるのも教師の務め、教えてあげましょう。
「皆さん火とはどういう物だと思っていますか?」
「?火は火だろ?」
「何かを燃料にして燃えるという事なら解るぞ。」
「マジクさんまたもや正解。火とは可燃性の物に熱を加えると起こる現象の1つなのです。魔法で言えば燃料と熱は魔力で起こしています。ですが火が燃え続けるにはそれだけでは足りないのです。」
マジクさんは必至で木の板に私の説明を書き記していますね。ベルジュさんはずっと首を捻っています。ある程度科学知識が無いと理解できないので仕方ないでしょう。マジクさんも全てが解っている感じではありません。
「可燃性の物と言うのは木だったり一緒に作った木炭だったりするあれか?」
「はい、他にも燃える液体や気体なんかも探せば在るはずです。」
「えきたい?きたい?」
「液体とは水の様に掴み処が無く流動的な物の総称です。気体とは簡単に言えば私達が呼吸している空気の様な物の総称ですね。そこに存在しますし触れていますが、感覚が無い事が多いです。」
ベルジュさんがどんどん質問してくれますから楽ですね。質疑応答の形でしたら教える事も簡単です。それに質問した人も疑問が解消されてスッキリする上に、記憶に残りやすいですから。
「目に見えない・・・・・。燃料と熱・・・・・。火が燃えるには足りない何か・・・・・。もしや火が燃えるにはススムがさっき口走ったくうきという物が必要なのか?」
「おっ!?そこに気が付きましたか!!そうです!!正確には空気の中に存在する酸素と言う物質が燃焼には必要なのです。可燃物質+引火点を超える熱+酸素で火が起こり熱エネルギーを生み出して燃焼します。」
「いんかてん?ねつえねるぎ?」
「引火点とは物が燃え始める温度の事です。熱エネルギーは簡単に言えば物が燃えて生まれる光りや熱の総称ですね。鉄を熱したら赤く見えるのは熱エネルギーが目に見えるほど溜まっているからです。」
学術的にはもっと色々と説明しなければいけませんが、簡単に話した知識だけでも魔法の力は格段に強くなるはずです。
「では先ほどの魔法を今お教えした知識を使って強化しましょう。空気中の酸素、あぁこれは燃える物質を集めると思い浮かべれば大丈夫なはずです。酸素を集めて、目標の周りに集め、魔力をよく燃える燃料と思いながら、熱を生み出してください。」
「そんなに複雑なのか?」
「燃焼するという現象はこれよりもっと色々な物が複雑に動く理なのですよ?魔法ですからここまで簡略化出来ているのです。さぁさぁ、まずは実験と思って試してみてください。」
私の言葉でマジクさんがさっきと同じように眉間に指を当てて難しい顔をしています。そう言えばあのような行動は自己暗示を掛けている時に似ていますね。
「燃える空気を集めて・・・・・目標に丸く・・・・。魔力を燃料に・・・・、熱を加える!!」ボーッ!!
おぉっ!!先程の焚火よりももっと火力の強い火が生まれましたね。これはもう炎というよりは火柱です。
「凄いじゃないか!!」
「えぇ、大成功です。」
「・・・・・・・。」
「マジクさん?どうしました?」
「止め方が解んない・・・・。」
ゴーーーーーーーーーーッ!!
「あぁっ!!そう言えば火を消す方法を教えていませんでした!火を点けるイメージが強すぎて制御出来ないのですね。」
「落ち着いている場合かススム!!早く止めないと森が火事になる!!」
「面白くなって来たのに森を焼いた何て知られたら確実に死刑になる!!早く止め方を教えてくれ!!」
おー、すごいですねぇ。酸素と魔力が供給され続けているので森の木々よりもかなり高い火柱が上がっています。落ち着けばマジクさんなら止める方法を思いつくとはずですが、まぁパニックになっている今回は仕方ないですね。
「マジクさん、燃料を止めて下さい。」
ゴーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
「何だって!?火の勢いが強すぎて聞こえない!!」
「燃料になっている魔力を止めて下さい!!」
「だだだ、大丈夫なのかそんな事をして!!発動中の魔法に手を加えて爆発したって話もあるんだぞ!?」
「マジクさんのイメージがしっかりしていれば大丈夫ですよ。その証拠にほら。」
マジクさんに私の声が聞えたのか、次第に火柱は落ち着き何事も無かったかの様に鎮火しました。木々にも燃え移っていませんね。
「はぁ・・・・何とかなった・・・・・。」
「お疲れ様ですマジクさん。」
「やはりススムの知識は凄いな・・・。あんな簡単な助言でここまで魔法の力を高めるとは・・・。」
「他の魔法についてもおいおいお話しできればいいかなと思っています。どうです?魔法はスキルが全てでは無かったでしょう?」
「・・・・・。あぁ、そうだな。ススムの言った通りだ。スキルが無くてもスキル持ちより強い魔法が使えた。俺は魔法に見捨てられてなかったんだ。」
おっと、マジクさんがいつの間にか静かに泣いていました。恐らく今までかなりの葛藤があったのでしょう。暫くはそっとしておいて上げましょう。
毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!
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