第10話

ミリアさんの話によると、私の居たあの森からは最近ホーンウルフやポイズンラビット等の魔物が大量に湧いて来ているそうです。元々は薬草や山菜等を取ってそれを特産として売り出していたミダス。その供給源が魔物達に抑えられてしまったおかげで現在存亡の危機に瀕しているという事です。


「ふむ・・・・。薬草の栽培なんかはしていないのですか?」

「栽培・・・・ですか?そんな事が出来るのですか?」

「聞いた事無いな・・・。それもススムの知識か?」


おっとこれは、自分達で育てて増やすという行動自体も消失しているのですか。狩猟採取生活では多くの人口を支えるのは不可能ですよ?・・・・あぁなるほど、魔物に人口を減らされおかげで大丈夫になってしまったのでしょう。何ともここから盛り返すのは大変としか言いようが無いですね・・・。


「ススムさん、この後はどうしますか?依頼を受けられますか?」

「・・・・、そうですね。何か受けられる依頼はあるでしょうか?」

「おいススム!私との修行はどうなる!!」

「森に行って、まずは戦い方を見て貰おうかと。その方が後々動きの解説をした時に分かり易いですからね。森の様子も確認しないといけませんし。」

「でしたら魔物討伐の依頼を・・・・と言いたいところですが、登録したてのススムさんでは受領する事は出来ませんね。こちらの薬草採取の仕事をお願いします。」


そう言ってミリアさんが取り出した木の板には薬草となる癒し草を10本、森から持って来る事と書かれています。


「道中襲われた場合の対処は冒険者に委ねられています。つまり・・・。」

「もし魔物に襲われた場合、逃走もしくは討伐どちらで対処しても構わない。と言う事ですね?」

「はい、討伐された場合は受けられる依頼に討伐依頼が追加されますのでおすすめですよ?」


ランク付けも無い世界ですからね。この依頼は討伐依頼を受けられるかどうかを見る為の試験として使われる依頼と言う事でしょう。これは受けるしかありません。私の教えが実践でも使えるのか自身で調べる為にも必要ですからね。


「でしたらその依頼を受けましょう。もちろんベルジュさんにも同行して貰います。」

「戦い方を見ろという事だからな。もちろん同行する。」

「ではお2人で受けられるという事でよろしいですね?」

「あぁ。」

「構いません。手続きをお願いします。」


ミリアさんに木の板に受注者として私とベルジュさんの名前を書き入れて貰い、依頼書を受け取って受注完了です。さてそれでは目下の問題を解決する為に彼女と相談しないといけませんね。


「所でベルジュさん。」

「どうしたススム?」

「ギルドの外に先ほど戦ったコーザさん他、冒険者の方々が固まっていますがどうしますか?」


試験が終わった後、私達と一緒に戻って来た冒険者の方々が何やら隣の食堂で話し合った後、ギルドの外で武器に手を掛けながら待っているのですよね。敵意も隠していない様ですし、このまま外に出ると確実に襲われます。


「全員倒してしまっても良いんじゃないか?ススムならそれが出来るだろう?」

「面倒なのですよね。ですがこのままですと何度も絡まれてそれも面倒になりますか・・・。」

「ススムさんはすでに冒険者になりました。冒険者ギルドの私闘は厳禁です。ギルド証を掲げながら出て行けばあの人達が手を出す事は無いと思いますよ?そんな事をすれば冒険者登録の抹消の上で捕まりますから。」


私達の話を聞いていたのでしょう、ミリアさんが助言をしてくださいました。でもあの感じはそれだけで止まるようには見えないのですよねぇ。


「#$%&‘&%$#$%&’!!」

「%$“$%#&(#)*+*#$$・・・」


おや?何やら外で言い争いが始まったみたいですね?誰か来たのでしょうか?


「ったくあの馬鹿共は!!一体何を考えているんだ!!」

「あっギルドマスターお帰りなさい!!」


愚痴を言いながら冒険者ギルドの扉を開けて入って来たのは熊でした。あぁいえすみません、正確には熊の様な人でした。パッ見は山賊の頭の様な人です。髪と髭はもじゃもじゃで、体格はかなり大きいですね。太い腕に血管も浮いています。人一人殴り殺せそうなくらいの筋肉をしています。


技術の荒廃した世界ではこのような力ある人がトップに立って引っ張っていくのが良いのでしょうね。確かにこんな人が頭に居ればあのような荒くれ冒険者でも言う事を聞きますか。


ギルドマスターと呼ばれた男は受付の前に居たベルジュさんと私を見て、私の方を睨んできていますね。これはまた厄介事でしょうか?


「お前がスキル無しで登録した冒険者か。」

「はい、先程登録したススムと申します。これからお世話になりますギルドマスター。」

「ガンドだ。最近登録してくる冒険者にしてはきちんと礼を知っているな。」


ジーっとこちらの事を観察していますね。特に怪しい事も、何か悪い事をしたわけでもありませんが、こんなに注目されると少し落ち着きませんね。


「よし、合格だ。」

「はて?何か試されていたのでしょうか?」

「がはははは!!俺の威圧を受けて平気な顔をしているからな!表に居た奴等がスキル無に負けたと喚いていたが納得だ!あいつ等じゃお前には勝てんだろうな。」


何と威圧されていたのですか。私からしたらただ睨まれていただけなのですが・・・。もしや威圧の意味も失われていますかコレ?


「あえて言おう!!冒険者ギルドはスキルの有無で登録者を区別はしない!!登録の意思のある者、そして品行方正である者はすべて受け入れる!!それが冒険者ギルドだ!!」


突然大声でそんな事を言い始めたガンドさん。あまりにも大きな声でしたので私達は耳を塞ぐ事になってしまいました。外から中の様子を見ていた人達に向けて言ったのでしょうが、私達への騒音被害の方が深刻ですよ。


「マスター、やり過ぎです。耳がキーンとなりましたよ今!!」

「がはははは、すまんな。だがこれで表の奴らは散るだろう。」


こちらに向けてウインクをしてくるガンドさん。見た目は山賊ですがかなりお茶目な一面も持っているみたいですね。


「えぇ、助かりました。これから依頼に行くのにどうしようかと考えていた所です。」

「おう早速依頼を受けたのか!!ギルドとしては有難い。街の為に是非達成してきてくれ。」

「えぇ解りました。それではこれで失礼します。」

「あっ待てススム!!置いて行くな!!」


ギルドマスターとミリアさんに挨拶をしてから冒険者ギルドを後にします。ホーンウルフの換金代金を受け取っていたベルジュさんが慌てて追いかけて来ました。おっとギルドで聞き忘れた事が在りましたね。彼女に尋ねましょう。冒険者でしたら知っているはずです。


「ベルジュさん、ちょっとお聞きしても良いですか?」

「なんだ?私に解る事なら答えよう。」

「ここらへんで武器屋はありますか?」

「武器屋?あぁススムは武器を持っていなかったな。それでよくあの森から出てこられたな。」

「ははは、運が良かったんですよ。」


この世界で武器はそれだけで貴重な物です。ですから女神様に奉納したりせずに、壊れたら作り直しているみたいなのです。だから現物が無くて女神様から貰えなかったのですよね。


「ならば私の行きつけの店を紹介しよう。といってもこの街に武器屋は一軒だけだがな。こっちだ。」


ベルジュさんの案内で武器屋に向かいます。はてさて、武器は多少マシなようですがどんなものが出てきますかね?


毎回無断転載対策で以下の文を入れます。読み飛ばしても大丈夫です。無断転載ダメ!!絶対!!

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